2章B 2ndプレイヤー
会話メインだよー。
なるべく会話で場面を表現したい。
それがBパート。
サイコロは地に着かず、空中で回転を始めた。
俺は、瞬きをする。勿論、眩しかったからである。
《6マス 残り 254マス》
サイコロは何処かに消えてしまった。このマス決め、サイコロじゃなくてもいいんじゃないか。
目の前には、新たな道が出来ていた。進むしかないと、理性が言っている。
俺は前に進みだした。地には、境界線らしきものがある。コレがマスを示しているのだろう。
下を向いて俺は歩く。地面は白か黒の二つの色で塗られている。あまりにも不規則な、その模様に俺は疑問を抱く。
ただ、今のところは触れないでおくと決め、俺は前を向いて歩きだした。
境界線に辿り着いた。これでようやく1マス進んだということになったのだろう。俺は振り返り、後ろへと歩きだした。
地の模様に抱いた疑問を解消すべく、俺は下を向いて歩き回る。そして一つの事実に辿り着いた。
どうやら、不規則な模様は巨大な文章を表していたようだ。
出産祝いでみんなから10万円ずつもらう。か。人生ゲームという感じがするなこの感じ。
疑問は解消され、俺は、再び前へと歩みだす。そして新たな疑問が生まれた。
前方には、見知らぬ女が立っていた。俺は近寄り、声をかけようとした。
君もこのゲームの参加者なのか。そう問いかける。しかし、返事は返って来ない。当たり前だ。何せ音として口から発せられる声は、一切出ていないのだから。
見知らぬ女は、俺に気付き、口をパクパク動かす。喋りたいのだろう。しかし、声は出ていない。
コミニケーションが取れないという事実に落胆するも、次の瞬間、その落胆は消え失せた。
うん。私も参加者。私の名前は、血津女 存亜。
大気を震わせていないその音は、直接、俺の鼓膜を震わせた。そして、俺は、コミニケーションのとれる、同志の存在に、安堵故の震えが生じた。
とりあえず会話をしてみる。
俺の名前は◯◯ ◯◯。早速だけど、何してたんだ。
今ちょうど、ミッションが終わって、この空間に帰ってきたところよ。
ミッションって何。
あなた、まだ一回もイベント発生してないの?はぁ説明が面倒臭いわ。
聞き覚えのない単語に、興味を抱く。知識欲は誰しもあるものだろう。まぁおそらく、地面に書いてあるこの字がイベントなのだろう。
今、俺進んでる最中だから。あと4マスも進まなきゃならない。
本当!?あと4マスって私も同じなんだけど。一緒に、行くべきだよね。
あぁ。そうしてもらえると助かる。ちなみにこのマスのイベントはなんだったんだ。
このマスはね。確か妊娠祝いで、1万円貰うだった気がする。んでもって、ミッションが、生命を誕生させろ。だったわ。
さっきも聞いたがミッションってなんなんだ。
ミッションっていうのは、人を操って、お題を達成することのことよ。
そういうことか。それでその操られる人っていうのが、俺や君を含めたあの6人ってことか。
理解が早くて助かるわ。そんな事より、さっさと4マス進んじゃいましょ。
それもそうだな。
俺は、血津女 存亜と共に歩きだすのだった。この選択が俺の人生を大きく変えることになるのだった。
あぁ、やっとついたわ。誰よこんなに1マス大きくしたの。マジムカつく。
いやまぁ、そんな怒んなって。
怒るわよ。私の足がもう、動かないの。
どんだけお前の足は、か弱いんだよ。
か弱いに決まってるでしょ。こんなに可愛いんだもの、私は。
確かに存亜は可愛かった。見た目は中学生くらいで、長い赤髪。それを二つに束ね、ツインテールにしている。胸は小さめで、反抗的。完全に俺の好みである。幼い子は好きだ。しかし、断じてロリコンではない。
可愛いのは認めるが、それと足がどう関係してるんだよ。
可愛いの認めるって…もしかしてあなたロリコン?
否、断じて否。俺はロリコンではない。ただ、幼い子が好きなだけだ。
いやそういうのをロリコンって言うんだって。
コレがギャルゲーの世界だったら、間違いなく、今の場面で、ピコンっていう音がなって、親愛度が下がりました。って表示されるんだろうな。
1嫌われしたところで鐘の音がなった。そして、声が聞こえた。
《出産祝いでパーリーナイト。100万円失う》
パーリーナイトって今時のパリピもつかわない気がするわ。
全く意味がわからないのだが。
《ミッション 出費を回避せよ。なお、回避の方法は問わない》
出費回避って私達赤ちゃんよね。そんなのどうやって。
まぁ、どうにかなるんだろきっと。
あなたの自信はどこから湧いてくるのよ。
《操作対象を選択中》
操作対象か。ちなみにさっきのミッションでは、お前は誰を操作したんだ。
あぁ、そういえばいい忘れてたわね。私が操作したのはあなたよ。
えっ、あぁ俺か。そりゃそうだよな6分の1だもんな。なんか複雑な気分だ。
操作といっても私はただ見守っていただけだけどね。その。あの。
お前顔赤いけど大丈夫か。
う、うるさいわね。生命を誕生させろ。なんて言われても私は何も出来ないのよ。誕生する側だから。よりにもよってあんなもの見せられるなんて。
《操作対象決定 血津女存亜 封華強導》
これ、どっちがどっち操るんだ。俺、女なんてやだぞ。普通に。
失礼ね。私みたいな超可愛い美少女を前にしてなんて発言。
お前、その性格ガチで、変えたほうがいいぞ。俺は好きだが。
ロリコン…
《それでは転送を開始する。ミッションに成功すれば、逆にいいイベントになるかもですので、是非成功してください》
断じて否!!!!!!!!!
俺の全身全霊の否定が、この空間を支配する。訳でもなく、辺りは静寂に包まれたまま、俺たちの意識は途切れたのだった。
視力も聴力もない胎児に知性があったら、誰もがみんな、崩壊してると思う。心の底から俺は今、恐怖を感じている。
何も見えない恐怖。何も聞こえない静寂の世界。この世界には何もない。そう思い知らされる。
《擬似視力B 付与》
《視点公開 周辺視野付与》
《擬似聴力 付与》
意味のわからないことを連続で言われ、頭が混乱する。その混乱を解いたのは、他でもない、存亜だった。
「これで喋れるし、聞こえるから、早くこっちに来て。」
こっちに来ての意味をいまいち理解できていないが、多分、先程ナビゲーターみたいな奴が言っていた、周辺視野の事だろうと推測し、使用してみる。すると、視界が光を捉え、真紅の髪を捉えた。
存亜だと最初は思ったが、即座に違うと判断できた。真紅の髪の持ち主は、胸が大きかった。そして、お腹も大きかった。
俺は一つの結論に辿り着く。この人、存亜のお母さんだ。
「あれが、私のママよ。」
「やっぱりか。そんな気がしたよ。雰囲気似てるしな。」
存亜はやっぱり!?といい、ご満悦の表情。よほどお母さんが好きなんだろうな。
「ここにずっといるっていうのも駄目なのよ。封華強導の家にも行かなきゃだからね。」
「確かにそうだな。じゃあ行くか...って何でお前が言ったのにも関わらず、お前はずっと自分の母親を見てるんだよ。」
「待って、あと4分だけ。いや待たなくていい。あなたは先に行って。ここは私が食い止めるから。」
「じゃあ。行ってくる。」
「何でツッコマないのよ〜〜。」
俺は1人、封華家に訪れた。リビングには、黒髪の美人がいる。お腹を見る。そして確信。この人が、封華強導のお母さんか。綺麗だ。
1人だと案外面白くないと実感できる。存亜の存在って、なんだかんだいってでかいよな。
それにしてもこのミッション、出産後が本番みたいな感じなのに何で出産前から始めんだよ。アホなのか、製作者は。
故に、暇である。何も行動を起こさなきゃ何も起きない。しかし、行動することすら出来ない。何このミッション。
「もう飽きたぞ。流石に。」
「まったく、飽きるのが早い人はモテないのよ。多分。」
「確証ねぇなら、最初から言うなよ。」
何故だろう、存亜が側にいる。それだけで安心する。まぁそんなのどうでもいいか。というか、ただ面白いからっていう理由な気がする。
「ねぇ。あなた何で泣いてるの。」
「はぁあ。いや泣いてなんか…あれ。」
俺は自分の目元を指でなぞる。すると、感じる水の感触。確かに俺は泣いていた。自分自身でも理由はわからないが。
「何か、辛いことでも思い出した?」
「わからない。何で泣いてるのかが、まったくわからない。」
俺の足は震える。見えない何かに怯え。わからない。何一つわからない。足の震えは限界に達し、俺はその場に崩れ落ちた。と思った。しかし、
「危ない。というか重い。にしても、本当に大丈夫。辛いことがあるなら言ってもいいんだよ。全部受け止めてあげるから。」
生まれて初めて優しさを感じた。
「俺は幼い頃から両親がいなかった。母は交通事故で。父は飛行機の墜落で。亡くなった。その頃から俺は、心を閉ざしたままだった。何も信じられなくなり、学校にも行かなかった。行くのが怖かった。そんなある日、俺はとあるものを見た。それに影響を受け、学校に行く気になった。でも、学校に行った俺は、俺じゃなかった。極限まで追い込まれた故に生まれた交換人格だった。だから、俺は嘆いた。自分の弱さに。それから俺は、俺を捨てた。俺を捨て、新たな俺を作り、それを、俺と呼んだ。今こうしてお前と話している俺も所詮は偽物だ。誰も本物には辿り着けない。自分自身が辿り着けなかったんだからな。でもお前と話してると昔の俺を思い出しちまうんだろうな。いつも自分が1番だと思い込んでたあの時を。似てるんだよ。お前と。だから、閉ざされた思いを話す気になったんだろうな。俺決めたよ。このゲームで勝って、昔の俺で生きる人生でやり直す。そして、お前と出会う人生にする。だから、俺はこのゲームに勝つ。お前と一緒にな。」
「わかったわ。勝ちましょう。一緒に。このゲームに、この世界に。」
「おう。」
俺は存亜から少し離れ、手を差し伸べた。その手を存亜が握り、2人の決意が固まる。俺たちは2人で優勝する。
時は経ち、封華母と存亜の母は出産が近づいていた。というか今まさに、出産という状況だった。
俺は封華母を、存亜は自分のお母さんを見守っていた。
大きな頭が顔を出す。上半身、下半身と、解き放たれる赤子の姿。双方の母の安全を確認し俺と存亜は頷きあう。
強導の身体を借りて、俺は精一杯泣いた。ずっと。ずっと。
流石に泣き疲れて、俺は周辺視野に戻る。そして、存亜と合流し、次なる作戦を実行した。
ただ、その作戦は赤ちゃんたちが退院してからでないと決行出来ないため、俺と存亜は待つことになった。
この待つ時間が1番面白くない。あくまで操作キャラは決まっているので、いくら周辺視野で外から見ても、操作キャラが疲れれば、こちらも疲れる。故に今は、俺も存亜も超疲れているため、声を発することすら厳しかった。
俺たちはそんな静寂の中を2、3週間過ごすことになった。
ようやく、退院である。長かった。とりあえず、作戦を実行する。
俺は封華家でありとあらゆることをした。と言ったものの、したことといえば一つしかない。
その一つとは、身体の不純物を自らの意思で、幾度も、下半身から垂れ流すことである。
下品だろうが何だろうが、この際どうでもいい。オムツがすごい勢いで無くなっていく。狙いどうりだ。
これで、封華母は俺の事で忙しくなる。故にパーリーナイトは無くなる。そして、さらに、封華母がオムツ不足などと母親会的なものでいえば、誰か優しい人が恵んでくれて、特になるのでは?という作戦。
現実甘くない。そう思っていた時期が俺にもあった。しかし、今、俺の世界は甘い。何せあのクソみたいな作戦が成功してしまうのだから。
長きに渡る、排出は終わりを告げた。それと同時に俺と存亜のミッションも終わりを告げた。
《ミッション達成 困っていた2人を助けようと貢いだ人の総額が利益としてでます。今回のミッションで20万円獲得。バッドイベント回避おめでとうございます》
よっしゃーー。やったぞ、存亜。
うん。やったわね。
一つのイベントでこんなに喜ぶのはどうかと思うけどな。
もう、この際いいじゃない。喜ぶ事も重要よ。
そうだな。せーの。
よっしゃーーーーー!!!!!
俺と存亜の2人の思いが2人の中だけで響き渡る。周りの静寂を打ち破る程の感動。音ではなく、思いが大気を揺らしたのだった。
この調子で次も行くぞ。
もちろんよ。
2人は共にサイコロを握り、いつか来る勝利を求め、高々と振り上げるのだった。
展開がはやいよね。
まぁしょうがないか。