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人生遊戯  作者: 門音 ヒカル
3/6

2章A 始まりの悲しみ

門音 ヒカルは

段落を開けるという事を覚えた!!

テレレテッテッテー

土日更新を頑張ってみます。

無理かもだけどね

 サイコロが落ちる。と思っていた俺は、目の前の光景を見て息を呑んだ。

 サイコロは地面に着かず、空中で回転を始めた。それと同時に輝きを発して、俺の視界を奪う。

《8マス 残り252マス》

 声が聞こえると同時にサイコロの発光が終わる。視界が戻り、目を前にやると、そこには新たな道が出来ていた。

 俺は歩き出す。勿論逆方向に。捻くれた考えだとわかってはいるが、面倒臭さには、敵わないという事だ。

 しかし、残念なのは、俺が今向かうところに道がない事。そこで出てくるある感情。面倒臭さですら抗うことのできない、人間ならではの感情。その感情に身を任せ、俺は道なき道へ足を運んだ。

一歩先には足場がない。しかし、俺の体は止まる事ができない。俺の体は今、好奇心に支配されている。

 この空間で死んだ場合どうなるのか。それを知りたい。ただの知識欲に、命をかける事が出来るのは、この世界で俺しかいないだろう。

 そんな事を思いながら、俺は足を踏み出した。

 今の状況に俺は戦慄している。またこの場所にやって来てしまった。この闇の空間に。

 ここに来るのは、かれこれ3度目だ。故に、この後どうなるかが分かっている。

 はぁ、また死ぬのか。などといった感情が、俺の中を駆け巡る。

 完全にネガティブな考えだ。言い方を変えるとすれば、闇。この空間にピッタリだ。と思うと同時に視界は闇から解放された。

 落ちる。落ちる。落ちている。この感覚も3度目だ。全然慣れないな。死は怖い。死は恐い。

 地を視界に捉え、身体を地につけた。実際起こったのは、もっと酷いが、3度目だから。この際省いてしまおう。


 目を開ける。生の実感。生きている。やはり生きている。この空間で死ぬことはないのだろう。

 などと思っていたが、現実はそう甘くなかった。身体を起こし、目の前の光景を目にする。

 そこにいたのは、紅に染まった変わり果てた自分。先の状況で、落下死した自分で間違いなかった。

 その光景に俺の足は、足としての責務を投げ捨て、力を失った。身体を支えきれなくなり、俺はその場に崩れ落ちた。

 そして襲って来る止めどなき嘔吐感。必死に我慢するも敗北。俺は俺に自らの胃酸をぶっかけた。

 異臭が漂って来る。しかし、足は責務を果たさない。俺は匍匐前進でその場から離れようとした。

 徐々に、視界が前へと進む。死ぬ前に出来た、新たな道を多大の時間をかけて進んでいく。

 腕が死んできた。腕だけに頼って、進んできた為、長き前進により、体力を使い果たしたのだろう。

 それにしても何故こんなにも、8マスをでかくしたのだろうか。短ければ、俺の腕は助かったのに。

 とりあえず来るべき所までは来たが、何もイベントが発生しない。人生ゲームってこんなつまんなかったっけ。

 突如鐘の音が聞こえた。そして死ぬ前に聞いた、あの声が聞こえた。

《出産祝いで10万円もらう》

 どうやらイベントはあった様子。いいイベントでよかった。と思えたのも束の間

《ミッション 産まれる事に成功しろ。なお、どんな産まれ方でも構わない》

 ミッションってそんなの人生ゲームにないだろ何で実際にやらなきゃいけねぇんだよ。産まれるって、俺知性なくなるんじゃ。

 ある重要な事実に俺は今気付いた。この空間で、俺は一度も声を発していない。ただただ声を出そうとしてない訳じゃない。声を出そうとしても、出ないのだ。

 まぁさほど声を発する意味がないからいいのだが。

《操作対象を選択中》

 おいまさか、コレって自分を操作するんじゃねぇのかよ。

《操作対象決定 天神 霊羅》

 よりにもよって女かよ。いやでも…やっぱ駄目だ産まれる前だもんな。何を考えてるんだ俺は。

  人生ゲームの新たなルールに俺は冷静さを完全に失くしていた。他人の人生を操る。そういえば誰か言ってたような気もするが、恐らく初耳である。きっと。多分。こういった点でも冷静さを失っていた。

《それでは転送を開始する。失敗した場合はペナルティーが課せられますので、失敗しないように》

 ペナルティーという単語に俺は恐怖を覚えた。ただその恐怖は意識の途切れと共に消え去った。


 何も見えない。何も聞こえない。当たり前だ。視力も聴力もまだないのだから。

知性は残っているらしい。それは救いである。ただこの状況だと逆効果である。無というのは人間が1番恐れることだから。

 本当に何も無い。何か見えるわけでもないし、何か聞こえるわけでもない。無そのものだ。つまらない。そして恐い。

 今きっと俺は子宮の中にいるのだろう。天神霊羅の母親の中に。なんか複雑な気分だ。他の人の中にいるってのわ。

 今の状況を客観的に見てみたい。俺を産もうとしてる人の顔を見てみたい。またも好奇心にかられる。

 見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい

《擬似視力A 付与》

 無という状況に精神が壊れそうになった。けれども、精神の崩壊は、与えられた視力により、免れた。無は恐い。

 俺は擬似視力を試す。視界が開けて、前が見える。しかし、ここは子宮の中。光など到底届くはずもなく、見えるのは闇だけだった。俺は闇に恐怖を抱く。視力があっても変わらない。闇は無を意味する。結果俺は恐怖に震える。俺は必死に有を求めた。

《視点公開 周辺視野付与》

 求めたものに応じてくれた。ありがとう。と絶対に届かぬ思いを告げ、俺は今、手に入れた能力を使用した。

 見える。有が見える。ただ見えるだけ。直接干渉はできない。しかし、この有がどれだけの安堵を俺に齎したか誰に理解出来るだろうか。心の底から俺は、有に縋った。

 今見えているものを全て説明しよう。まずここは天神家である事は間違いない。そして、俺のすぐ近くに銀髪の美女がいる。おそらくこの人が天神霊羅の母親なのであろう。この人の中に俺がいると思うと非常に複雑な気持ちになる。

 天神母はソファに座っている。奥にはキッチンがあり、その手前に、テーブルや椅子などが並べられている。

 今キッチンには男の人がいる。天神父で間違いないだろう。聴力が無い為何も聞こえないが、夫婦で何か会話をしていた。聞きたい。そう思うと、

《擬似聴力 付与》

 案の定このザマである。俺にこんなに優しくていいのかと、つくづくそう思う。今はその優しさに頼らせてもらうぜ。

 俺は2人の会話を用心深く聞く。決して盗聴ではないこの行為だが、何故か罪悪感が否めなかった。

「ねぇレイ君。この子の名前って何にするの。」

「んー。アイラは何がいいと思う。」

よりにもよって名前の話とは。霊羅ごめんな。面識ないけど。アイラさんも本当すいません。

 まぁ、赤ちゃんだから俺の意思じゃきっと動かせないけど。さっきの謝罪を上っ面だけの謝罪と証明する考え方だな。

「そうだなぁ、レイ君のレイとアイラのラをとってレイラってどう。」

「いいねぇ。これでアイラに似ても家族だって思われるな。」

「悲しい事言わないでよ。レイ君はアイラにとって1番大事なんだから。」

 見ててイライラするのは何故だろう。もう罪悪感なんて吹っ切れてしまった。今俺を支配するのはイライラとこの幸せな光景をぶっ壊したいという嫉妬だけだった。

 周辺視野をフェードアウトして、仲のいい夫婦を視界から消す。どうやら子宮に視界を戻すと音も聞こえなくなるらしい。とりあえず安堵。

 それにしてもあの歳で、自分の名前で自分呼ぶとか、普通に可愛いんですけど。しかも、夫に対して君付けとは。羨ましい。子供じゃなくて夫の方を操りたい。

 嫉妬により無への恐怖が完全に消え去る。なんと感情的なやつなのだろう、俺は。俺は、自分で自分を悲観した。

 結局子宮の中にいても何も変わらない。何か行動を起こせればいいのだが、何も浮かばない。浮かんでも実行できない。とりあえず、俺は周辺視野を展開した。

 どうやら先の会話は終わった様子。会話が続いていたら、即座に子宮に戻ったが、一先ずは安心。子宮に戻るという表現はどうかと思うが。

 天神夫婦は先程、天神父が作っていた料理を食べている。食卓に並べられているのはカルボナーラと、ペペロンチーノ。母が前者で、父が後者である。

 実に美味しそうである。料理が出来るとは、羨ましい。俺も料理練習しようかな。アイラさんみたいな嫁欲しいし。

 本心を包み隠して褒めているが、本心をいうと、ただ単にうざい。天神父は顔もかっこいいし、料理も出来るという。なかなかなうざさの持ち主である。

 美男美女。そんな2人から産まれる天神霊羅もきっと可愛いのだろう。羨ましい。それに尽きる。大きくなったら霊羅と結婚する。叶わぬ願望を胸に抱き、俺は、盗聴…じゃないことを始めた。

「レイ君確か明日休みだったよね。」

「そうだけど。どうしたんだ。」

「ひとつ頼み事があってね。」

「いいよ。引き受けた。」

「ありがとう。レイ君。それでね最近レイ君仕事ばっかで、側にいてくれなかったから、明日はずっと、そ」

 俺は、子宮へと帰って行った。

 羨ましい。言われたい。言ってもらいたい。せこい。レイ君せこい。レイ君うざい。レイ君◯ね。

 嫉妬に支配された俺は完全に我を忘れた。その後、周辺視野を使うことはなく、何ヵ月経ったかすら分からない、ある日のことだった。

 嫉妬の念がようやく消えて、俺は、久しぶりに周辺視野を使用した。

 視界が捉えた場所。そこは天神家ではなかった。目の前で天神母が、寝台の上に横たわり、その周りを人間が囲んでいる。

 どうやら出産が近いようだ。天神母は裸。近くには、天神父。そして、人間達。みんながみんな、天神母の白い肌を眺めている。

 羨ましい。もっと間近で見たい。見てる奴らが、うざい。うざい。うざい。

 この手のものに関しては、俺が1番執念深いだろう。見れなければ、怒りに我を忘れる。現に今もそうなっていた。

 邪魔なんだよ。てめぇら全員。ふざけんなっつーの。あぁうざい。あぁマジで◯ね。

 今は出産前。天神霊羅はだいぶ成長している。だから、今なら多少は動かせる。だから俺は、子宮を蹴った。蹴っただけだった。なのに。

《擬似筋力G 付与》

 一瞬の出来事だった。擬似筋力により、強化されすぎた。蹴りは、あろうことか、子宮を突き破り、肉を突き破り、骨を突き破り、あらゆる臓器を突き破った。

 周りを囲んでいた人間の1人が驚きのあまり倒れた。仕方がないと言ってもいいだろう。目の前で人が爆ぜたのだから。

 1番驚いているのは、案の定、天神父だった。最愛の人が爆ぜた悲しみ。驚き。どれも、俺や他の人とは、比べものにならないだろう。

 天神父は立ち上がり、静かにその部屋を後にした。妻の死に様を見たくないのだろう。

 俺にはその辛さが理解出来る。自分の死体を見た俺はその場から逃げようとしたから。結果逃げ出したから。

 意識のある人間は、天神母の死体の中に、紅に染まった天神霊羅を発見した。

 息があることを確認し、霊羅を別の部屋へと運ぶ。そこで霊羅は点滴を打たれた。

 それを見に来た、天神父の顔は、絶望に染まっていた。最愛の人が死んだ悲しみは、子孫の繁栄では賄えないのだろう。

 天神父の顔は完全に崩れていた。今も泣き続けている。泣いても根本の解決にはならない。けれど、安心は出来るのだろう。

 その安心に縋る、天神父を見て、俺は、罪悪感に囚われた。俺のせいで、アイラさんは死んだ。俺のせいでレイ君は泣いている。

 俺は、 罪悪感を振り切る為に、忘れる為に、涙を流し声をあげて、泣き喚くのだった。


 俺はあの空間へと戻っていた。先の光景を思い出し、涙腺が限界に達した。

《ミッション達成 天神アイラの死により、祝われることはなかったが、天神アイラは生命保険に入っていた為、保険の金をもらえた。1000万円入手》

 そんなの酷すぎる。人が死んだ方が復活に近づくなんて、おかしいに決まってんだろ。だいたいお前が、擬似筋力なんてしなければ良かったんだ。

 返答は来ず、声となり、空気を震わさない、俺の思いは消えていった。そして一粒の水滴が俺の頰を流れた。

 これから、天神霊羅を操作する人は、アイラさんを見ることが、ねぇってことなのかよ。ごめんな霊羅。面識ないけど。

 後で霊羅に謝ることを俺は決めた。面識がどうのこうのではなく、ただ純粋に謝りたいだけだった。何を言われても構わない。恨まれたって、殺されたって。それ相応の事をしたのだから。

 このゲーム、霊羅に勝たせてやりたい。そこまでたった一度のイベントで思ってしまう、自分の馬鹿さがやばい。

 残り252マス。8マスを最大と考えても最低でも後、31回はイベントが起こる。そのイベント全てで感情がコロコロ変わっていたら、何を目指せばいいか分からなくなる。

 俺は決めた。絶対に俺が勝つ。勝って、霊羅と結婚する人生にする。

 その決意を胸に抱き、新たな道を作るべく、サイコロを地面に投げつけた。

全角スペース

スマホじゃ辿り着けねぇ。

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