1章 声と遊戯と絶望と
次から物語が分かれます
今回は分岐なし
動きたくても動けない。考える知能はある。のに、肉体がいう事を聞かない。それもそのはず、なにせ、まだ産まれたばっかなのだから。
周りを見渡す。首が動かない。いう事を聞かない肉体に次第にイラつきを覚える。
途端、視界が濁る。うるさい泣き声がする。誰が泣いているのだろうか。などと頭では考えるが肉体は痙攣する。無論泣いているのは俺だ。
と、思ったが泣き声は一つではなかった。左右から泣き声が聞こえる。他に誰かいるのだろうか。周りを見たい。しかし、肉体は動かない。俺の泣き声は更に大きくなる。
うるさい。うるさい。うるさい。
『えー、どうも人生ゲーム参加者の皆さん』
イラつきに囚われた俺は、誰か分からない声を聞く事が出来なかった。仕方がない。そもそも先の発言は俺、いや俺達の泣き声でかき消されてしまってるのだから。
『お〜い、君達聞いてるか?聞こえてんのか?』
泣く。泣く。ひたすら泣く。今の俺には泣く事しか出来ない。他の奴らもきっとそうなのだろう。ただひたすらに泣く。
もう自分が泣く事に違和感すら感じなくなった。ただ周りの泣き声にイラつきを感じる。
うざい。うざい。うざい。
『駄目だなこれ。全く聞こえてない感じだ。あぁ仕方ない。みんな戻れ』
途端に俺の体は大きくなる。はやすぎる骨格の成長に皮膚が付いてきていない。故に骨が皮膚を貫き、紅く染まった姿を見せる。
瞬間的な痛覚の刺激に脳はついていけず、遅れて痛みがやってくる。もがく。悶える。痛みが体を支配する。意識が失われていく。
痛い。痛い。痛い。予兆なく襲ってきた痛みに俺は飲まれていった。
『はぁ、またやってしまった。最初から成長した姿にしようかな。次は』
目覚める。痛みを感じない。骨が見えない。そして何より、自由に動ける。
どうやら産まれたてという地獄は去ったようだ。周りを見渡す。首が動く。泣かない。問題ない。そして、視界に映り込む数人の人間。
同じ人間がいるという安心感に、安堵が隠せない。話しかけようと近寄る。
『よし。これでオッケーだね。それじゃあ改めて、人生ゲーム参加者の皆さんあなた方にはこれから人生ゲームをしてもらいます。』
どこからともなく聞こえてくる謎の声に、俺の背筋は凍る。何故だろう。優しげな声。聞いた事があるような声。その事実に何故か俺は怯えている。
『君達はみんな不思議な形で死んでいる。だいぶ理不尽な死を遂げたんだよ。うん。酷かったね。本当に。だからね、かわいそうだから、君達6人の中から1人、生き返らせてあげるよ。好きな時、自分がもう一度体験したい事や、変えたい事。好きな人生構成出来る権利を得た上で、生き返らせてあげるよ』
内容が頭に入ってこない。知識から恐怖が生まれる。この初めての経験にも恐怖を感じる。
二重構造の恐怖に体がすくむ。何故。浮かぶのは疑問。そして恐怖。誰なのだろうか。
絶対に俺は知っている。この優しい声を。しかし、それは禁忌に等しいほど闇を抱えた何か。そう直感と記憶が言っている。この声を聞いてはならない。しかし、この声は、何か大事な事を言っていた気がする。
目の前の光景からその事を察せる。目の前では4人の人間が何か話している。1人は悲痛の表情。1人は感激の表情。また1人は無の表情。またまた1人は表情を見ることすら出来ない。数々の感情が渦巻いている。そんな輪の中に入りたくて、俺は、
『生き返る条件だけど、それは、この人生ゲームで一位になること。それが復活条件。6人中1人は助かるってことだね。まぁ逆に一位になれなかった人は地獄に逝くだけだけどね。そこまで失敗のペナルティーは重くないから安心してね。それじゃあ、人生ゲームのルールを説明するよ。簡単に言うと、他人を操り、お金を稼ぐ。それだけだね。お金の稼ぎ方はいろいろあるから、子供でも安心して操ってね。人生ゲームだから、マスが進むごとに操る対象が大きくなるから。ひょっとしたら、学園でイチャラブな事だって出来ちゃうかもだよ。そして、最終的に資産が1番多かった人が復活。というわけです。操る人は毎回毎回6人の中から選ばれるから、人生めちゃくちゃにしたら他の人がその人になった時だいぶ不利になるかもね。まぁそこも戦略ということです。どう理解できた。それじゃあさっき言った6人のメンバーを紹介するね。
1人目 血津女 存亜
2人目 安西 重信
3人目 樹史 流我
4人目 天神 霊羅
5人目 未鹿島 零終
6人目 封華 強導
これで全部だよ。それじゃあ、ゲームはそろそろ始まるから。覚悟していてね。』
その場にいた全員が力無く地面に崩れ落ちた。きっとみんな同じ気持ちなのだろう。何故対象の6人の中に、自分の名前が入っていたのだろうか。自分を他人に操られるのだろうか。なんなのだろう。
そして、思い出す。聞こえてきた声。それが脳内再生される。導き出される一つの答え。俺はあいつに殺された。確信した。自分の死に様を思い出す。謎の死。
何故あんな風に落ちたとか。何故あんなにも高かったのかとか。何一つ分からない。疑問しか浮かばないあの死に方に違和感を覚えないわけがない。あの時き
『そういえば、言い忘れてたけど、このゲームを辞退した場合のみ課せられる罰ゲームを用意しておきましたから、気軽に辞退してみてくださいね。それと、もう時間がないので始めちゃいますね。人生ゲームを。それじゃあ始めましょう』
納得がいかない。何故こんな事をあいつはやっているのだろうか。まるで納得がいかない。考える俺は完全に他のみんなに置き去りにされていた。
サイコロを振って出た数字の数だけ進む。ここら辺は原作と同じか。俺は、サイコロを持ち、精一杯天高く投げつけたのであった。
短いけど、分岐点がここだから仕方ない。(時間がないだなんていえない)