魔王の宿命
「ボブ、魔王城が占拠されました」
「ん?そうか、あそこはもう空っぽだ、庶民にくれてやれ」
「それなのですが・・・魔王を名乗る勇者が現れまして、現在暴れております。このままでは被害が大きくなる一方でしょう、恐らく選ばれしものかと・・・」
「うわぁ・・・だりぃ・・・」
出ると思ったよニセモノ・・・さらに選ばれしものとか手がつけられねえよ。
だって俺そいつにやられる予定だったやつだもん。
勝てんのかな。
「聞けエミー」
「なんでしょうかボブ」
「俺たちが逃亡する意味はなんだ」
「魔王の一族の命の危機を無くすためです」
「選ばれしものに挑んだら命の危機はどうなる」
「当然、高まるでしょう」
「だよな?じゃあ」
「しかしボブこのままでは」
「あーいいどうせ正論だろお前のことだ、だけどな、俺はあいつに倒されるはずだった、今はわけあって逃亡して生き延びているがな?逃れられない運命というものがあるんだ、悪という人の都合で作られた存在はいずれ作られた自称正義によって囲まれて倒される役目なんだ、NPCのようなお前にはわからないかもしれない」
「あなたは、もう魔王ではございません」
「何が言いたい」
「私はあなたを悪だとは思いません、したがってあなたが倒されている姿など想像もつかないのです」
「だからどうした、能力は魔王のままだ、力の差でもあって負けることもあろう」
「なぜ勇者が勝つと思われますか?なぜ勇者が強くなり魔王を倒すことになるかわかりますか?」
「魔王の俺にわかるとでも?」
「どんなに自惚れた勇者でも、どんな自称勇者でも、守るものがあるのです。そのために強くなり挑んでいる。だからいずれ勝つのです」
「そうかもしれない、だが俺は魔王だ」
「あなたは先ほど脳内で戦いましたね、挑んでも勝てない、倒される運命だと、それは傷つく人のため、戦った結果ではございませんでしたか?私は人のため正義のために戦う魔王様を最強だと思います、なのであなたが倒される未来など見えません」
言葉が出ない、何も言い返せなかった。
召使いに説教される魔王がそこにいた。
情けなかった、しかしそんな情けない魔王にも従ってくれる召使いがいた。
「わかったよ、挑んでやる」
「本当ですか」
「ああ、俺を誰だと思っている?」
「ボブです」
ああ、そこは欧米なんだ。
魔王城、名前だけでもおぞましいその城、元は俺の家だった。
巨大な門が開かれ、黒いマントと杖を持った如何にも魔王な男が堂々と正面から入る。
俺が座っていた王座に、別の人間が座っていた。
これが冒険者の気持ちか・・・なんて冒険者の気持ちに浸っていると、王座にいる人間が立ち上がる
「今更ノコノコと帰ってきては城を取り返しに来たつもりか?勇者に居場所を取られる気分はどうだ、元魔王」
「何が勇者だ、人を傷つけ力に溺れた人間をお前ら勇者が悪としてきたんだろうが、倒そうとしてきたんだろうがよぉ・・・」
「いいザマだ、だがな、この世界は力こそが正義だ、力があれば壊すことも救うことだってできる、それを悪だの正義だの呼び名などどうでもいい、貴様はそんなことを気にしている時点で弱者だということをなぜ理解しない」
「そうだ、悪だの正義だのどうでもいい、俺は力に溺れた気に食わないお前を倒そうと野望を抱いたただの・・・魔王だ」
力と力のぶつかり合い、力尽きるまでお互い互角に消耗しきった戦いで俺は始めて理解した
俺にはこの場所で立ち続けなければならない理由がある、守るため、自分の居場所に帰るため、力を振り絞り、そこに立つ
「なぜ貴様は立ち上がる・・・貴様はこの場所を捨てた、命の危機から逃れるために、違うか?なのに何故帰ってくる?何故戦い続ける?」
「お前が人を傷つけることになったのも・・・元はといえば俺のせいだ、俺が逃れるために去ったから、お前は自惚れ力に溺れた、俺にはそれを止める責任がある、守らなければならない」
「魔王が今更何を言っている・・・それは俺の役目だったはずだろうに、何故世界を手にしようとしない、その力を持って溺れないものがいるものか、俺にはお前がわからない」
「わからなくていい、俺にはボロ屋がお似合いだ」
元勇者は力尽きその場に倒れる。
ボロボロになりながら開かれた門から元魔王が退場し、ボロ屋へと帰る。
「お帰りなさいませ!」
「あぁ・・・」
「よくぞ勝たれましたね、魔王様」
「よせ、俺の名はボブだ」
「はい、ボブ、今夜はご馳走ですよ」
魔王もどきの物語は一件落着なのかもしれない。