魔王の悩み
暗い部屋の中、王座に佇む一人の男がいた。
扉は開かれそこから光が差し込む。
シルエットから見える剣と盾、マントを揺らしながら部屋へと入ってくる四人組がそこにはいた。
「街の平和のため、貴様をここで倒す」
四人組は武器を構え戦闘態勢へと入る。
「はぁ...君達レベルいくつ?」
「レ、レベル?一体なんのことだ!何を企んでいる!」
「そんな装備で倒せると思ってるの?もしかして扉の前でセーブして何回もロードする気じゃないよね」
「さっきから何を言っている、命乞いをするなら今だぞ」
「過信しすぎでしょお、あーその如何にもヒロインそうな彼女のため?そっか、かっこいいところ見せた
いもんね」
「いい加減にぃ・・・」
指パッチンなんてする必要もないが、雰囲気を壊さないために音を鳴らしながらその自称勇者を爆炎で吹き飛ばす。
「魔王といったら爆炎使うでしょ、なのに耐性も持ってないのね」
如何にもヒロインな僧侶が自称勇者に涙を流しながら駆け寄る。
「回り込んだりしないからさ、逃げていいよ」
憎しみの目を向けながら冒険者たちは去っていった。
「雰囲気大事にするこっちの身にもなれよ・・・」
俺はいわゆる魔王という立ち位置だった。
別に世界が欲しいわけじゃない、家系の問題で継ぐ以外に選択肢がなかっただけだ。
実際この立ち位置以上に裕福な暮らしはないと言える。
「元魔王です」と言いながら勇者のいる宮殿の王様に駆け寄ってその座を奪うくらいだ。
魔王には一つの悩みがあった。
最近、冒険者が多すぎる。
おかしい。
なんだ、どこを見てもヒロインを連れた主人公気取りの勇者ばかり。
我こそは選ばれしものだと言わんばかりに戦いを挑んでくるのだ。
確かにな?それで勝てれば英雄だ、だが俺はギャンブルの道具じゃない。
いっそ滅ぼそうだとか思うのだが、それでは魔王のテンプレで負けた気分になる。
どうしようか。
そんなことを考えながら飯食って寝た。
「なぁ召使い、なんか案ないか」
「案、といいますと」
「俺は滅ぼしたいわけじゃない、だが自称主人公気取りの勇者の相手をいつまでもしたいわけでもないんだ」
「滅ぼしてはいかがでしょう」
「お前はNPCか?中ボスか?ボスに擦り寄ってるとフラグ立って死ぬぞ」
「何をおっしゃっているのかわかりません」
「まぁいい、それ以外だ案をくれ」
「そうですね、、、行方不明になればよろしいのではないでしょうか」
「行方不明?」
「そうでございます、あなたがいなくなり、国に危機が訪れなくなれば、勇者は全員一般人に戻るはずでございます。何にせよ、標的を無くすわけです、RPGならば詰みです」
「なるほど、お前にしては良い提案だ」
「有り難きお言葉」
俺はさっそく家族に提案した。
「どうでしょう父上、この一家の危機から逃れる良い策だと思うのですが」
「いんじゃね?命狙われないなら、どうせいつか選ばれしもの来るし、逃げようや」
決定だ
「なぁ、召使い、俺はどこに行方不明になりに行けばいい」
日本語がおかしい気もする。
「そうでございますね、豪華な家に住んでは、見つかってしまう可能性もあります、ボロ家に住みましょう、庶民になりきるのです」
「庶民か・・・面倒くさいな」
「これもあの冒険者の雑魚共で手を汚さないためです、致し方ありません」
「そうか・・・」
俺は町外れにありそうなボロ家に召使いを連れて引っ越した、家族とはバラバラだ。
「あの魔王様」
「今日からその名前で呼ぶな、俺を殺す気か」
「かしこまりました、では何とお呼びしましょう」
「そうだな・・・」
RPGの名前とかすごく悩むタイプの俺がすぐにしっくりくる名前を思いつくはずもなかった。
「じゃあボブだ」
「Hi ボブ!元気しているかい?私は元気よ!」
「俺に英作文のような文で話しかけるな」
「かしこまりましたボブ」
「あとその名前は後で変えるから」
「はい」
「それで・・・ボブ」
「YEAH」
「・・・なぜ私を家に招待なさったのでしょう」
「なぜって、我家事できんし」
「しかしボブ、それでは見つかる可能性が高まってしまいます」
「心配するなエミー、ヒロインなんて誰だって連れてるさ」
「私が英作文の登場人物のような名前に・・・」
「見つかっても我が燃えカスにするから安心せい」
「わかりました」
魔王の現実からの逃亡生活が始まった。