第八話 対決?ゴブリン集団
【茜視点】
「広いわねー、何処に親玉が居るのかしら?」
そう言いながら攻撃してくる少数のゴブリンを投げては殴り、爆風が巻き起こる。
「てか、本当にここで待つの?」
「・・・恐らく、ここが一番広い。葵の戦闘力を考えればここが・・・」
「なるほどねぇ、ところで翠?」
「何?」
「奥から雄叫び、それも段々大きくなっているってそれ即ち・・・」
「・・・乱戦構築、葵が来てから反撃開始」
「何でまた、さっさと倒しましょうよ」
「・・・あの雄叫び、ただ者じゃない。ゴブリンの士気も上がっている、この状態で攻撃したら・・・」
「無防備なところを反撃され一瞬で粉破微塵・・・か」
「そう」
「耐えるしか無いわね・・・『仁王立ち(パーフェクト・ディフェンス)』まさかこの技を使う日が来るなんてね・・・」
「・・・来るわ」
ゴブリン共の雄叫び、その内の一体は一回り、いや、二周りも違っていた。
【葵視点】
「さて、と。探索は必要無いわね」
私は先程の不意打ちで使った技で消費した魔力を回復しながら呟く。
ゴブリンリーダーは指揮能力もある、急がなければ二人が危ない。
ただ、間に合わない可能性がある。
その時、村に向かう最中、翠が言ったことを思い出す。
「・・・茜は技を持っている、その戦闘スタイルからは考えにくい技を」
この時、私は眠気が多少あったから覚えていなかったが・・・。
今はそれに賭けるしかない。
「二人とも、無事でいなさい・・・」
他人を重んじない私が初めて重んじたその瞬間、雄叫びが聴こえる。
煩い、その一言だ。
その時、視界が一気に広がる。
その光景は小さな戦争だった。
だが、切った張ったを行う戦争とは違う、反撃すら無い防衛戦だった。
翠の姿が見える、不思議なことに30体前後のゴブリンが居るにも関わらず翠の乱戦は無い。
逆に茜の姿は見えない、だが、位置を特定するのは簡単だった。
技を発動している際に発生するオーラが茜の位置を知らせていた。
茜の位置が分かればこちらのもの、30体のゴブリンを倒し、一気に持ち込ませる・・・!
「茜、下がって!『鬼神豪雨』死になさい!」
【茜視点】
『仁王立ち(パーフェクト・ディフェンス)』を使ってから数分が経過していた、敵の猛攻は激しく、何時崩されてもおかしくない状況だ。
後ろから翠の援護も来ているがかなり辛い。
そんなとき、同時にゴブリンが攻撃してきた、これなら受けられる・・・そう思っていた。
何と微妙にタイミングをずらして来たのだ。
これでは攻撃を同時に受けきれない、そう思ったとき・・・。
「茜!下がって!」
そんな声が聴こえたので反射的に下がっていた。
その時、斬撃の豪雨が目の前で巻き起こった。
その豪雨が止むと30体近く居たゴブリンは全て屍と化し、残りはゴブリンの親玉だけとなった。
「今のは・・・」
「・・・見たことない、こんな技。・・・葵、貴女は一体何者なの」
「ただの下級冒険者よ」
「・・・そう」
そんなとき、バタンと音がする。
ゴブリンの親玉がそう早く挫ける訳が・・・そう思った瞬間だった。
何と、見事と言える程の土下座をしていたのだ。
近くには白旗を生存したゴブリン達が持ち上げていた。
即ち、降参の合図だ。
「・・・マジで?」
私はしばらくの間、唖然としていた。