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「…さすがだな、サク」
ソウがボロボロの格好でサクの元へ来た。
「うんん、二人の頑張りがあったからだ」
よ、という言葉は肉を切る音にかき消された。
何が起きたのか、状況を把握するのにとても時間がかかった。
目の前には、02という数字と、「cherub」と書かれたアレス支給のコート。
「ーーーーーーーへっ?」
cherubの02
なんて、一人しか思いつかないななんて、
サクの脳はそんな事を思っていた。
ドサッ。
ソウが赤い髪の向こう側で倒れているのが見えた。
赤い髪の人物が、ゆらりと此方を向く。
ぶしゃっ。
鋭い腹部の痛みと共に、そんな音が耳に響く。
じわりと痛みがひろがり、腹部が暖かい。
「ーーーーん、で?
アキーーーーーーー」
そんな疑問が、声に出た
真っ赤な髪をした少女ーー
アキは、背中の鞘に刀を収めた。
表情は見えない。
「ーーーこれ以上、知られちゃこまる。」
アキは、サクジンの遺体を消しながら、今まで一度も見た事のない、感情など一切読み取れない冷たい目で言い放った。
なんだ、案外話せるじゃん
そんな、事を思いながらサクの意識は途絶えた。
ーーーーーー
「ん…」
気が付くとそこは薬品の匂いがする部屋だった。
「!ソウさん!気が付きましたね。一体、何があったんですか!?」
目の前には桜色の髪を後ろでおだんごに結わえた少女、「luster」班員三村 紗季が覗いてきた。
最後に見た光景は、確か。
「ーーーっ!やめろ!」
ソウがサキの手を振り払う。
サキと周りにいた他の班員が一斉にこちらを向く。
「ーっぁ、ワリィ。」
サキはいいえ、と小さく返事をした。
頭痛がする。
あれは、夢、なのだろうか。
それより。
「サク!」
周りを見渡すとサクは「luster」班員の和泉 八重に手当てをされていた。
「手当てしてるから少しまちー。」
そう彼女が呑気に答える。
サクも、手当てを受けている。という事は。
ーーやはり、夢じゃなかった。
不思議と憎しみも怒りも沸かなく、ただ、何故?という感情が渦巻いていた。
「ソウさん!霧島アキは?アキさんはどこ?」
少し焦った表情でカリンが聞いてくる。
彼女は、なんだかんだで一番アキが好きなんだっけ。
「……アキは、生きてる」
俯きながら小さくソウは答えた。
何かを察知したのか、カリンはただ心配そうな表情でソウを見た。
「目が覚めたか、ソウ」
声がする方に目を向ければ、「cherub」直属上司の波瀬 浩一がいた。
「……ハセ上官。」
「……悪いが、cherub以外は席を外して貰おうか。」
「「「はっ」」」
返事と共に他の班員が部屋を出て行く。
最後にシュウがばたんと扉を閉めた所でハセがはぁ、とため息をつく。
「……大体、起こった事はなんとなく分かる。それはアキがやった事だろう。」
「!なんでわかるんすか?」
ソウがハセの顔を目を見開き、凝視しながら言った。
「サクジンにやられたならそんな鋭利な傷にならない。大体が潰されるか手足がなくなっている。」
「…ハセ、上官。彼女は…アキは、一体何者なんですか?」
俯きながらサクが初めて口を開いた。
「……それを、今から話す。
彼女の過去、
…彼女の身に何があったか。いや、彼女の身に何が起こっているか。」