4
「…ん゛っ。」
キイィイイン、と、甲高い金属音が鳴る。
アキが刀に気を取られている隙にソウはアキへ向けて発砲した。
空中で身体をひねり、それを避けながらアキは刀を振る。
ソウはち、と小さく声を漏らし伏せた。
だがそこに蹴りが飛んでくる。
「…っあ!」
なんとか急所を避け、受け身を取る。その先に一太刀飛んでくる。
アキが刀を精一杯伸ばした隙に懐目掛け発砲した。
今度は確実にアキにぽん、と当たった。
そしてソウはアキの頭に銃を突きつける。
ソウはち、と小さく声を漏らし伏せた。
だがそこに蹴りが飛んでくる。
「…っうわっ!」
なんとか急所を避け、受け身を取る。その先に一太刀飛んでくる。
アキが刀を精一杯伸ばした隙に懐目掛け発砲した。
今度は確実にアキにぽん、と当たった。
そしてソウはアキの頭に銃を突きつける。
「へっ…っはぁっ。 1127戦564勝563敗だ。」
ソウが告げるとアキは悔しそうに目をそらした。
訓練室。
ここではありとあらゆる機械があり、自由に自己鍛錬が出来る。
アキは質量はアキ愛用の刀と同じだが人に当たるとふにゃ、と変形する刀、ソウは当たると痛いには痛いが死にはしない特殊は弾を使っていた。
「ふぃー。今日はここまでにするか。」
さすがに今日は疲れた。とソウは苦笑する。
サクジンを倒し、その後今現在11時まで訓練していたのだ。
いい加減寝ても許されるだろう。
「着替えてくる」
そう呟き、アキは部屋を出て行った。
一応更衣室は男女別々にある。
ソウも男子更衣室へ行き、ベタつく汗を流すべくシャワーを浴びた。
シャワーから出ると、後輩に当たる第3チームlusterのリーダー涌井 駿がいた。
「……ちは。」
「おう。」
紺髪で男にしては色素が薄い肌の彼は口数が少なく、いつも冷静であった。
「…先輩は。怖く、ないんですか」
ぴくり。とソウが反応して通り過ぎようとする足を止める。
一瞬の沈黙の後、ソウが口を開いた。
「…俺達は、もう死ぬ方がマシな地獄を見てきたから。」
少し切なそうに微笑んだ。
「…先輩が死んだら、俺達はもう絶対に勝てない。俺達と先輩達の能力が違いすぎる。」
堰を切ったように下を向きながらシュンが言う。
ソウ達cherubが死んだら次出動するのはluster。
通常5人で組む所をソウ達だけ三人なのは能力が飛び抜けていて誰も追いついて来れなかったからだった。
「…シュン、やる事は一つだろ。今はたっぷり時間がある。訓練に励め。それに、俺達は死なない。まだ死ねない。」
まだ。
三人で、穏やかに暮らせる日が来るまで。
死ねない。
(死ねないんだ)
そう、心の中で繰り返した。
「……。はい。頑張ります。すぐ、先輩達に追い付きます。」
シュンは先ほどまでの辛そうな表示と一変して、強い眼差しでソウを見た。
「頑張れよ。」そうシュンに微笑んでその場を後にした。
ーーーーー
廊下へ出ると、何やら甲高い声が聞こえた。
「てか先輩ってー、そんなに胸あっても邪魔じゃないですかぁ?」
同じくシャワーを浴びたと思われるアキに、金髪ツインテールの第四チーム「beat」リーダー安堂 花梨が絡んでいた。
彼女は何故かアキにいちいちつっかかり、ソウを見つけると黄色い声を上げていた為、ソウは少し苦手だった。
「…カリン、そろそろアキ貰ってもいいか?」
アキも対処の仕方が分からずただカリンの話を聞いていたのでそろそろ疲れただろう、とカリンに声をかけた。
「!ソウさんっ」
その目にソウを認めた瞬間、カリンはソウに駆け寄った。
「久しぶりです!今日は生きて帰ってきて…。スゴくほっとしました。あ、先輩なら大丈夫だと思ってたんですけどっ!」
一気にソウにまくしたて、ソウは苦笑して「ありがと。また今度な。」とカリンに告げてアキとcherubの部屋へと足を進めた。
「あれぐらい適当に交わしときゃいいんだ」
「適当が、分からない。」
そう呟いて、アキは赤い目を伏せた。
彼女の長くて真っ赤な髪からは水が滴っている。
「…まあ、そうだな。ほら髪の毛ちゃんと拭け!」
ソウはアキに自身が首にかけていたタオルをかぶせた。
アキは素直に受け取り、髪から水滴を絞った。
(…明日は、チームで合同訓練だな、任務がなければ)
ソウは密かに笑みを漏らした。