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ウィーク・マジシャンズ  作者: テオ
デミル入学編
2/2

反骨心と純心

世界観説明


帝国主義魔法国家『オウカ』

主人公、神田エイジが所属する国家である。

建国には市沢、中端、恵三谷とあと一つの家が旧王家を滅ぼし、建国した。

しかし、最後の家は市沢、中端、恵三谷の建国三家に歯向かい、淘汰され、歴史上から姿を消した。


立地的には四方八方を他国にかこまれているが、国民の九割が日常的に満足に魔法を使える国であり、老若男女誰でも攻撃、防御、回復、妨害魔法が使えることで隣国からは恐れられている。


よって魔法を使った犯罪もしばしば怒るが、誰でも若い頃からあまり老衰せず、魔法が使えることもあり被害者がトラブルを納めてしまうことも少なくない。

また、魔法のみならず科学も彼らの生活文化の中に溶け込んでおり、最近は魔力で動く携帯電話MDフォンが人気である。



最後に余談だが、個人差はあるのだが魔力量の高い人間は普通の人より若々しく見えるのも特徴だ。

「ん、う―ん…」

部屋の窓から差す朝の光と小鳥の(さえず)りで少年は目覚める。

まだ頭がしっかりしないのか、大きなあくびをひとつしたあと、彼は寝ぼけなまこを擦った。


そして、後頭部をポリポリとかいたあと彼はようやくベッドから起き上がった。



「もう朝か…」

彼はひとしきり呟いたあと、勉強机の上に置いてある手鏡で自分の顔を見る。

汚れをしらない黒の瞳に、大人っぽくも少し幼さの残る端正な顔立ちにパジャマの上からもわかるほっそりしつつも弾力のある筋肉のある体。

下ろされた短い金髪も髪自体は入念に手入れされているのかとても美しいのだが、今は寝癖でところどころ跳ねている。


そして、それをセットしようと彼はサラサラの自分の髪に手を伸ばした。


寝癖のままでも彼は充分な美少年なのだが、一つだけ問題があった。


それは生まれつきなのか少しだけ目付きの悪い狐目が他の端正なパーツの邪魔を(といっても狐目も彼のチャームポイントの一つだが、本人は自覚していない)しているようにも見える。


だから、美少年と言えど町中で彼に声をかける女性は中々いない。


そんなことより彼の紹介をしよう。

美少年な彼の名前は神田エイジという。 平凡そうな名前だが、エイジは‘ある訳ありな理由’で魔術師を目指す地元の中高生から脚光を浴びている。

まあ、その理由自体エイジは快く思ってないのだが、今はよしとしよう。


そして、やっとセットし終わったのか、手鏡を勉強机の上においた。

「エイジ、朝よ~」

「あぁ。わかったよ、母さん!!」

すると、いいタイミングで母が自分を呼ぶ声がしたので、エイジは返事をして下の部屋へと降りていった。


2


あくびをしながら、ドアをあけリビングに降りてみると机にはすでに母が作った色とりどりの美味しそうな朝食が並べてあり、父親と母親は食事の真っ最中だった。


エイジの父親である---神田始(はじめ)は朝食をとり終わったようだ。

エイジと同じく目付きが悪くエイジよりさらに厳つくなった顔に黒髪のオールバック。そして、軽く生やしているアゴヒゲ。

それをさわりながら、彼は新聞を気難しい顔で黙読している。


一方、母親である---神田ミハルは長い金髪をみつあみにしたヘアスタイルで、トーストを満足そうに食べている。

また、ミハルは童顔なので、満足げな顔だけ見るとエイジのお姉さんではないのかと言われるほど、若々しい。


「エイジ、ボケーとしてないで飯食えよ飯」

「言われなくてもわかってるよ」

ボケーと立って一向に席につかないエイジをみかねたのか、始がぶっきらぼうな様子で呟くが、反抗期のエイジはぼやきながら、それに従う。


「いただきます」

そして、手を合わせたあとトーストをひとかじりしたあと、隣の席をみた。

そこは空席なのだが、いつもなら彼の姉の綾那(あやな)が座る予定だったが、あいにく彼女は大学の二週間の魔術実習に出向いたばかりだった。


「綾那に会いたいの、エイジ?そうよね、エイジはお姉ちゃん子だものね」

「そんなんじゃないよ、母さん…」

姉の席を一瞥するエイジが気になったのか、おどけた様子でミハルはエイジをからかった。

逆にエイジは母親のお茶目な冗談にたじたじといったようすだ。

「高校生になろうというのに、お姉ちゃん大好きなんていってちゃ、世話ねぇなエイジ。

『デミル』の先輩として言わせてもらうが、姉ちゃんのケツ追いかけてるようじゃダメダメだぞ」

「う、うるさいな!!ね、姉ちゃんは勉強面では尊敬はしてるけど、そんなんじゃないからな!!」

その光景を見て、始もニヤニヤ笑いながら口角をこぞっていじりはじめ、エイジは真っ赤になって否定する。

ミハルはいつも通りあらあらといいながら、エイジと始を優しい眼差しで見つめている。


こんないつも通りの神田家の春の朝の一ページだが、この日は少し違った。


そう、エイジが高校生になり、しかも通うことになる学校はエイジ達が住んでいる町にある国内有数のエリート育成魔法学校である『デミル』。


当たり前だが、そんなエリート校に我が子が通うことになると両親としては鼻が高いのだろうと思うが、残念。

『デミル』 は始とミハルの母校であるし、綾那もそこに通っていたので、二人にとって別に驚きはなかった。

しかし、それ以上に自分達が通った学校にエイジがいってくれる嬉しさの方が大きかった。


「ねぇ、エイジ?そろそろ時間じゃない?」

談笑を何分間か続けたあと、部屋にかかっている時計をちらりと見たミハルが少し意地悪っぽくいった。



「えっ!?うわ、もうこんな時間かよ!?行ってきま…」

「おばあちゃんに挨拶してから行きなさい」

遅刻しそうになり慌てて駆け出そうとするエイジを引き留め、ミハルは部屋の隅におかれたピアノの上にある写真立てを指差す。



エイジもそう言われては急いでいるのだが、ピアノの上の写真立てを見る。

そこには満面の笑みを浮かべた幼い頃の自分と手を繋いでいる長い黒髪の若々しい女性と欠伸をしながらカメラから顔を背けている若い白髪の優男が写っていた。

優男の方はちょうど髪が重なっていて顔は見えなくなっている。

しかし、本当にこの人達はエイジの祖父母かと言われると信じられないくらい若々しく、どうみても父親と母親とその子供にしかみえない。

その祖母―――雪音は五年前に亡くなり残念ながら、今この世にはいない。

今思い返すと、厳しくて優しい上品な女性であり、少し照れ臭いが自慢のおばあちゃんだったとエイジは今も思っている。


そして、目線を祖父に向けるとエイジは一瞬で笑みをかき消した。

彼が憎たらしくて嫌いなのかと言われると、たぶんイエスとは言えないし、かといってエイジは自分の祖母であり、彼の妻である雪音の葬式に姿を見せなかった男を尊敬も出来なかった。

それにそんな情けない祖父を越えることが小さい頃からの目標であり、夢だった。


彼の名は神田洋一郎。

五年前の雪音の葬式に姿をくらましたあと、そのまま帰ってこなかった。

なのに、エイジ達家族が心配しないのはある理由があるからだ。

その理由こそが、エイジを縛っている最大の理由である。


「いってくるよ、雪音ばあちゃん」

エイジは微笑みながらそう呟き、祖母の雪音に挨拶を済ませた。


そして、同時に彼は心の中でこうも思っていた。

(絶対、あんたを魔術師として越えてやるよじいちゃん…。

それで、俺とあんたは違うってことを見せてやる)


写真立てをそっとおき、少年は中に大きい野望を胸にもち、ブレザーの制服に着替え、家を駆け出していった。

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