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きれいな女生徒

胸のあたりで、触れ合ってしまった右手の腕首辺りを左手でつかみ、固まってしまった私。


 「ごめん」


 そんな私の耳に届いた、その声に反応して、声の主に視線を向けた。

 その声の主は私に視線を向けていて、視線が合った瞬間、私はどきっとして、鼓動が高鳴ったのを感じた。


 ちょっと長めで、少しブラウン系の髪は染めているに違いない。ビジュアル系?

 かけている眼鏡の奥の瞳は黒く、大きく、そして二重のまぶた。ちょっと理知的なイメージが、髪型と少しギャップを感じる。


 私の頬が熱い気がするのは、手が触れたのが男子と確認し終えたからか、それとも別の何かなのか、私には分からない。慌てて視線をそらして、どこともない空間に視線を向けた。

 私は返事をする事も忘れて、ただ固まっていた。


 「ごめんね。どうぞ」


 再び聞こえてきたその男子の声で、私はようやく返事をしなきゃと言う思いに至った。


 「あの」


 そう言って、視線を向けると、その男子は私ににこりと微笑んでいた。


 「いえ。どうぞ」


 私はそう言いながら、かぶりを振った。

 どきっとした影響からか、声もどこか上ずってしまったようだった。それが少し恥ずかしく、余計に顔が赤くなってきていそうな感じ。


 「いや、俺は別のでいいから」

 「そ、そ、そうですか。では、お言葉に甘えて」


 私は意味も無くどきまぎしている感じの自分が恥ずかしくて、目の前のパンを握りしめると、お金を払おうとした。


 「将之ったら、優しいんだから。」


 その時、女の子の声が聞こえた。

 きっと、さっきの男子が将之と言う名前で、今の私とのやりとりを近くで見ていた女友達が言ったんだろうと思った。


 ただのそれだけの事であって、私には直接関係ないはずなのに、なぜだか、少し気になってしまい、私は声の方向を振り返ってみた。


 そこにはやはり少しブラウン系で、ウェーブのかかった髪をした女生徒が立っていた。

 校内では化粧禁止なのに、うっすらとしているのが見て取れる。

 それは自然な感じで、くっきりとした目に長めのまつ毛に、つややかな唇。

 きれいとはこんな人の事を言うんじゃないかと思えてくる。


 しかも、将之と言う男子に向けている笑顔は見ているだけで、幸せな気分になれそうなくらい、輝いている感じだ。

 もしかすると、彼女かも知れない。

 そう思うと、なぜだかそそくさとお金を支払い、その場を立ち去った。


 パン売り場からそれなりに離れた時、私は立ち止まり、振り返って見た。

将之と言う男子とさっきの女子は一緒に並んで、歩いていた。

 全くお似合いのカップル。そんな感じの二人。

 私の足は再び速まっていった。

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