↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
28/31

将之さんの横に似合うのは

 将之さんは演奏が終わると、私たちの前にやって来た。


 「どうだった?」

 「すごく、よかったです。しかも、こんな近くで見れて、感激です」


 私がどう言おうかと迷う間もなく、横からゆかりが本当にうれしそうに言った。


 「本当? それは何より、よかったよ」


 将之さんはゆかりの言葉にうれしそうに答えた。そして、私の方を向きながら、もう一度聞いて来た。


 「まどかちゃんはどうだった?」

 「はい。すごくよかったです」


 私はゆかりの言葉をそのままぱくって返した。

 曲の事は分からないし、曲がよかったかと言われると、趣味じゃない。でも、そんな事はどうでもいい。将之さんがよかった。そう言う事だ。


 「本当? それは何より、よかったよ。

 じゃあ、もう一曲」


 再び演奏が始まった。

 そして、それから将之さんたちのバンドの演奏は三曲で終了した。

 私たちのところにやって来る将之さん。


 「すっごく、よかったです」


 まだ何も聞かれていないのに、そう言ったゆかりの瞳は輝いていて、それがお世辞でない事を表している。


 「また、聴きにきていいですか?」


 美由紀は上半身乗り出し気味だ。

 おい! だめだろ! と、手の甲で胸のあたりをびしっとしたいところ。


 「だめに決まってんじゃん」


 ちょっと、きつい口調の私。


 「そうだねぇ。今週は俺たちはもう部室使えないんだけど、土曜にセンター街のハマヤのスタジオ借りて、練習するんだ」

 「見に行っていいんですか!」


 ゆかりの積極さは羨ましいかぎり。勢いもあって、将之さんは悩む暇もなく、頷いてしまった。

 それを見て、美由紀とゆかりは立ち上がり、二人で手をつなぎ、ぴょんぴょんと飛び跳ねて、喜びを体全体で表した。


 「はぁー」


 本当にいいの? 私はため息をつきながら、将之さんを見た。


 「まどかちゃんも、来てくれるよね?」

 「お邪魔じゃないんですか?」

 「そんな事、ない。ない」


 本当に強引。


 「なっ!」


 振り返って、他のメンバーに目を向けた。喜んで! と言うような表情ではなく、仕方ないなぁと言う感じの表情で、他のメンバーは頷いてみせた。

 こうして、私たちは土曜日に将之さんたちの練習を見に行くことになった。



 土曜日。

 センター街。この街の中心部の繁華街。そこに向かうには電車に乗って行く。

 私と将之さんが使う駅は同じ駅。

 と言う事は、駅から一緒に行ける可能性だってある。もちろん、早紀さんと将之さんが一緒と言う可能性もあって、その場合は一緒に行くのを諦めるしかない。


 全ては天に任せた。

 そんな気分で、私は駅の改札口近くで、身を隠す。待ち伏せの気分。

 ここから、この街の中心部まで、電車で20分。

 駅から、ハマヤのお店まで、徒歩10分。とすれば、もうそろそろやって来るはず。


 将之さんが上って来る階段との対角線上と言っていい位置で、壁にもたれて待っている。

 そろそろ。そろそろ。そう思ってから、10分。

 ギターのソフトケースを背負った将之さんが姿を現した。


 一歩。

 私の足が踏み出す前に、停止した。

 横に早紀さんがいた。


 明るく輝くような笑顔。

 お化粧もくどくなく、それなのにかわいさパワーアップ。

 大人っぽい服装も、似合っていて、それでいてかわいい。


 それに引きかえ、私は。

 地味と言うより、もしかしたら子供っぽいに近い服装。

 もち、お化粧なんかしていないすっぴん。


 完敗。元々、勝とうなんて思ってはいなかったけど。

 あまりに差がありすぎ。

 元々分かっていた事だけど、将之さんの横に似合うのは私なんかじゃなくて、早紀さん。

 100人中100人が、そう答えるに違いない。

 悔しいけど、認めない訳にはいかない。

 早紀さんに話しかけている将之さんも、すごく楽しそう。


 二人に顔を合わす訳には行かない。

 思わず、二人に背を向け、小走りに駅を出る。

 目指すは私んち。家に帰るしかない。

 俯き加減で、駅の階段を駆け下りる。


 将之さんが私に気付いて、追いかけてくれる。なんて訳もない。

 ううん。追いつかれて、こんな私を見せられるの?

 ついさっきまで、あんな素敵な早紀さんの姿を見ていた将之さんに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。