表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/31

私のお兄ちゃん

感想などいただけたら、うれしいです。

よろしくお願いします。

 私はその時まで、一目ぼれなんて事は無いと思っていた。何の根拠も無かったけど、恋とはある時ふと気付くと、その人の事が気になって気になって仕方ない存在になっていて、私はあの人の事が好きなんじゃないのだろうか、と言うようになるものだと思っていた。

 もっとも、お兄ちゃん以上の男の人なんて、いないんじゃないかとも思っていたけど。



 ダイニングに面した窓からは朝の日差しが差し込み、部屋の中を清々しい光で満たしている。

 ダイニングテーブルに向かう私の手にはマーガリンとジャムが塗られた食パン 半きれがあって、目の前のテーブルの上には温かそうに湯気を上らせたミルクティーが置かれていた。


 そのさらに前には、私のお兄ちゃん 優斗が口をもぐもぐと動かして朝ごはんを食べている。

 このお兄ちゃんは私の自慢のお兄ちゃん。

 きりりとした知性を感じさせる目。それは伊達じゃない。何しろ、この国で一、二を争う東都大学生だ。

 通った鼻筋、今は動いているけど、引き締まった口元。はっきり言って、イケメンだ。


 「ねぇ。お兄ちゃん」


 私がそう言うと、うん? と言った表情で、お兄ちゃんは私を見た。


 「ヨーグルトも食べたいなぁ」


 そう言うと、お兄ちゃんは「困った奴だなぁ」と言う感じの表情を浮かべたあと、そのまま立ち上がり、冷蔵庫に向かい、冷蔵庫のドアを開けた。


 「りんご、桃、ナタデココ。どれ?」


 冷蔵庫の中を覗き込みながら、お兄ちゃんが言った。


 「うーん。今日はナタデココ気分かな」


 私がそう言うと、お兄ちゃんはナタデココが入ったヨーグルトを手に、戻って来た。


 「うん」


 そう言って、お兄ちゃんは私にヨーグルトを差し出した。


 「ありがとう、お兄ちゃん。

 やっぱお兄ちゃんがサイコーだよ。大好き、お兄ちゃん」


 私はそう言って、にこにこ顔でヨーグルトを受け取った。

 「何と言っても、お兄ちゃんは優しいのだ! 頭がよく、イケメンで、優しいなんて、最強よ。

 こんなお兄ちゃん以上の男子なんて、いる訳がない」

 私はいつだって、そう思っている。

 それだけに、「お兄ちゃん、大好き」と言うのは私の本当の気持ち。


 そんなお兄ちゃんに対して、私は?

 お兄ちゃんが卒業した高校に進学して、高1。学年での成績も上位。

 「お兄ちゃんのように、トップとまではいかないけど、まあつり合いがとれるレベル?」 と、私は自分では納得している。

 でも、自分自身のかわいさには疑問がいっぱい。真面目な性格が手伝って、地味すぎる。そんな事、自分でも分かっているけど、なおせやしない。

 でも、他の男子にもてたい訳じゃないから、かわいさなんて、関係ない。

 こんな自分でも、このままでいい。

 私がそんな事を思いながら、にへにへ顔でお兄ちゃんを見つめていると、お兄ちゃんが私に視線を向けた。


 「まどか、早く食べないと、遅れるぞ」

 「そう言って、私に注意するところも、サイコー」私は心の中で、また少しうっとり。

 「はぁい」


 私はそう言って、朝ごはんを食べるスピードをアップした。

 いつもなら両親がいるのだが、遠方の親戚に不幸があって、今日はいない。それだけに、食べ終わると、食器を洗わなければならない事を考えると、確かに時間が無い。


 ちなみに、今日の朝食、ミルクティーに食パン、ハムエッグを作ったのはお兄ちゃん。

 「何でもできるお兄ちゃんはサイコー」私の心の中で、お兄ちゃんはますます大きくなるばかり。

 片づけくらいは自分がしないと。そんな気持ちで、私は一気に朝食を終わらせた。


 「ごちそうさまぁ」


 両手を合わせて、そう言うと、立ち上がり、自分の食器をキッチンに運んで行く。

 シンクに食器を置くと、もう一度ダイニングに戻り、お兄ちゃんの背後に立った。


 「なんだ?」

 「お下げしてよろしいでしょうか?」


 最後の紅茶を飲みほしたお兄ちゃんに、ちょっと気取ってそう言った。


 「ああ。ありがとう」


 お兄ちゃんがにこりとしながら、そう言った。


 「その笑顔、独り占め。

 たとえ、お兄ちゃんがどこかの女の子と付き合ったりしたとしても、簡単にはお兄ちゃんを渡したりなんかしない。

 だって、私とお兄ちゃんは16年もの付き合い。そんな最近知り合った子なんかとは、積み重ねたものが違いすぎる」


 そんな事を考えながら、お兄ちゃんに笑顔を振りまいて、お兄ちゃんの前に広がる食器を重ねて、キッチンに運び、私は後片付けを終わらせた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ