008:突然の光
「で、諸悪の根源は?」
全員の視線が拓馬に集まる。
「えっ?!俺ッ?!」
「反省のために、一回ブラックアウトさせてやろうか?」
「や、待てって、俺は何にもしてねぇ・・っぐぁ!」
恭介ったら容赦なーい、と完全に傍観者になった透は呟いて、鋭く恭介に睨まれる。
「・・ちょ、マジで・・・死ぬっ!」
頸動脈を強く掴まれた拓馬が苦しげな声を上げる。
「一回くらい死んでも問題ないでしょう。」
「・・・・っぐ・・・」
「・・あのっ・・恭介さんっ!私、大丈夫ですからっ!」
本当に拓馬を絞殺しそうな勢いの恭介に、七海は思わず駆け寄る。もしかしなくてもこれは自分のためにやっている事で、どちらかと言えば拓馬は七海をリラックスさせようとしてくれただけだ。
「・・・?!・・・いいでしょう。彼女に免じて今回は・・・。」
恭介が手を放すと、拓馬は強く咳き込みながら床に崩れ落ちる。
「あ・・あの・・・拓馬さん・・大丈夫ですか・・?」
あまりの事におろおろしながらも、拓馬に駆け寄った七海がぜぇぜぇと呼吸を整える拓馬の背に触れた瞬間、フラッシュのような閃光が辺りを包み、その光の強さと同じだけの力で七海の身体に衝撃が走った。
「・・・っきゃぁっ!!」
手のひらから伝わった衝撃で七海の身体は吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる、と強く目を閉じた。
「・・・っと、危ねぇな、お前。」
「・・・・イズキ・・・?」
向い側にいたはずのイズキがいつの間にか自分の後ろにいて、壁に叩きつけられる直前に七海の身体を受け止めていた。
「イズキ、ナイスキャッチ!」
間近で見るイズキは、自分の知っているイズキよりずっと男っぽくて、抱きとめられた腕の逞しさに身体が熱くなる。そして、悔しいけれどイケメンと認めざるを得ない切れ長の瞳に思わず赤くなる。
「大丈夫か?」
「・・・うん・・あ・・・ありがとう・・・」
「イズキー?ナイスキャッチは褒めてあげるけど、いつまで七海ちゃん抱っこしてるつもり?」
七海ちゃんを抱っこしていいのは僕だけ、と透に指摘されたイズキは、そんなんじゃない、と慌てて七海から離れた。
「七海ちゃん、これでわかったでしょ?」
「・・・何を、ですか?」
七海に歩み寄った透は背の低い七海に目線を合わせるようにしながらそっと七海の両手を握る。
「・・・震えてるね。怖かった?」
「あ・・あの・・・私・・・」
透の言う事はさっぱり分からず、自分が震えていると言う事も透に言われて気付いた七海は、自分の理解する事のできない出来事が起こっているのだと言う事を理解した。
「僕が君と契約した理由。君は、普通じゃないんだよ。」
「普通じゃ・・・ない?」
天然とか、不思議ちゃんとかは良く言われるけど、普通じゃないってあんまりな言い方、と七海は心の中で思う。
「・・・透、この件については私から説明しよう。君・・・七海さん、こちらへ。」
恭介が差し出した手に、掴まるべきなのか七海は一瞬迷い、思わず透に視線を投げる。
「大丈夫だよ、恭介は怖い人じゃないから。安心して行っておいで。」
にっこりと微笑む透に、七海は小さく頷いて恭介の差し出した右手に左手を重ねた。
「!!」
触れた部分がびりびりと痺れるような感覚に驚いて手を放そうとする七海の手を恭介は強く握り、そのまま螺旋階段を登って行く。
「・・・七海、怯えてたな。」
二人の姿が見えなくなると、拓馬がポツリと呟く。
「そりゃあ、そうなんじゃないスか?いきなりあんな事になったらビビるでしょ、普通。」
「七海ちゃん、可愛いなぁ・・・あんな目で見られたらもうキュンキュンしちゃう。」
ぽわん、とした瞳で七海の背中を見送る透を見た拓馬とイズキは呆れたように小さくため息をつく。
「そう言えば、拓馬さん、もう平気なんスか?」
「え・・何が?・・・あ、そう言えば・・・」
恭介に締められた喉。あれだけやられたらしばらくは声も出せないはずなのに。
「・・・なるほどね。これは・・・」
透の瞳の奥に、鋭い光が宿り、恭介と七海が消えていった螺旋階段の上に視線を投げた。
萌え要素を詰め込んでいたら
書きながらにやにやする怪しい人になってきました。
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