007:バイトなの?
「あの・・・遅刻してすみませんでした。もう少し近いと思ってたんですけど・・・」
ぺこり、と七海が頭を下げると、透は少し慌てた様子で謝らなくていいよ、と微笑んだ。
「うんうん、昨日はもっと大学に近かったと僕も思うよ。ほら、とりあえず、大学疲れたでしょ?奥でお茶しよう!」
毎回、透の言葉は突っ込みどころが満載過ぎて戸惑う。バイトをしに来て、お茶しようと言われたのはこれが初めてだ。
おいしいケーキがあるんだ、と透は踊りだしそうなテンションで後ろから七海の両肩を押して店の奥へ連れて行った。
「おう、来たのか。」
「あ、拓馬さん、こんにちは。・・・イズキもいたんだ?・・・って、ごめんっ!わっ、ごめんなさい!」
店の奥で、拓馬に声を掛けられた七海は、やっぱりイケメンだなぁと心の中で思いながら挨拶し、上半身裸のイズキに気付いて慌てて背を向けたが、結果的に七海の後ろから付いて来ていた透の胸にぶつかった。
「七海ちゃーん、僕の胸へようこそ!」
待ってましたとばかりにそのままぎゅっと抱きしめられた七海は許容範囲を超えて起きた出来事に思考回路が寸断されて、そのまま固まった。
「カイトさんっ!またそうやって七海の事いじめてんじゃねーよ!本気で嫌われたらどうする気なんだ?・・・イズキ!お前もさっさと服着ろ!服!」
だって七海ちゃん抱き心地がいいんだもん、と悪びれる事もなく透は言いながらも七海を解放した。
「はい、とにかく、こっちこっち!」
ちなみにこのお店、奥はカフェ仕立てとなっております、と扉を開けた。
「わぁ・・・かわいい!」
小さなカウンター席と、円卓のテーブルが一つの小さなスペース。アンティークショップらしく、アンティークのランプがいくつか置かれている。
「二階には何があるんですか?」
カフェスペースの中央にある螺旋階段。七海は勧められるまま円卓に座りながら透に問いかけた。
「ひみちゅ。」
「・・・え?」
思わず耳を疑う返事に七海は聞き返す。
「だからぁ・・・ひ・み・ちゅ!」
「ひゃっ!」
ちゅっ、と頬に舞い降りたキスに七海は思わず悲鳴を上げる。
「・・・また・・・カイトさんそう言う事する・・・何回契約する気なんだ?」
細かい事は気にしない、と透は上機嫌に七海のそばを離れ、カウンターの奥からケーキを出し、紅茶を淹れて七海のところへ戻ってきた。
「はい。どうぞ。」
「・・・いただきます・・・」
何かがおかしい。やっぱり、何かがおかしい、と七海は思う。
七海の隣に座って、楽しそうににこにこ笑っている透と、ポーカーフェイスのイズキにちょっと不機嫌そうな拓馬。私はここに、お茶をしに来たんだったっけ?
「わぁ・・・おいしい!」
可愛く装飾されたケーキは見た目だけでなく口当たりも最高で、七海は思わず声をあげる。
「美味いに決まってるだろ?俺が作ったんだからな。」
「・・・え、拓馬さんが?」
驚く七海に、拓馬が詰めよる。
「七海・・・今、似合わねーって思っただろ?」
「えっ?!」
「・・・お前、顔に出すぎ。」
呆れた顔のイズキに突っ込まれ、思わず両手で顔を隠すと、その場にいた3人が笑いだした。
「・・・ほんっと、七海はいじり甲斐があるな。」
「ひ・・・ひどいっ!」
みんなでからかうなんて、と思うとなぜか急に悲しくなった七海は、自分でもよくわからない感情の起伏に戸惑う。
「ちょ・・っ!素直で可愛いって言ってんだよ。そんな泣きそうな顔すんなって。」
「でも・・・」
「ちょ、待て待て待て!泣くなって・・・」
慌てた拓馬が座っていた椅子から立ち上がろうとした時、ドアが開いた。
「よってたかって女の子をいじめて泣かせるとか、最悪ですね。・・・お嬢さん、大丈夫ですか?」
「・・・はい・・・」
七海が顔を上げると、こんなに綺麗な顔の男性がいるのか、と思うほど、綺麗に整った顔立ちの男性が立っていた。
「私は高瀬 恭介。一応この馬鹿どもの先輩にあたります。後輩の非礼をお詫びします。」
「私・・・七海です・・・」
泣きながら挨拶するとかちょっと萌えるんだけど、とひそひそ話す透の声が微かに聞こえる。
「・・・そこ、黙って。」
「ハイッ!」
恭介が怖いよーとイズキの後ろに隠れる透を恭介は冷ややかに一瞥した。
こんなバイトがあればぜひやりたい(笑)
っていうか、イケメンに囲まれたい。
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