叔母について・その5
あの日から、もうすぐ四年の月日が経ちます。
母方の祖父母――つまり、叔母の両親にあたる二人――は、それぞれ病気を抱えて通院はしているものの、二人ともとりあえず元気です。
ですが今でもショックではあるらしく……叔母が亡くなった病院へは、二人とも決して足を運ぼうとしません。あそこは娘の命を奪った病院だと、憎まずにはいられないのでしょう。まぁ私は病院なんて何処も大差ないのだし、関係ないだろうと少しシビアなことを思っているのですが。
また祖母は、今でもちょくちょく叔母の話をしては涙ぐむことがあります。叔母が亡くなって一年もしない頃などは、会うたびに泣いていたような気がしますね。
叔母の夫――つまり叔父は、相変わらず仕事を頑張っているようです。再婚の予定などは特にないようですし、だからといって叔母の話もしませんし。仕事が忙しいらしく昔からあまり会う機会がなかったので、この人のことだけはよくわかりません。
叔母の子供たちについては、最初に書いたとおりです。従兄も従妹も、すくすくと育っています……と私が言うのもおかしな話ですが。
ただ、二人ともあまり母親に関する話はしたがらないですね。私もできるだけ、叔母の話は持ちかけないようにしています。
そして、うちの母親は……私が言うのもなんですが、相変わらず危なっかしい人です。
ですがこの人は案外立ち直るのが早かったみたいで、今ではちょくちょく笑いながら叔母との思い出話を聞かせてくれます。最初の頃こそ「お母さんも凛と同じ、一人っ子になっちゃったねぇ」なんて、ちょっと悲しそうな目で言っていたものですが。
ところで、叔母について少しだけ不思議な話を聞きました。
叔母の家庭の親戚にあたる人が、祈祷師か占い師か……とりあえず誰かそういった感じの人に見てもらったことがあるそうで。
そこで祈祷師的な人が、叔母の家庭に対して言ったのだそうです。
「何か、悪いものが憑いている」
と。
それはもしかしたら、正解だったのかもしれません。実は叔母が亡くなった年の初めごろ、叔母の家ではもう一人亡くなった人がいるのです。
そして今回叔母が亡くなり……さすがに偶然ではないと思ったのでしょうね。その親戚の人が、こういった見解をしたのだそうです。
「もしかしたら最初に亡くなった人が『悪いもの』のほとんどを一身にかぶり、叔母がその残りをかぶってしまったのかもしれない」
普段の私なら「ハッ、そんな馬鹿げたオカルト話!」と一蹴してしまうのですが……実際それ以上の連鎖はありませんでしたし、あながち間違いではなかったのかもしれない、と少しだけ考えてしまいます。
さて、叔母に関する話はこれで以上になります。
私自身もたくさんのことを叔母に学びましたし、恩返ししてもしきれないほどたくさんお世話になりました。最後まで私に対する言葉は厳しかったけれど、全部私のためを思って言ってくれていた……と、思いたいです。
もし叔母が生きていたら……今の私を見て、どんな風に思うのでしょう。化粧もしないし着飾りもしない、相変わらず女らしくないこんな私に、もしかしたら呆れるかもしれませんね。だけど、昔よりも常識ぐらいは身についているんじゃないでしょうか。どうかな、叔母ちゃん。
いつかは私も叔母みたいに積極的で、頼れて、綺麗な女の人になれたらいいなぁ……と思います。