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叔母について・その3

 それはちょうど4年前、11月の初めごろ。

 夜中、我が家の電話が鳴る音で目が覚めました。

 寝ぼけていた私は一瞬「こんな夜中に何やねん、はた迷惑な……」と思いましたが、数秒ほどで意識を正常に戻し、冷静に考えてみました。

 こんな夜中に電話がかかってくるということは、よっぽどの何かがあったということです。そんな『よっぽどの何か』に、私は心当たりが一つだけありました。

 それは……できれば一生考えたくなどなかった、とても残酷な事実。

 けたたましく鳴る電話を、すぐに母親がとりました。そして予想通り……電話を切ると、母親が焦ったように父親を起こす音がしました。

 本当ならば一応私も関係者なので、行かなくてはいけなかったのですが……よほど焦っていたのでしょうね。両親は私を起こすことをせず、すぐに車で病院に向かいました。

 今となっては、あの時無理やりにでもついていけばよかったのかな、と少し後悔しています。

 胸騒ぎはもちろんありましたが、その時の私の頭はひどく冷静でした。

 ――これから一体どうなるのか……そんなことは、いずれ分かる。とりあえず今は、暗い考えなどしないことだ。もはやそれぐらいしか、私にはできない。

 不謹慎な考えだったのかもしれませんが、私はそう結論付けると、無理矢理枕に顔を押し付けるようにして眠りにつきました。


 両親が戻ってきたのは明け方、おそらく五時ごろだったと思います。揺り起こされる感覚で、私は目を覚ましました。

 目を開けると、そこにいたのは涙で顔がぐちゃぐちゃになった母親で……私はこれから何を告げられるのか、なんとなく悟ってしまいました。

 母親は濡れた目で私を見つめながら、静かに……悲しみを抑えるような声で私に言いました。

「叔母ちゃんがな、さっき、亡くなってん」

 私は悲しかったのか、何だったのか、よくわからない感情を抱いたまま……それでも口調だけはひどく冷静に、こう答えました。

「そう……」


 それからわたしは三度(みたび)の眠りにつき(なぜこんな時に眠れたのか甚だ疑問ですが)、次に目覚めたのは朝の十時頃でした。

 もそもそと起きてきた私に、喪服に着替えた父親がいやに改まって「凛、話がある」と言いました。私は二度も悲しい事実を告げられるのが嫌だったので、間髪入れずに「知ってる」と答えました。父親は表情を変えず「なら、話は早い」と言って、私に着替えるように急かしました。

 中学の制服に着替えると、私は朝食も食べないまま叔母の家に連れていかれました。


 叔母の亡骸に対面したのは、その時が最初でした。

 私が眠っている間にある程度の準備は済まされたらしく、叔母はかつらをかぶって美しく化粧された状態で横たわっていました。やせ細っていたけれど、その姿はとても綺麗でした。

 姉である母親や、母方の祖母などをはじめとした親族はずっと泣いていたけれど、私はどこかぼうっとしながら、座ることもなくその光景を見下ろしていました。

 それから間もなくいとこたちとも対面しました。二人とも病院で会った時のように、いつもどおりの自然な態度でした。

 従兄はもう高校生ですし、もともと性格もクールな人なので、まぁ納得はいきます。ですが従妹はまだ小学生でしたし、消沈していたとしても仕方がないと思っていたので、少し意外でした。後にそれとなく聞いてみたところ「病院ではさすがに泣いた」と言っていましたが。

 その日はまだお通夜でもなかったので、お葬式に使う写真を選んだり、親戚の子供たちの遊び相手を適当にしたり、母方の祖父やいとこたちとよくわからない話をしたりして1日過ごしました。

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