表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/10

第4回:赤潮

8月14日に本文を書き変えました。1度読んだ方ももう1度お読みになってください。

 赤道付近で発生した赤潮はさらに南に広がり、パプアニューギニアとソロモン諸島に挟まれたソロモン海まで達していた。神聖戦士ニキとアラはソロモン海の上空にいた。ニキは左腕の腕輪で日巫女に呼びかけた。

「赤潮をこれ以上広げないようにするにはどうすればいい?」

「この赤潮はムサボリダコという大きなタコの化け物が吐く赤い墨が原因です。ムサボリダコを見つけて退治すれば、赤潮は消えます」

「ムサボリダコについてもっと詳しいことを教えてくれないか」

「ムサボリダコはその名の通り貪欲で、食べられるものなら何でも欲しがり口に入れてしまいます。口から吐く墨には毒がありますから気を付けてください」

「ありがとう。それで、ムサボリダコはなぜ赤い墨を吐くんだ?」

「それは汚れた海水を大量に飲んで、体内が汚染されたからです」

「そういうことか。赤潮がこのまま南下すれば、珊瑚海に入って、グレート・バリア・リーフに被害が出てしまう。その前に何とかしたい。勇、一刻も早く見つけるぞ」

「おお」と勇が変身した神聖戦士アラが元気のいい返事をした。


 ニキとアラは約1時間ソロモン海を捜索したが、ムサボリダコは見つからない。神聖戦士は海面の上空を飛んでいても、海中の様子を見ることができるが、2人は巨大なタコを発見することができなかった。

「兄貴、体長が20メートルもある大きなタコならすぐ見つかるはずなのに、なんで見つからないんだろう」とアラがニキに問いかけた。

「おかしいな」と言って、ニキは考え込んだ。そして、しばらくして、「タコの中には擬態のできるものがいる。ムサボリダコも何かに化けているのかもしれない」と言った。

「だったら、俺が海に潜って探してみる」と言って、アラは海に飛び込んだ。


 海の中は赤潮の影響で魚は泳いでいなかったが、海底には多くのサンゴの群体が広がっていて、その中には縦の長さがおよそ20メートルにも及ぶ大きな赤いものもあった。


 アラは海面から顔を出して、「兄貴、見つからない」と大声でニキに言った。空中に止まっていたニキは、「もう1度潜ってくれないか。何か気づいたことがあったら、何でも言ってくれ」と大声で言った。

「わかった」と言って、またアラは海に潜った。そして、しばらくしてからまた海面から顔を出して、「ねえ、兄貴、サンゴって動けるのかな」と言った。

「サンゴが動く。そんなはずはない。そのサンゴはどこにある?」

「今俺のいるところから南におよそ100メートルのところ」

「それだ。そのサンゴがムサボリダコだ。とにかくそこへ急ごう」


 ニキとアラは空を飛んで100メートル南へ移動して、空中で止まった。

「サキタマ」とニキが言うと、ニキの右手の中に緑色に輝く玉が現れ、この玉が釣竿に変わった。

「エビでタコを釣る。釣り上ったら、勇、お前がタコを攻撃しろ」

「まかしてくれ」とアラは元気よく答えた。


 ニキはエビの形をした疑似餌のついた釣り針を海中に投じた。数分後、釣り糸が何かに強く引っ張られ始めた。

「かかった」とニキは言って、全身に力をこめて両手で釣り竿を握るとリールが自動的に釣り糸を巻き上げた。すると、海面からムサボリダコの赤い触腕が1本現れ、次いでほかの3本の触腕が現れ、そして、顔が出てきた。タコはニキに向けて口から赤い墨を吐いたが、ニキは巧みにこれをよけた。すぐにアラは両手から火を出して、タコの顔をねらった。

「たこ焼きにしてやる」と言って、アラは炎を浴びせ続けた。熱がっている様子のタコは触腕を伸ばして背後からアラの体に巻きつけてアラを締め始めた。これに気付いたニキは釣竿を捨てて、腰に下げていた剣を抜いてアラに巻き付いていた触腕を斬った。すると、別の触腕がニキを襲ってきたが、これもニキが斬った。

「すまない、兄貴」

「いいんだ。次は電撃をお見舞いしてやれ。あいつが弱ったところを俺がとどめを刺す」

「了解」

アラは両手から電気を出してタコに電流を流した。タコは体全体に電流が伝わって、動きが鈍くなった。

「サキタマ」とニキが言うと、ニキの右手の中に緑色に輝く玉が現れた。

「これでも喰らえ」とニキがタコの口をめがけて玉を投げた。タコは口の中に玉が入ると、海の中に沈んでいった。それを見て、ニキが「クシタマ」と言うと、ニキの右手の中に黄色に輝く玉が現れた。ニキはこの玉を赤潮に投げ入れた。すると、間もなく海面の赤潮がきれいに消えた。

「兄貴、海はきれいになったけど、タコはどうなった?」

「体内を洗浄して食欲を抑制する薬を飲んだから、もう赤い墨を吐くことはない。それに、俺に斬られた腕もまた生えてくる」

「死んだんじゃなかったのか」とアラは驚いた様子で言った。

「命を奪うのは本当にそれしか方法がないときだけだ。せっかくだから、グレート・バリア・リーフを見てから帰ろう」とニキが言うと、

「そうだね」とアラが答えた。


 2人は空を南下して、空中から世界最大のサンゴ礁がつくる美しい景色をながめた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ