Case.1 二人の賢王
スピンオフ一作目。どぞ。
悠久の歴史書 〜二人の賢王の話〜
天上界管理名:ESTERL REV:1
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ある所に人々にエステルと呼ばれる世界があった。その世界には一つの大陸があり、ユーラシアと呼ばれており、その周りは海に囲まれていた。ユーラシアには二つの国が存在し、それぞれルナとアリアといった。その二つの国は名が体を示すとおり、ルナは経済的に衰退しており、不正行為が横行していた。それにくらべアリアは時代の推移に水のごとく適応し、賢王の元、不正もなく平和な経済を謳歌していた。ルナは次第にその状態を憎く思い、異世界より救世主を召喚し、隣国を征服したいと考え出した。その事を出入りの商人より耳にした隣国の国王も自身の身と国を護るために召喚を考え出すのであった。
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今事象は、ルナのまったくの逆恨みであり、アリアを侵略する是非は皆無であると判断する。ついては、査察員を派遣し審査を実施することをここに承認する。結果如何により、改訂・処分とする。
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〜ルナの場合〜
ある日、救世主は召喚された。その日の勇者は疲労を原因に明日まで謁見を待ってもらうことを願い出たが、少々焦っていた王はそれを受け入れず、そのまま謁見と相成った。国王は最初から高圧的に話を始め、召喚者を奴隷のごとく使うがために話を進めた。それしばし、無言で相づちを打っていた召喚者は王が話終えるなりこう話しだした。
「ふむ。ということは貴方は王様ということですか?」
「そうだが。」
「では、私が命令しましょうか。」
「な!?」
「名乗るのが遅れましたが、異世界のエレナ国で天皇やってますアリサと申します。」
「なな!?」
「では、改めて命令しましょうか?」
「そんな異世界の事など知るか!!我に従え。」
「お断りします。」
「衛兵、やつを引っ捕らえて首輪をつけよ!」
衛兵はすぐさま、駆け寄ろうとしたそうだが、金縛りにあったように動きはすでに封じられていた。それに気づかぬのは周りを顧みていない王族のみであった。周りに集まっていた横領や買収にばかりかまけていた者は苦い顔つきをし、事情もしらず、ただ食べるために働いていた侍従達は動けぬ主に動揺しているのであった。ただ、こちらは先の者達と違い動けるようではあった。
「それは無理かと。先に間者に麻痺薬仕込ませましたから。」
「なな!!」
「さて、もう一度おたずねします。私の命令を聞きますか?」
「聞くわけないだろ!!」
「そうですか〜。ひじょうに残念です。では、しょうがないですかね。」
召喚者はしばし、沈黙した後にこう語り出した。
「我裁定者・アリサの名の下に、召喚者・ルナ王は召喚者待遇条項並びに国土運営規約条項違反に伴い、死罪とする。」
「な、何を言い出す?!」
召喚者は王の発言を無視し、更に続ける。
「また、王を除く王家は荷担したものは死罪、荷担していないものは、次期王家とし存続させるものとする。」
ここでまた、絶望を顔に浮かべた妃や一部の王子や王女と不安げな者達が現れた。しかし、召喚者の発言は更に続く。
「なお、悪事に荷担した貴族は公職追放ならびに財産没収とし十年間の無休労働を衣食住を最低限保証した上で命ずる。以上を裁定者権限により裁定を下す。」
もうその後は絶望したものと訳が分からないものだけとなった。しかし、召喚者はまだ続けるようである。ただ、口調が変わった。それは、荘厳な声に・・・。
『管理コード・エステル 運営者へ通話接続。』
どこからとこなく、この世界には存在しないはずの電話の呼び出し音が鳴り響いた。しばらくすると・・・。
『エステル世界・管理責任者・エステルです。ご用件をどうぞ。』
すると、裁定者は話を開始した。
『毎度どうも。管理部のアリサです。上からの査察要請が先日ありまして、査察を実施させていただいてるのですが、ルナの方の処分は先ほどの通りで実施させていただいてよろしいですか?』
『あぁ〜。すみませんねぇ。まだまだ素人なものでお任せします。お手間を取らせて済みません。』
『いえいえ、かまいませんよ。でも、なぜ相談役手配されないんですか?』
『えっ?そんなサービスあるんですか?』
『ご存じありませんでしたか?あとで資料を送っときますね。』
『有り難うございます〜。また、機会あったらよろしくです。』
『いえいえ、では仕事がありますのでのちほど。』
『はい〜。』
その後は、通話切断音が鳴り通話が終わった模様である。
その後の展開は早かった。不正を働いていた者は全て処分され、潔白だった王家が即日即位した。そして、召喚者の国とのい交易を開始し、召喚者の国から宰相を招き入れ経済は回復し隣国並みになったという。その後は隣国とも国交を正常化し、交易を頻繁に行い、同じ間違いは二度と繰り返されなかったそうな。この後の事は、エステルのみが知る事である。
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天上界管理名:ESTERL REV:2
該当地域のルナ国は運営が正常化したため、監督処分を終了する。以後、観察処分へ格下げの上、処分終了とする。
これは、もし召喚者が召喚された人より位が低かった場合という仮定の話。
王様に呼ばれたのが皇帝というあり得なくない話というのが味噌ですよ。