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2041年12月〜吸血鬼〜


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『情報過多です クレイドルによる情報処理処置を実行してください』

『情報過多です クレイドルによる情報処理処置を実行してください』

『情報過多です クレイドルによる情報処理処置を実行してください』


『電源の接続方法が不正です メーカー推奨の給電方法を直ちに実施してください』

『不正なデータ処理を感知しました 修正のため強制終了後に強制アップデートを施行します』error

けたたましい警告音が音響探知を重大に阻害し敵姫(てき)が視えない


飛行型の過敏な対物センサーを全開にして警告文が複数ウィンドウで掲示されたモニターの中で僅かに得られた視界の偏差目視でレーザースナイプを回避する


斥力フィールドは自身の飛行に特化させているため防御に回せる程の推力はすでに尽きている


相手が“ビット型”の多角度からの集団狙撃であれば終わっていた。

首筋の装甲の継ぎ目から角度をつけてCSC(コア・セット・チップ)を狙っているとわかっていたからこそ全力のバレルロール(エンジェリックスカイ)で軸そのものをずらす

不格好ながら攻撃に転じてみせた炎のデカールを纏った機体に

回避構成の特性を持つ『SRX03』BXモデルのツガル『フレデリカ』は武装を展開し受けの体勢をとる


最高速度はあちらが上もとより捕縛か撃墜。

『フレデリカ』は”受け“を選ぶ事で切り結びと同時に相手が逃走する可能性を一つ潰した。


互いに互いの戦闘経験が噛み合っているからこそのエミュレート(よみあい)

CSCの個性がAI同士であればとっくに詰みの状況を『フレデリカ』に僅差で優位に留めている。



眠るな(おきろ)眠るな(おきろ)眠るな(おきろ)


目の前だ(なぜ自分は)目の前で奪われ(取り残された)たんだ!



『FL012bk 天使型アーンヴァルbk』

自身の腹と黒翼のリアウイングAAU7に焔のデカールを左右非対称に纏う『吸血鬼』は

誰にもぶつけられぬ怒りで生き長らえていた。



♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢


「『吸血鬼』武装神姫”狩り“…ですか?」

”シャーシキット“と呼ばれる構成機

設計者は同じ、しかし数段階ブラッシュアップされた機体を持つ女神のシステムはCSCの煌めきを持たずとも感情豊かに話しかけてくる。


あえて不必要とオミットされた機能は一般家庭に広く普及した現状を持って成功だと証明している。


ほぼ形骸化しつつあるMMS管理機構は確保の難しくなった”MMS“の代わりに”MD“を大量確保している

”シャーシキット“の“サファイア”はそんな新規導入組MDの一機だった


「そうよ、電気泥棒、相手の充電口に噛み付いて給電してくんだって」

フレデリカは生真面目な後輩に戯けるように説明する。

「私たちは”何でも“できるもの」

そして自嘲気味に笑う


人型ミニデバイスの聡明期に生まれた”武装神姫“は”後継者“機体が外付け機能として持つ”武装空間“や”セッション“を単独展開できる。


武装神姫には必要と盛り込まれた実際に不必要だった能力が実験とばかりに過度に搭載されていた。

電子空間へ自身をダイブさせ、単独で軍事衛星群を支配下に置いた『アルテミス』の事例を見ても、聡明期ゆえのオーバースペックは物議を醸すレベルまで至っている。


詰め込み過ぎと揶揄される機能は”少し高めのPC“と同等なリーズナブルさを持っていたが普及率が後継者達に比べて劣っている事がその実験がどうであったかを物語っていた。


フレデリカなりの後輩たちへの皮肉である


サファイアの”教育係“としての役目を『フレデリカ』は割り振られていたが戦闘データの整理力では後続機(メジャースケール)の彼女らの方がよっぽど高度であった


動作に揺らぎがない、自爆覚悟の決死を行う。マスターの所有物である神姫には出来ない戦法がいくらでも取れる。


揺らぎがないからこそ『フレデリカ』はサファイアに戦闘面では優っていた。


「電気泥棒、ただの野良神姫よ」

戦闘空間の単独展開が部隊のスリム化と機動力の両立を兼ねているいわゆる”便利屋“


「いつもの事よ」

顧みるマスターを失った野良神姫

フレデリカは事もなく行ってのける。


僅かに残るMMSを狩る事は通常業務だ

自分のような”雇われ“にもとより拒否権はない。


「武装したMDも複数機被害に遭っています」

お前より高性能機がいくつもやられているぞとサファイアはオブラートに忠告する


「『吸血鬼』データ照合はフロントライン社製1st素体の旧型機ですが」

”強い“ですよ

サファイアはフレデリカと同等の脅威であると告げた



♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢



右腕のシャフトが空転しパワーを伝達しきれていない。


戦闘後はおそらく無整備、連戦数は被害MDだけで38機以上。


それでもなお『フレデリカ』の二刀の実体剣(ホーンブレード)を押し切ろうとする気迫を紅い炎は持っていた。


これは”野良(捨てられた)“じゃない”はぐれ(分かれた)“だ”亡霊“だ

生者を取り込み生き長らえ目的に至るまで歩みを止めない幽鬼だ

何よりもこの場所で彷徨っている幽鬼が誰よりも異常なはずの幽鬼が1番

”神姫“らしかった



「10月31日の続きをするの…?」

フレデリカの口からついて出た言葉はツガル本来の幼い口調だった。


「終わっていないだろう!」

「今苦しんでいるかもしれないマスターの側におらずに何が”神姫“だ!」

『フレイムデカール』は初めて言葉を交わす

”お前は悔しくないのか“と



下部に広がる都市ひとつが消えた洞


”循環環境実験都市スフィア8“『ロンド・シティ』


その上空で二姫は邂逅する。

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