スマホがチートすぎて勇者より目立ってしまった件
目を開けたら、森だった。
「……は?」
最後の記憶は、コンビニで肉まんを買おうとして、レジ横の新商品バッテリーを眺めていたところだ。
そして今は、見知らぬ巨大樹木と、ファンタジー感満載の鳥の鳴き声に囲まれている。
「え、これってもしかして……異世界転移ってやつ?」
状況を理解した瞬間、俺はポケットに手を突っ込んだ。
ある。
スマホが。
「おいおいおいおい!異世界でスマホあるとか最高かよ!」
試しに電源を入れた。
──普通に起動した。
そして表示された文字。
『圏外』
「だよな!!!!」
思わず叫ぶ。森の鳥が一斉に飛び立った。
ただし、問題はそこじゃない。
バッテリー残量。
98%。
「なんでそんな普通に残ってんだよ逆に怖いわ!」
とりあえず地図アプリを開く。
「……はい、真っ白」
そりゃそうだ。
しかしその瞬間だった。
ピコン!
通知が鳴った。
『新機能:異世界マップを解放しました』
「は????」
画面が勝手に切り替わる。
そこには、森の地図が表示されていた。
しかも現在地が赤い点でバッチリ表示されている。
「チートすぎるだろスマホ!!!!」
さらに通知。
『周辺危険度:スライム(弱)×3』
「え、スライムいるの?」
言った瞬間だった。
草むらがもぞもぞ動く。
出てきた。
青くて、ぷるぷるしてる。
「うわ、本物だ……」
スマホを見る。
『対処法:叩くと倒せます』
「攻略サイトかよ!!!」
俺は近くの枝を拾って構えた。
「よし……いくぞ!」
バシッ!
スライム「ぷぎゅっ」
消えた。
「え、弱っ」
さらに通知。
『経験値+1』
「RPGか!!!」
そのとき、後ろから声がした。
「今の……スライムを一撃で?」
振り向くと、そこにはいかにも勇者っぽい剣を背負った男が立っていた。
イケメンだ。たぶん本物の勇者だ。
「お前……何者だ?」
「いや俺こそ聞きたいんだけど」
すると勇者が真剣な顔で言った。
「俺はこの世界を救う勇者だ」
「うん知ってた」
「え?」
スマホを見せる。
『勇者:レベル5/現在地:徒歩3分圏内』
「個人情報ダダ漏れじゃねーかこのスマホ!!」
勇者が一歩下がる。
「まさか……伝説の“情報系チート持ち”……?」
「そんな職業聞いたことねぇよ!」
そこにさらに通知。
『クエスト発生:勇者とパーティを組め』
「勝手に決めるな!」
だが勇者はなぜか納得した顔になっていた。
「なるほど……お前が“賢者枠”か」
「違う、ただのスマホ持ち一般人!」
こうして俺は、よくわからないまま勇者パーティに加入することになった。
移動中。
勇者が剣を構えている横で、俺はスマホを操作していた。
「おい、それ何してるんだ?」
「ググってる。“魔王 倒し方”」
「そんなので出るのか?」
「出る」
そして一番上の検索結果を開く。
『魔王は意外と話せば分かるタイプです』
「雑すぎるだろ!!!」
さらに別記事。
『魔王、最近人手不足でアルバイト募集していた』
「平和か!!!!」
勇者が頭を抱える。
「俺の旅の重みとは一体……」
そのとき、森の奥から轟音。
ドゴォォォン!
現れたのは魔王軍の幹部っぽい巨大モンスターだった。
「出たな……!」
勇者が剣を抜く。
俺はスマホを見る。
『勝率:3%』
「低っ!」
次の瞬間、スマホが光った。
『緊急モード:課金機能を解放します』
「やめろぉぉぉぉぉ!!!!」
勝手に画面が切り替わる。
『10,000円で即死スキルを購入しますか?』
「買えるのかよこの世界!!」
勇者が叫ぶ。
「買え!今すぐ!」
「いや財布ないんだけど!!」
するとスマホが無慈悲に表示。
『Google Payに登録済みです』
「現代文明強すぎるだろ!!!!」
ポチッ
俺は押してしまった。
次の瞬間。
ピコン!
『スキル:即死ビーム発動』
スマホから謎の光が出て、モンスターが消えた。
静寂。
「……え、終わった?」
勇者が俺を見る。
「お前……やっぱり賢者だろ」
「違うってば!!!!」
森に風が吹く。
俺は確信した。
この世界で一番やばいのは魔王じゃない。
このスマホだ。
そして通知が最後にこう告げた。
『次の目的地:魔王城(徒歩2時間)』
「徒歩なんだそこは!!!!!」
こうして俺の異世界生活は始まった。
勇者より目立つ形で。
しかもたぶん、スマホの気分次第で世界が終わる。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
「スマホ持って異世界行ったら最強じゃね?」という軽いノリから書き始めたら、気づいたらスマホが完全に最強になりました。
たぶんこの世界、魔王よりスマホの方が危険です。
個人的にお気に入りは「攻略サイトかよ!!」のあたりと、課金で全部解決するところです。
現代人、だいたい課金でなんとかしがち?
もし「この先どうなるんだよ」「魔王どうなるの?」と思っていただけたら、続きも書こうかなと考えてます!




