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100円ショップスキルで追放された俺、ラーメンと風呂で世界最強軍事国家を建国~S級美少女や神様が集まるけど、俺は平和に寝たいだけ~  作者: 月神世一


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第一章 100円ショップの勇者

国王はジャージがお好き

「ズズズッ……ズゾゾゾッ、プハァ」

 静寂に包まれた広大な謁見の間。

 天井まで届く巨大な柱、最高級の石材で作られた床、そして深紅の絨毯。

 その最奥に鎮座する、黄金の玉座。

 本来ならば、威厳ある王が世界の行く末を案じて沈思黙考する場所だ。

 だが、現在そこに座っている俺――佐藤太郎さとう・たろうの姿は、威厳とは程遠いものだった。

 着古したグレーのジャージ(上下セット)。

 足元はゴム製のサンダル(健康イボ付き)。

 そして手には、湯気を立てるカップラーメン(シーフード味)。

「……うめぇ」

 俺は玉座の上であぐらをかきながら、最後の一滴までスープを飲み干した。

 ジャンクな塩分が、疲れた三十路の体に染み渡る。

「陛下。スープが飛び跳ねております。王家の威信に関わりますので、もう少し上品にお召し上がりください」

 玉座の脇に控えていた侍従長が、呆れたような、それでいて諦めきったような声で言った。

「堅いこと言うなよ。飯は豪快に食った方が美味いんだって」

「はぁ……。それで、また『アレ』をお使いになるのですか?」

「おう。食ったら口を拭かないとな」

 俺は空になったカップをサイドテーブル(という名のみかん箱)に置き、右手を軽くかざした。

 意識するのは、脳内にある巨大な店舗棚。

 全品税抜100円。日本の庶民の味方。

 ――ユニークスキル【100円ショップ】、発動。

『ポケットティッシュ(水に流せるタイプ)×1 購入完了』

『魔力(MP)消費:極小』

 ポンッ、という間の抜けた音と共に、虚空からビニールに包まれたティッシュが出現し、俺の手のひらに落ちる。

「うん、これこれ。やっぱ日本の紙は柔らかくていいわ」

 俺は鼻をチーンとかむと、それを魔法で焼却した。

 俺、佐藤太郎。30歳。日本人。

 かつてこの国とは別の王国に召喚され、「ハズレスキルだ」と罵られて荒野に追放された元・一般人だ。

 だが、こっちの連中は分かっていなかった。

 日本の「100均」がどれだけオーパーツかということを。

 俺は荒野で、100円の種(F1種)を蒔いて野菜を育てた。

 100円の工具(ドライバー、ノコギリ)と、ブロック塀用のコンクリートブロックを出して家を建てた。

 100円の調味料(醤油、味噌、マヨネーズ)で、魔獣の肉を極上グルメに変えた。

 そんなことを繰り返していたら、いつの間にか人が集まり、街ができ、軍隊ができ――

「陛下、ご報告がございます」

 突然、重厚な扉が開き、伝令の兵士が駆け込んできた。

「隣国、ガリア帝国より早馬です! 『我が国の騎士団長が、タロウ国のラーメン・二郎系のスープの虜になり、全軍の士気が崩壊しました。これ以上の抗戦は不可能、無条件降伏を申し入れる』とのこと!」

「……は?」

 俺はティッシュを持ったまま固まった。

「またかよ」

「またでございますな」

 侍従長が涼しい顔で頷く。

 俺が作ったこの国――『太郎国』は、今や世界最強の軍事国家と呼ばれているらしい。

 俺自身が開発した『必殺のエクスプロージョン・アロー』を搭載したバリスタ部隊。

 妻のライザが鍛え上げた、現代特殊部隊(SEALs)式の筋肉騎士団。

 妻のサリーが率いる、医学知識を持った魔法衛生兵団。

 それに加えて、この『文化侵略』だ。

 近隣諸国の兵士や貴族たちは、我が国から輸出される豚骨スープ、ふかふかのタオル、そして温水洗浄便座の虜になり、剣を捨てて箸を持つようになった。

「めんどくせぇなぁ……。領土とかいらないんだけど」

 俺はボサボサの頭をかきむしりながら、懐からタバコ(キャスター・ロング)を取り出した。

 これも【100円ショップ】……ではなく、俺が特別に再現させた嗜好品だ。

 紫煙をくゆらせ、窓の外を見る。

 そこには、ファンタジー世界にはあるまじき光景が広がっていた。

 整然と区画整理された道路。

 立ち並ぶ鉄筋コンクリート造の団地とマンション。

 空を飛ぶ魔導飛行船の影。

 そして、街の至るところで輝く『タローソン(コンビニ)』と『スーパー銭湯・極楽の湯』のネオンサイン。

 異世界転生したはずが、気付けばそこは『ネオ・トーキョー』もどきになっていた。

「俺はただ、美味い飯食って、広い風呂に入って、ふかふかの布団で寝たいだけなんだけどなぁ……」

 俺の呟きは、遠くから聞こえる『絶対無敵スパチャアイドル伝説!!』とかいう謎の路上ライブの歌声にかき消された。

 ……あそこ、また人魚のリーザが歌ってるのか? ちゃんと飯食ってるかあいつ。

「とりあえず、降伏文書のサインは後でいい?」

「いけません。先方が『調印式の後は、ぜひ極楽の湯でサウナ外交を』と仰っております」

「……チッ。しゃーない、行くか」

 俺はサンダルをペタペタと鳴らしながら、玉座から立ち上がった。

 最強軍事国家の王の仕事は、今日も平和とサウナを守るために続くのだ。

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