第九章:罪と覚悟、そして決定的な夜
俺の理性の壁は崩壊した。
残されたのは、禁断の愛と、それを抑えつける、か細い社会的倫理だけだった。
その日の夜。
俺はリビングで、アルコールを煽っていた。
パソコンに向かい、必死に仕事に集中しようとするが、昨夜、真美と身体が触れ合った時の熱が、俺の思考を占領して離さない。
俺の体は、真美への渇望で、すでに熱を帯びていた。
深夜、真美が部屋から出てきた。
薄手のキャミソール姿で、その華奢な体が、月の光に浮かび上がっている。
「おじさん。まだ起きてるの?」
真美はそう言って、俺の座るソファのすぐ隣の床に、体育座りで座り込んだ。
「ああ。もうすぐ寝る。真美も早く寝ろ」
俺は、視線をパソコンに固定したまま、声が震えるのを隠そうとした。
真美は、静かに俺の太ももに、そっと手を置いた。
そして、優しく、何度も上下に撫でつけた。
「真美!やめろ!」
俺は、跳ね上がる心臓を抑え、真美の手を掴んだ。
真美は、俺を見上げ、その瞳は、涙ではなく、確信に満ちた炎を宿していた。
「どうして?私、おじさんのが大きくなってるの、知ってるよ」
その一言で、俺のすべての理性の鎖が断ち切られた。
俺の内に潜んでいた男の獣性が、一気に噴き出す。
俺は、真美の手を払い、その体を引き寄せた。
「……お前は、俺を、試しているのか」
俺の声は、低く、欲望に塗れていた。
真美は、逃げなかった。
むしろ、俺の首に腕を巻き付け、囁いた。
「おじさんじゃなきゃ、いやだ。お父さんじゃないって、分かってる。だから、いいんでしょ?」
その瞬間、俺は、叔父としての役割も、社会的な倫理も、すべて捨て去った。
俺は、真美の体を抱き上げ、寝室へと向かった。
(兄さん、許してくれ。俺は、もう、彼女を愛することを止められない)
俺たちの愛は、激しい禁断の熱となって、その夜、完全に一線を越えた。
真美の体は、俺の愛を飢えたように受け入れ、その行為は、罪と快楽が混じり合った、永遠に後戻りできない場所へと、俺たち二人を引きずり込んだのだ。
夜が明けた後、俺と真美は、お互いの顔を、まともに見ることができなかった。
ただ、その沈黙と視線の避け合いこそが、二人が共有した秘密の深さを物語っていた。
俺は、出勤後、仕事が手につかなかった。
俺は、真美の、肉体的な安らぎだけでなく、精神的な支柱を奪ってしまった。
この関係は、いつか、真美を深く傷つけることになる。
(俺は、彼女を本当に愛しているのか?それとも、ただ、血の繋がらない姪という、特殊な状況を利用して、禁断の快楽に溺れているだけなのか?)
真美は、翌日、学校から帰ってくると、真っ直ぐに俺のところに来た。
そして、俺の目を、まっすぐに見つめた。
「おじさん、ごめん。昨日のこと、間違いだなんて、言わないで」
真美の瞳には、一切の迷いがなかった。
彼女は、すべてを理解した上で、この関係を選び、そして、それを守ろうとしていた。
俺は、その真美の覚悟を見て、ようやく、自分の卑怯さに気づいた。
俺は、真美の孤独につけ込み、被害者と加害者という、都合のいい関係に逃げ込もうとしていた。
「真美……、俺は、お前を愛している。叔父としてではない。一人の女性として、愛してしまった」
俺は、初めて、自分の心の底にある、真実の感情を、口にした。
「……うん」
真美は、静かに頷いた。
「だが、この関係は、社会から、そして、何より、兄さんから許されない。俺は、お前の人生を、台無しにしてしまう」
真美は、そっと、俺の胸に手を置いた。
「おじさんの人生が、台無しになってもいいの?」
その言葉は、俺を試していた。俺は、真美を深く愛している。
それは真実だ。ならば、この愛のために、すべてを捨てる覚悟があるのか。
俺は、真美を抱きしめ、答えた。
「ああ。俺は、お前との愛のために、すべてを捨てる覚悟を決めた。だが、その前に、真美、お前は、この先、後悔しないと言えるのか?」
真美は、俺の耳元で、囁いた。
「後悔なんて、しない。だって、おじさんと一緒にいることが、私のすべてなんだから」
俺たちの愛は、禁断の淵に立っている。
だが、その愛は、真美の深い孤独と、俺の、兄への罪悪感、そして、血の繋がらないという特殊な状況が作り出した、純粋な感動に満ちていた。
俺たちは、罪人となった。
しかし、この罪こそが、俺たち二人が、この世界で唯一、互いを求め合う真実だった。




