第八章:禁断の熱
この日以来、二人の関係は、密室の愛の形を帯び始めた。
夜、真美が「怖い夢を見た」と言って、俺の部屋に来ることがあった。
俺は、決して、真美の部屋には行かない。
あくまで、真美が俺を求めてきたという事実を、俺自身の、最後の言い訳として残しておきたかったからだ。
真美は、躊躇なく、俺のベッドに潜り込んできた。
「……一人だと、眠れないんだ」
俺たちは、二人きりで、一つの布団の中にいる。
俺の体は、真美の温もりと、甘い匂いに包まれて、火照っていた。
最初は、ただ隣に寝ているだけだった。
背中合わせで、互いの存在を確かめるだけ。
だが、その状態が、かえって、俺たちの欲望を増幅させた。
ある夜、俺が寝返りを打つと、真美が、俺の背中に、自分の体をぴったりと寄せてきた。
真美の胸の柔らかさが、俺の背中に触れる。
「真美……」
俺は、堪らず、真美の名を呼んだ。
真美は、俺の首筋に、熱い息を吹きかけた。
「おじさん、あったかいね」
その夜、俺は、理性を失った。
俺は、振り返り、真美を抱きしめた。
それは、兄の代わりとしての、慈愛の抱擁ではない。
一人の男が、一人の女性を求める、激しい、禁断の抱擁だった。
真美は、それを拒まなかった。
むしろ、彼女の体は、俺の抱擁に応えるように、積極的に、俺に絡みついてきた。
俺の唇は、真美の額、頬、そして、その柔らかい唇に、触れてしまった。
初めてのキス。
それは、罪の味、蜜の味、そして、激しい、自責の念の味だった。
真美の口から、微かな、しかし、明らかに快感を示す声が漏れたとき、俺は、自分のしていることの罪深さに、打ちのめされた。
(ダメだ。俺は、真美のすべてを、壊してしまう)
俺は、真美の体を強く抱きしめ、その熱を、自分自身の熱で、押し殺そうとした。
「真美……、すまない。俺は……」
真美は、俺の胸に顔を埋め、震える声で言った。
「……全部、分かってる。でも、おじさんが、いないと、私、生きられない」
その言葉は、俺の罪悪感を、一瞬にして、深い感動へと変貌させた。
彼女の切実な愛と、深い孤独が、俺の理性を、完全に沈黙させたのだ。
俺たちは、お互いの孤独を埋めるためだけに、この禁断の関係に、堕ちていくことを選んだ。




