第五章:禁断の影
翌朝、真美は何事もなかったかのように振る舞った。
朝食はいつも通り静かで、会話もなかった。
だが、その沈黙は、これまでの静けさとは違った。
それは、二人だけが共有する秘密、触れてしまった事実が生み出す、張り詰めた沈黙だった。
その日以来、真美は、俺に対して、無防備な隙を見せるようになった。
ソファで眠る俺に、ブランケットをかけてくれる。
俺の部屋着を、丁寧に畳んで置いていく。
そして、時折、俺の目を、ただ、じっと見つめる。
その視線は、純粋な姪の視線ではない。
そこには、一人の女性として、俺を試すような、挑発的な何かが宿っていた。
俺は、常に自己嫌悪に苛まれていた。
真美が求めているのは、亡き父親の温もりだろう。
俺はその代用品でしかない。
それなのに、俺の欲望は、それを純粋な愛情として受け止められず、肉体的な愛情へと昇華させようとしていた。
俺の仕事はデザイン。
いつもは繊細で洗練されたラフを描くのだが、最近は、描く線が乱れ、色彩が激しく、官能的な曲線ばかりを追ってしまう。
それは、真美という存在が、俺の生活と、そして、俺の創造性までをも、禁断の熱で侵食し始めている証拠だった。
ある日、真美が制服のスカートの丈を、わずかに短くして履いていることに気づいた。
「真美、そのスカート、少し短くないか?」
俺は、注意するつもりで言った。
真美は、俺を真っ直ぐに見つめ、微かに微笑んだ。
「おじさん、気づいた?……これ、流行りなんだよ」
その微笑みは、俺の注意を、まるで無効化する魔法のようだった。
俺が彼女に抱いている感情に、彼女自身が気づき、それを利用し始めているのではないか。
そう思うと、俺は自分の浅ましい欲望以上に、真美の心の成熟と、その深さに、戦慄を覚えた。




