最終章:二人で始めるデザイン事務所
卒業証書を手にした真美は、満面の笑みで俺に抱きついた。
「おじさん、ありがとう。私、やっとここまで来れた」
その笑顔を見て、俺は決意していたことを告げた。
「真美、俺、デザイン事務所を立ち上げる。一緒にやらないか?」
俺は、これまで貯めてきた資金で、小さな事務所を借りていた。
ロゴ制作、パンフレット、ウェブデザイン。
これまでの勤め先でそれらを担ってきたが、これを本格的に個人で運営しようと思っていた。
真美は、目を丸くして、それから大きく頷いた。
「やる! 私、おじさんの力になる!」
事務所は、自宅マンションの最寄り駅前のビルの一室。
二人だけの小さな空間。
真美は、受付兼アシスタントとして働いた。
電話対応、顧客との打ち合わせ同席、見積もり作成、SNSでの宣伝。
夜学で培った忍耐力と、昼間のアパレル経験で磨かれた接客スキルが、ここで花開いた。
そして、何より——真美は、美人に成長していた。
長い黒髪、透き通るような白い肌、優しい笑顔。
気立ての良さがにじみ出る物腰。
顧客は、最初は俺のデザイン目当てで来ても、真美と話すうちに、ファンになっていった。
「康之さん、真美さんの対応、素晴らしいですね。またお願いします」
そんな言葉が増え、リピート客がどんどん増えた。
口コミで、新しい顧客もやってくる。
ある日、大きな企業のブランディング案件が決まった。
契約書にサインする時、真美が隣で微笑んでいるのを見て、俺は胸が熱くなった。
事業は、順調に軌道に乗った。
夜、事務所を閉めた後、二人で残務を片付けながら、真美が言った。
「おじさん、私たち、ちゃんとやれてるね」
俺は、真美の手を取って、そっと唇を重ねた。
「ああ、真美のおかげだ」
小さな事務所の明かりの下、俺たちは、これからの未来を、静かに誓い合った。
二人で築いた小さな城が、少しずつ、確実に大きくなっていく——そんな予感とともに。




