遅刻
ぼやけた視界でスマートフォンを探す。
体の感覚で、いつもの起床時間と違うことがわかる。
脳が体に追いつかないままスマホの時間が目に入る。
8:32
(やっちまったなぁ)
彼は高校2年 杉浦 優人
4月になり2回目の遅刻が確定した。
1度目は新学期が始まった日。教室が分からずアウト。職員室経由でクラスに入る。最悪の自己紹介になった。
そして2回目の今日。学力テストの疲労が体に出た。
うつ伏せで寝てたから体が言うことをきかない。
(あーあ、面倒くさい。とりあえず電話して昼前に登校しても良いな。)
うつ伏せによる、手足の痺れが治るまで、この後の行動について考える。
( )
何も思い浮かばない。遅刻した体を起こして身支度を始めるしかない。
学ランに腕を通しながら階段をおりる。キッチンからパンの焼けた匂いだけがする。
食パンを1枚手に取り、そそくさと通学を始めた。
少しだけ寒さを残した空気と朝露で路面が濡れている。自転車のサドルに着いた水滴を袖で拭い、跨る。
いつもと変わらぬ道に欠伸が出たその時、目に飛び込んできたものがある
よく遊んだ公園の端の方で小さいテントと共に
(お悩み解決します)
ダンボールの看板が掲げてあった。
「なんだこれ」
つい横目にそんなことを呟いてしまう。
誰も近づける気がない汚れテントとダンボール看板がバタバタと風に揺れていた。
(家の近くに変な人来てんなー)
そんなことを思いながらペダルを踏みつける。
(大体、悩み相談ってこんなところでするか?)
(俺よりテントの主の方が悩んでそう)
そんなことが頭を駆け巡る。悶々とした気持ちも自転車をこぐ足の疲れで吹き飛んでいく。
校門をくくぐり、駐輪場の端の方に向かっていく。ここがベストポジション。部活に打ち込む生徒、ちゃんと友人達と待ち合わせるヤツらの縄張りを避けた所。鉄筋の柱があって目印にもなる。
俺の定位置に自転車を止めると足元に、すすけたぬいぐるみが落ちている。
(昨日は落ちてなかったけど…。1日でこんな汚れるか?)
白い猫の形をしたナイロン生地。
羊毛が首元から少し飛び出している。目がグリグリとデカいが、土汚れでくすんでいる。生地についているタグが目に入る。
(ありがとう)
手書きだ
背中が引っ張られるように鳥肌が立った。足早に校舎に向かう。
ツイてない、変なものを見た気がする。忘れよう。
処女作です。お手柔らかにお願いします。
ゆっくり更新予定です...




