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二倍くらい長いですごめんなさい
「…ふぅ、やっと一息つけるわ」
何とか壁際まで行くことができたが、これからどうしようか。リディは見当たらなく、かといってまた歩き回るのも迷子になってしまうだろう。
「終わるまでここに居ようかしら……」
(そういえば来る時に見たあの庭、綺麗だったなぁ……)
行ってみたい。行ってみたいが、どこにあるのか分からない……。
(後で出口を出て探そう)
ボケっと考え事をしていると、聞き覚えのある声が響いた。遠いからよく分からないけど、あのサラサラと揺れる黒髪は……
「皆がこの学園に入学したことを祝し、ただいまより入学パーティーを初める。どうか存分に楽しんでほしい」
(カーリック様だ……!)
カーリック様が言葉を言い終わると、あたりは歓声に包まれる。それが静まる頃には、彼の姿は見当たらなくなっていた。
(……そろそろお庭に行こうかな)
リディには悪いが、流石に彼女も一人で帰れると思う。多分。
リアが出口付近(と言ってもほぼ入口の真横に位置するのだが)まで行くと、令嬢達数人が一人の令嬢に絡んでいた。これが俗に言うリンチなのか。
(どうしたんだろ)
バレない程度に近づき、耳を立てる。
「ーーで、ーーーなのよ!?伯爵令嬢の分際で私より高い点数を取るなんてなんてーーーーなの!!?あんたのせいでーーー」
「全く恥知らずよねぇ、貴方。ほら、今すぐーーー様に謝りなさい。」
「地面に這いつくばって謝るんじゃなくて良かったわねぇ」
(酷い現場だこと)
確かにこれは集団リンチだ。誰かが止めに行かなければならない。誰が?そう思いながら一歩ずつ、足を踏み出す。
「ごきげんよう。今の話、私もよく聞きたいわ」
「だっ、誰よ貴方?!見ない顔じゃない。どうせ男爵とかのーー」
なるほど、令嬢は三人組だったか。リーダーのような立ち位置の令嬢がさっき散々言っていたのだろう。
「あぁ、ごめんなさい。私、フレイヤ・ラズリーって言うの。覚えてちょうだいね?」
「ラズリー家ですって……!?」
彼女の顔がサッと青くなる。
「そうそう、さっきのお話私にも教えてくださらない?」
「えっ、あぁいいですわよ。其方にいる彼女が、伯爵家にも関わらずこの侯爵家である私の順位よりも高い順位でしたの。本当に、常識ってものがないですわよね。これだから下級貴族は」
「ふぅん……それの何がいけないのかしら?」
「えっ、だから身の程がですね……」
「それってつまり、あなたの能力が彼女より劣っていたってことでしょう?」
「はぁ!?何を……」
「ふっ、」
「ダメよ笑っちゃ!んぐ……」
取り巻き達が笑っているのを見て、彼女の顔はみるみるうちに赤くなった。かと思えば、すぐさまこちらを睨みつけて
「なによ!!?ラズリー家の引きこもりが偉そうにすんじゃないわよ!!」
バシャリ。
私の制服には彼女が持っていたぶどうジュースが盛大にかかっていた。これ、シミになるやつかしら……?
「……ラズリー家の引きこもりねぇ。貴方今、私に何したかわかってるのかしら?」
「ひっ、な、なによ……」
流石の彼女も青ざめて震えているが、彼女なりのプライドがあるのだろう。喧嘩腰は変わらない。
「私の一言で、あなたの食べている小麦や肉、つけている宝石がどうなるか……知らないわけじゃあないでしょう?」
私の家紋は若干裏社会地味ている。それが無くても、領地からとれる小麦、肉、鉱石はこの国の中でも上に入るところだろう。
「……分かったらさっさと出ていきなさい。」
「はっ、はいぃぃ」
三人組は出ていった。後ろには先程までリンチにあっていたご令嬢が呆然とこちらを見ている。
「大丈夫だった?」
「……ぁ、はっ!だっ、だだだ大丈夫ですっ!!助けてくれて、ぁありがとうございます!」
(元気な子だなぁ……)
「パーティー、戻らなくていいの?私はそろそろ帰るけど」
「ぇ、あ、その……制服……私のせいでごめんなさい。弁償しますね」
「えぇっ!!?だ、大丈夫よ?それに貴方のせいじゃないわ。ほら、パーティーに戻りなさい。美味しそうなご飯、いっぱいあったよ?」
「……へへ、お言葉に甘えておきますね」
この格好じゃ私は今日のパーティーにはもう出られないだろう。元から出るつもりだったからいいのだが。庭園は暗そうだったし、この格好でもきっと大丈夫だろう。
(制服、他にも何着かあって良かったわ……今度洗濯しなくちゃね)
そうこう考えているうちに庭園に着く。やはり光はそこまでなく、薄暗かったが、それが心地よかった。
「これは……バラね。綺麗……あっ、あそこのは何かしら」
フラフラとまわっているとふと、視界の端に人影が見えた。見間違えるはずもない。サラサラとした黒髪に夏のバラの葉のような濃い緑色の瞳。
「……カーリック様?」
どうして、ここにいるのだろうか




