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第8話 惨劇過ぎて、

投稿が遅くなってしまい申し訳ありません...随時更新していくつもりですので、どうかよろしくお願いします!

 暗闇。俺は暗黒の中を歩いていた。そうか、これは夢だ。だってあそこにいるはずのない人がいる。俺が小さい頃に遠くへ行ってしまった家族が。最早会えないかつて共に駆けた仲間たちが。そして、俺が救うことの出来なかった美しい少女が。


(夢、これは夢だ。でも、このまま、どうかこのまま覚めないまま)


 暗闇に佇む彼らはどんどん遠ざかっていく。手を伸ばしても届かない。走っても追いつかない。嫌だ、ダメだ、行かないで、みんな、父さん、母さん、姉貴、フィオ、フィオ


「フィオ!」


 目を開けるとそこは知らない天井だった。いつぞやの不思議な死後の世界では無い。という事は俺はまだ生きているらしい。俺1人だけで。


「ここは...」


 1度気絶した分冷静になることができたのか、思考はスッキリしていた。それは同時に、フィオの死をしっかりと理解してしまうという事でもあった。


「フィオ...どうして...ッ!」


 起き上がろうとして腕に痛みを感じる。その場所を見れば、俺の右腕には痛々しい火傷の跡があった。


「俺だけ生き残って、どうするんだよ...」


 頭は冷えても心の傷は癒えない。これから何をすればいいかも分からない。俺にとってフィオはこの世界で俺が生きる理由でもあった。その理由を失った今、最早自分に生きていく理由等あるのだろうか。いっそこのまま、後を追うべきなのではないだろうか。1人思案していると、ふと部屋の扉が開かれた。


「お、おぉ!起きたかあんちゃん!」

「えーと、誰?」


 部屋に入ってきたのは2mはあろうかという大男。筋骨隆々とした体躯にスキンヘッド。どこかの剣闘士か何かと思うほどだ。


「良かったぜ、お前3日も寝てたんだからよ」

「3日...なぁ、フィオ、あの子は...」

「あの金髪の嬢ちゃんか、可哀想にな。俺達が駆け付けた時にはもう死んでたよ」

「そう、か」


 わかっていた。わかっていた事だ。だが改めて他人の口から突きつけられると忘れていた絶望が再度俺の心を埋め尽くす。


「なんで、なんであの子が殺されないといけないんだ!なんで、何もしてないのに!あんなに!あんなに必死に!」

「お、おい落ち着け!大丈夫、な訳はないよな。悪い」

「あ、こ、こちらこそ...」


 叫んだところで何が変わる訳ではない。それでも叫ばずにはいられなかった。


「なぁ、兄ちゃん」


 ふと、大男が俺に声をかけてくる。


「お前が今何考えてるかは分からん。ただこれだけは伝えとくぞ」

「忘れろとは言えん。だが、自棄にはなるな。復讐なんて考えるな。後を追うなんて以ての外だ」


 わかっている。そんなことは言われずともわかっている。だがそれで納得出来るわけがない。なら俺はどうすればいい?割り切って生きればいいのか?


「そんなこと、そんなことできるか!あんなに理不尽に命を奪われて、受け入れればいいのか!?割り切ればいいのか!?俺はどうすりゃいいんだ!おい、なぁ!?」

「...兄ちゃん」


「あの子は死ぬべきじゃなかった、あんな所で死んでいい人じゃなかった!そうだ、俺のせいだ...俺が屋敷を離れなければこんなことにはならなかった!いっそ俺が殺されてれば...」

「落ち着け!滅多なこと言うもんじゃねぇぞ!頭を冷やせ!」


 男に殴られ床に転がる。そんなことわかっているんだ。頭ではわかっているのに理解はできない。男は尚も諭すように優しく語りかけてくる。


「なぁ、兄ちゃん」

「あの子はどんな子だった?」

「どんな、子...」

「お前が死ぬことを望むような女の子だったか?お前を恨むような女の子だったか?いや違うね。俺達だってあの子の事は知ってるんだ。お前よりも長い間見てきた。だから断言する」

「あの子はそんなこと望まない。寧ろお前が生きる事を誰よりも望むんじゃないか?」


 そうだ。フィオは、優しい子だった、決して誰かの死を望むような子じゃない。なら、俺がやるべき事は1つ。残された俺の、新たな目標が今決まった。


「その調子だと、頭は冷えたみたいだな。良かったよ」

「ありがとうございます。あと、色々すみません、その、怒鳴ったりして」

「なに、気にすんな」


 男に礼をいい、まだ覚束無い足で立ち上がる。目的は決まっている。向かうべき場所も。


「あぁそうだ、これ、お前を拾った時に落ちてたもんと、あの子が持ってたもんだ。お前が持っときな」

「ありがとう、」


 それは金貨。これから始まるはずだった冒険の資金だ。俺はそれを受け取り、男のの家を出た。目的は当然


「もしもし、やってますか」

「おぉ、よく来たな。その腕は...大丈夫なのか?」


 そう、あの武器屋である。何故ならば買い物をしないといけないから。


「あのナイフ、まだあります?」

「あぁ、今更売れるもんでも無し、まだあるよ」

「じゃあ、それください」

「おう」


 店主からナイフを受け取り軽くその場で振るう。うん、やはりしっくり来る。


「何があったかは知ってる。街中噂になってたからな」

「そうですか...」

「だからなんだって訳じゃないが、これは餞別だ。取っておけ」


 そう言って渡されたのは腕に装着するタイプの防具。プロテクターと言うべきか。それが両手用。


「防具だ。腕用だがな。それならそのナイフの機動力を生かしたまま防御が可能だ。」

「これ、おいくらなんです?あんまり手持ちは残ってないんですが」

「餞別って言ったろ。金なんていらねぇよ」

「...ありがとうございます」


 腕当てを両手に付ける。ナイフと一緒に買った専用の鞘に入れてズボンにかける。ここで、ふと自分の格好を見ると、スーツのズボンはいいにしても、上は所々が焦げたシャツ1枚だけ。流石にこれは悪目立ちするし、何より俺自身いい気はしない。店内を見てみると、防具の棚に薄出の長袖のシャツと思わしき衣類が数枚。


「あ、あと、」


 俺は予算の許す限り上下の衣類を購入した。


「ありがとうございました。色々と」

「おう、気休めだが、頑張れよ」


 そして店を出てすぐ、そういえばと思いそのまま引き返す。


「あ、あの、そういえば」

「ん?」

「冒険者ってどうすればなれるんです?」

できるだけ投稿頻度を落とさないようにしていきたい。頑張ります!

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