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第12話 決戦!狼王

またとても遅くなってしまった...申し訳ないです...

「ベイン!援護頼む!俺がこの化け物の気を引く!その隙にあんたらはギルドに戻って助けを呼んできてくれ!」

「狼王...2つ名持ちだと...!?」

「2つ名って!?」

「特別な魔物の事だ!奴の名は狼王!5年前から確認されていた、異常に巨大なローンウルフだ!」

「あれがローンウルフ!?前見た奴の倍どころじゃないぞ!」

「ハルカまずい!襲ってくるぞ!」


 狼王は既に俺達に狙いを定め今まさに飛びかからんとしていた。俺は調査チームを守る為彼らの前に立ち、ベインに援護を任せる。


「ベイン構えてろ!俺が引きつける、援護頼む!」

「おう任せろ!」

「!?まさか君たち戦うつもりか!?」

「そうだな。戦うつもりだ」

「無理だ!2つ名持ちは普通の魔物では無い!時にはギルドで専属の討伐隊が組まれる事すらある!君達だけでは殺されるぞ!」


 メガロが捲し立てる。なるほど2つ名と呼ばれる程だ。特別な魔物なのだろう。とはいえ、このままみんなで逃げても仲良く食い殺されるだけだろう。


「急げ、さっさと逃げてくれ。このままじゃ全員死ぬ」

「...」


 メガロは深刻な顔で黙り込み一瞬悩んだ後、すぐさま決断を下した。


「...すまない。君達に感謝する」

「あぁ、ちゃんと生きて帰ってくれよ」

「話まとまったか!?逃げるなら急いでくれよ!」

「全員撤退だ!急げ!」


 メガロの号令で調査チーム全員が走り出す。それに合わせるかのように狼王が動く。凄まじい速度で俺達を捉えるべく駆けだしたその巨体に俺は必死で食らいつく。


「お前の相手は俺だデカブツ!」

「偉大なる風神よ、眼前の敵を撃ち貫け!」

「空 撃!!」

「アォォォォォォォォォォォォォォン!!」


『!?』


 全力の咆哮。狼王の注意を引くため走り回る俺と後方で弓を構えるベイン。それに対し彼がとった行動はただ吠えるだけ。しかしそれで十分だった。思わず足を止めてしまう程の声量。俺達は大きな隙を晒す事になる。


「しまっ...!」

「ハルカやばい避けろ!」


 足を止めた愚か者に振るわれる鉤爪。まともに喰らえばその瞬間俺は真っ二つになるだろう。


「おおぉぉぁ!」

「偉大なる風神よ眼前の敵を撃ち貫け!空撃!」


 何とか身を捻ってギリギリで避ける。ベインが間髪入れずに空撃で援護してくれるが慌てていたこともあってか急所を狙えずさほどダメージを与えているようには見えない。


「参ったねこりゃどーも...」

「ベイン、その技って何発くらい撃てる?」

「ん?まだ全然撃てるぞ」

「ありがたいね。あそうだ。あと、助け来ると思うか?」

「助けは来てくれるだろ。それまでオレらが生きてられるかはわからんけど!」

「だよなぁ。...よし、ベイン、どうにか隙作るからあいつの急所撃ち抜いてくれ」

「は?おいちょっと!?ハルカ!?」


 ベインにそれだけ伝えるとナイフを握りしめ狼王目指して走る。


「役割変更だ!俺は囮!本命がお前!任せた!」

「はぁ!?あぁもう!当たるなよ!」


 この化け物相手にナイフで斬りかかるのは無謀だ。攻撃が掠っただけで死にかねない。だから俺は一定の距離を保ちながら狼王がどんな挙動をしてもいいようにその一挙手一投足に全神経をつぎ込む。


「ガルルルルル...」

「どうした化け物!お前の相手は俺だぜ!」


 俺の役目は囮。狼王がベインを狙わないように全力で気を引かなければならない。が、無論逃げ回っているだけではいられない。逃げるだけではそのうちに狼王が俺を無視してベインを狙いかねない。今彼は俺達を、初めてみるであろう人間を警戒している。そこが勝機だ。


「偉大なる風神よ。眼前の敵を撃ち貫け!!」


「空 撃!」

「ガルォォォォォ!」

「こっちも喰らえぇ!」


 ベインの空撃が放たれたタイミングで突進、狼王を斬りつける。どちらとも共に有効打になり得ないが、それでいい。こちらに有効打が無いと思わせる。そうすれば多少なりとも油断と隙が出来るだろう。その隙を俺の相棒は確実に撃ち抜いてくれる。


(しかし、わかってはいたが全然刃が通らないなぁ!)


「まだ、まだァ!」

「空撃!空撃!空撃ォ!」


 ベインの空撃が何度も狼王を掠める。しかし当然、その程度では傷にもならない。狼王は意に介さない。俺はギリギリで敵との間合いを保ちつつ何とかしてベインの射線に被らぬよう立ち回る。


「さぁこっちだ化け物、付いてこい!」


 距離をとりつつ、あえて狼王に背を向けて走る。そうすればこちらに注意を向けられるはず。とにかくこちらは手詰まりだと狼王に思わせる。いや実際に現状は手詰まりなのだが。


(うぉぉぉ死ぬ!死ぬぅ!掠ったら間違いなく死ぬ!)


 掠めるだけで体を引き裂きそうな死の狂爪。俺は余裕を取り繕いながら必死に逃げ回る。背中を嫌な汗で濡らしながらベインに繋げる為に立ち回る。


「偉大なる風神よ、眼前の敵を撃ち貫け」

(まだだ...まだ、まだ)


 ベインは空撃を構えている。俺はそれを横目で確認し、このタイミングで狼王に向かって突っ走る。現在の位置関係はベインと狼王を挟んでその中心に俺がいる。これから俺は狼王をなんとかしてベインの射線に引きずり出す。


「こい化け物!お前の相手は俺だ!さぁ、ほら、来いよ!」

(こい、こいこいこい...)


 心の中で祈りながら狼王を挑発しわざとらしく逃げてみせる。これに乗ってくれればベインの空撃を急所に撃ち込める。


「グルルルル...」

「ガァ!」


 狼王にも徐々に苛立ちを見せ始める。向こうからすれば足元をネズミがちょろちょろしているようなものだろう。自分の立場で想像したら不愉快極まりないが、こちらも必死だ。精々付き合ってもらおう。


「がァァァアァ!」

「よっしゃ来いやぁ!」


 狼王が苛立ちを隠さなくなりついに俺目掛けて一目散に襲いかかってきた。つまり、今あいつの目には俺しか見えていないはずだ。



(かかった!頼むぜベイン!)

「空 撃ォォォ!!」


 狼王の爪は俺を捉えることなくからぶる。このタイミングでベインが空撃を放った。完璧なタイミングで、狼王の急所、首を撃ち抜く。決まった。ハズだった。


「なっ!?」

「おいおいまじか...」

「アォォォォォォォン!」


 なんと、狼王は放たれた空撃を、身を捩って回避。さらにあろう事か、先程の爪での一撃は攻撃ではなく、踏み込みだった。奴は俺を無視してベイン目掛け走り出す。読まれていた。あろう事かこの怪物はこちらの策を全て読んだ上で逆にこちらを罠に嵌めたのだ。


「やばいベイン逃げろぉ!」

「クソ、偉大なる風神よ眼前の敵を撃ち貫け空撃!」

「グルルルォァァ!!」


「あ」

「ぐ、ぁぁぁぁぁ!!?」


 狼王の牙がベインを捉える。彼の足は狼王によって噛み砕かれていた。そのまま奴はベインを吐き出した。受け身も取れず俺の相棒は地面に叩きつけられた。


「あ、あぁ...」

「ベイン!ベイィィン!」


 ベインは動かない。胸が上下しているので生きてはいるようだが間違いなく意識を失っている。狼王は俺を嘲笑うかのようにその鉤爪をベインに振り下ろそうとしていた。


「クソ、クソぉ!」


 本当ならばあの怪物はもっと簡単に俺達を食い殺せたはずだ。それを理解した上で俺達を泳がせていた。最初から俺たちみたいな新人が勝てる相手ではなかったんだ。でも、それでも、仲間を失うわけにはいかない。ベインは、アイツだけは何としても守ってみせる。


「待て、こっちを見ろバケモンがァ!」

「うぉぉぉ!!」


 今度は俺が狼王に向けて一目散に走る。ベインをやらせはしない。必死に走るが、だが、最早その距離は遠すぎた。


(間に合え!間に合え!間に合え!!)

 走る。走る。間に合わない。畜生、畜生、畜生!

 それでも走る。間に合わないとしても、それでも俺は、もう仲間を失いたくはない。俺は必死に手を伸ばす。


「間に合えぇぇぇ!!」


 瞬間、俺は跳んだ。


「!?」

「グルォ!?」


 狼王も、俺も困惑していた。必死に走ったが、それでもたしかに俺と狼王との距離は数mあったはずだ。しかし今俺はベインと狼王の間に挟まるようにして立っている。


(何が起こったんだ?瞬間移動?いや、ちゃんと移動している時の景色は覚えてる。これは...)


「グルゥゥ、ガァァァ!」

「ッッ!」


 振り下ろされる鉤爪を回避しようとして、またしても俺は跳躍して回避する。何が起こったかは相変わらずさっぱりだが、恐らくこれは魔法というやつだろう。ベインを視線を送るとまだ生きているようだ。その事に安堵し、俺はナイフを構え再度狼王に向き直る。


「何がなにやらさっぱり分からんが、」

「一先ず、これでお前と戦えそうだな!バケモノ!

次回決着!

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