第11話 長期任務
今回は展開が早足です。申し訳ない。
「ハルカ!そっちいったぞ!」
「任せろ」
「ガァァァ!! ギャン!?」
疾走する狼の攻撃を躱して無防備の首にナイフを突き立てる。狼は悲鳴を上げ絶命し、俺はナイフを抜き取り正面を見やる。目の前には、まだ無数の狼がいるが、しかしいきなり仲間が倒されたのをみて警戒しているようにも見える。今日の俺達が受けた依頼は危険度星3の魔物「グンタイウルフ」10頭の討伐。といっても見た目や大きさは元の世界の狼とさほど変わらない。
「残り9頭。ベイン、援護頼めるか?」
「任せろ相棒!」
「よし、行くぞ」
ベインに援護を任せて群れに突っ込む。無策で突撃すれば狼の群れに食い散らかされるだろう。当然、俺はそこまで間抜けではない。俺の後ろにはベインがいて、彼には「切り札」がある。
「偉大なる風神よ、眼前の敵を撃ち貫け」
「空撃!」
そう、魔法だ。彼の扱う魔法「空撃」の能力は矢の形にに圧縮した空気の塊を飛ばすという物で、高い貫通力と速度を誇る。今回の討伐任務ではその力を十分に発揮してもらっている。
「ガオ!?」
「ギャァ!?」
「命中!今だハルカ!」
「助かる! オラァ!」
ベインの空撃が2頭を撃ち抜き、それに怯んだ別の1頭をナイフで貫く。グンタイウルフは数による攻撃こそ驚異とされているが、1頭1頭はさほど危険でもないらしい。
「もう1発!偉大なる風神よ、眼前の敵を撃ち貫け」
「空撃!!」
「よし、これで、トドメだ!」
その勢いのまま残りの狼を討伐し依頼を完遂する。今回の討伐も危なげなく達成することができた。
「ヒュー!おつかれ〜!」
「お疲れ様、今回もどうにかなったな。助かったよベイン」
「どういたしまして!ハルカこそ。敵の注意を引き付けてくれるから援護に集中できるよ」
「俺の武器はナイフだからな。それに援護を全部任せてるんだし、これくらいはしないとな」
「またまた謙遜しちゃって〜」
ベインと談笑していると輸送部隊が到着し、そのまま俺達はギルドまで戻る。ベインと組んで早2週間、大したトラブルも無く俺達は依頼をこなし順調に経験を積んでいた。ギルドに到着し、報酬を受け取る為に受付へ向かう。
「近衛悠、ベイン・オスカー依頼完遂。帰還しました」
「はい、お疲れ様でした!こちら報酬になります」
「どもー!」
「すみません、帰還してすぐで申し訳ないのですが、お2人に仕事の依頼が来ています」
『俺達に?』
報酬を受け取った俺達に受付嬢が声をかけてきた。なんでも俺達宛に仕事の依頼があるらしく、2階へと来て欲しいとの事だった。
「オレ達宛の依頼だってさ!ご指名だぜハルカ!あっという間に有名人になっちまったな!」
「そんなに名前売ってるつもりはないんだけどな」
言われるがまま2階へ向かい、部屋に入る。そこには、あの日セミナーを担当していた職員が立っていた。
「よく来てくださいました。コノエ・ハルカ君、ベイン・オスカー君。いきなりで悪いですが、君達に仕事を依頼したい」
「いいぜいいぜ!オレ達に任せときな!」
「自分達で大丈夫なんですか?言っちゃなんですが、まだ新人ですよ?」
「この仕事は、新人でありながら目まぐるしい活躍を見せるお2人に是非依頼したいものなのです」
「なるほど?」
「お2人に依頼したい内容は、王都周辺、ナロ平原の調査、その護衛です」
「ベイン、準備出来たか?」
「あぁ!大丈夫だ!」
3日後、俺達は数日分の食料、武具の手入れ用具、その他道具を持ってギルドに赴いた。ちなみにナロ平原とは王都周辺一帯の事であり、これまで俺達が仕事で出向いていたのもここらしい。
「よく来てくれました。コノエ・ハルカ君、ベイン・オスカー君」
「なんで毎度フルネーム?」
「早速ですが、護衛依頼の詳細を説明させていただきます」
「あら?スルーなのね」
「ハイハイ、ベイン。お口チャックしとこうか」
「今回の依頼は、ギルドの調査チームが平原の生態系調査を行う際、危険な魔物からチームを護っていただきます」
なんでも、ココ最近周辺で目撃される魔物の数が例年と比べ極端に少なくなっているらしい。魔物が少ない事はいい事のように思えるが、少なすぎるという事は何らかの異変が発生している可能性があるらしく、万が一の事態に備え調査をしていくらしい。
「魔物の被害が予測される場合は討伐していただいて構いません。しかし、無闇矢鱈の乱獲、環境破壊は処罰の対象となります。また、長期に渡っての活動が予想されます。休息には各所に用意された簡易キャンプをお使い下さい」
「了解!」
「わかりました」
「では、お願いいたします」
「任せとけ!」
ギルドを出て調査チームと合流する。人数は5人。研究者的な面子を想像していたのだが、フィールドワークメインらしくそれなりにガタイはいい。というより、殆ど俺より背が高い。
「君達がギルドから派遣された冒険者か。このチームのリーダーを務めるメガロだ。よろしく頼むよ」
「こちらこそ。俺は近衛悠、後ろのが相棒のベイン・オスカー」
「君たちの話は聞いているよ。新人なのに既に多くの依頼を危なげなく解決している。期待のルーキーだってね」
「そう!オレ達が期待のルーキー!ハルカとベインだ!覚えて帰ってくれよ!」
「悪い、こいつの言ってる事はスルーしてくれ」
「あ、あぁ...了解だ」
調子に乗り出したベインを軽く小突いて仕事開始。調査チームに付き添って平原を歩き回る。魔物が少ないと聞いていたが、始まってすぐに1匹の魔物に遭遇した。
「グンタイウルフ?でも、1匹しかいないな。ベイン、近くに群れいないか?」
「ん?あぁ、あれはローンウルフだよ」
「ローンウルフ?」
「群れから逸れた、或いは追い出されたグンタイウルフのことだ。仲間がいない為気が立って凶暴になっているが、やはり1頭である為、長生きはできないと言われているね」
メガロが説明してくれる。なるほど、孤独狼ということらしい。とはいえ気が立っているなら危険だろう。という事でベインの魔法で対処する。1頭だからか弱っていたようで、さほど苦労せずに倒すことが出来た。
そのまま数日が経過した、夜は用意されていた簡易キャンプで泊まる。どうも魔物に見つかりにくい僻地や、魔物避けの魔術を施されていた用で、安全に夜を過ごすことが出来た。しかし出会った魔物は初日のローンウルフが最初で最後。嘘のように驚くほど魔物と遭遇しない。
「むぅ...やはり魔物が少なすぎる...」
「普段は違うのか?」
「あぁ。普通ならグンタイウルフやメガフライ、他にも草食系の魔物がいるはずなんだが...」
「隊長!こっちに!」
隊員が俺達を呼ぶ。そこには、無数のグンタイウルフの死骸が転がっていた。
「これは...」
「まじかよ」
「おいおいおい..!」
3人纏めて絶句する。その死骸は異常だった。その全てに体躯以上の爪や牙に寄る傷がつけられていた。冒険者の武器ではこんな傷はつけられない。こんな魔法があるなら別だが、考えられる可能性は1つだけだ。
これは魔物の仕業だ。
「ハルカ君、と言ったかね」
「なんだ?」
「君達はファーストランクと言ったね?」
メガロが緊張した面持ちで俺達に問いかける。それはそうだろう。これをやった魔物は恐らくまだこの周辺にいる。この死骸はまだ新しい。そして少なくともこいつは冒険者成り立ての2人にどうにか出来る相手では無い。
「1度ギルドに戻るべきだろう」
「あぁ、そうしよう。俺達にどうこう出来る問題じゃない」
そう行って帰還の準備を進める俺達の耳に、声が届いた。
「ウォォォォォォォォン!!」
戦慄。その咆哮は俺達の足を竦ませた。本能に直接響くような轟音。ダメだ。今すぐここから逃げ出さなければ。ここにいたら死ぬ。まずい。ダメだ。今すぐ逃げないと。
「ルォォォォォォン!!」
しかし間に合わなかった。本当に、俺は自分の判断の遅さを恨む。咆哮の主は、その怪物は無情にも俺達の前に現した。それは非常に巨大な狼だった。何せ、俺達は奴の顔を見あげているのだ。恐らく全高だけで5mはくだらない。夜の闇を思わせる体毛、俺の身長に匹敵する爪牙。紛れもない化け物だ。
「なんだこいつは...!」
「おいおいおい...ハルカ、これは、ヤバいんじゃないか...!?」
俺達は知らなかった事だが、ギルドでは「2つ名」持ちと言われる魔物がいる。そいつらは普通とは違う特別な魔物。魔法を扱える者。突然変異を起こした者。そして、有り得ない程長い時を生きた者。
「クソっ!全員逃げるぞ!急げ!」
ローンウルフは1頭で行動する。故に長く生きられない。だがもし、何らかの理由で長く生きることが出来たなら?餌は自分で食い放題。群れに合わせず、自分だけでやりたいようにやれる。それはつまり、自由を得るということだ。それは長い時を生きたローンウルフ。枷から解き放たれ、自由を手にした漆黒の巨狼。推定危険度星5つ。2つ名「狼王」その冷たい視線は、確かに俺達を捉えていた。
次回、VS狼王! ここに持っていく為に駆け足になってしまった...




