第10話 冒険者生活1日目
ハルカとベイン、無事に冒険者になったあとのお話です。
「冒険者の仕事は主にギルド、民間人等からの依頼を受け、魔物討伐、素材採集、護衛任務、迷宮探索等を行う事にあります」
「特に主な仕事は魔物討伐になります。こちらは、ギルドの輸送部隊が現地まで送迎した後、依頼達成後は回収部隊が魔物の死体を回収、万が一失敗した場合も、連絡さえあれば回収部隊が回収します」
「依頼達成は再度輸送部隊の送迎で帰還、その後ギルドの受付にて報酬の支払いとなります。また、この際魔石含む魔物の素材をギルドに申請すれば、それもその場で受取になります」
「魔物には危険度が設定されており、星の数で危険度が分かります。無論星の数が多い程危険度が高まります。冒険者にも冒険者ランクというものが設定されており、ランク以上の討伐依頼は、安全の為受領出来ないようになっています。それから〜...」
もう何度も同じ事を繰り返して来たのであろうギルド職員の定型文地味た説明を聞きながら俺達がいるのはギルドの2階。先日、紆余曲折ありながらも無事?に冒険者登録証を受け取り、晴れて冒険者となった俺とベイン。今日は新米冒険者を集めての説明会があるらしい。と言っても新入社員に対するセミナーのようなもので、冒険者の仕事の説明、禁足事項、登録取り消しに抵触する事項etc.....うたた寝しだしたベインを起こしながら説明を聞く。
「Zzz‥むにゃ?」
「起きろ起きろ、今多分1番重要な部分説明されてんぞ」
「えー、次に禁止事項ですが、1年間の理由のない活動停止。討伐した魔物の素材の密売、無許可での魔物飼育。これらの行為は判明次第その場で登録証失効、場合によっては現行犯逮捕すら有り得ます」
「以上です。何か質問は?」
セミナーを聞き終え1階に降りる。多くの新人冒険者はそのまま依頼を受けるようで受付に殺到している。一方俺達はと言うと、まだ寝ぼけ眼のベインを椅子に座らせ、俺は発行された冒険者登録証を眺めていた。俺は免許証のような物をイメージしていたのだが、実際は違い、腕に装着するバンドのような物だった。また、記録魔術とやらを施されているらしく、これをギルドの受付に見せると、その場でこれまでの活動内容、活動履歴の確認が出来るらしい。ちなみに記録魔術の詳細も聞いたが、俺は微塵も理解できなかった。
「見てくれてるかな、フィオ。俺、冒険者になったよ」
1人空を仰いで独りごつ。これで目標の1つを達成した。とはいえ、あくまでこれはスタートラインでしかない。これから俺は、フィオの見れなかった景色を見に行くのだ。冒険者として、彼女の使用人として。
「Zzz‥ᐝもうたべられないょぅ..」
「!?まだ寝てんのお前!?」
とはいえ、一先ずはこの寝坊助を起こす所から始まりそうだ。
「ベイン!悪い1匹取り逃した!」
「任せろ相棒!ちゃんと見えてるよ!」
翌日、俺達は依頼を受け魔物討伐に来ていた。今の俺達の冒険者ランクはファースト。まぁお察しの通りセカンド、サードとランクアップしていく訳だが、その為には経験や実績が必要らしいので地道に行くことにする。
「ハルカ!上から来てる!」
「おう!」
今回俺達が討伐に来たのは「メガフライ」という名の魔物だ。見た目はトンボそのもの。とはいえそれが1mを優に超えるサイズで、かつ数匹の群れで襲いかかって来るので初見ではそれなりのインパクトはある。この魔物達は危険度星1。図体は大きいがその分鈍く、堅い殻もなく、毒も持たず、それでいて数だけは多く、定期的に大量発生しては作物や家畜に被害を与える為依頼そのものは尽きない。新米冒険者にとっては討伐入門と言えるような魔物らしい。この日俺達が受けた依頼はメガフライ15頭の討伐。飛びかかるメガフライの胴体や羽をナイフで切り裂き、仕留め損ねた個体はベインが弓で討ち取る。即席のコンビネーションながら息は合っていて、瞬く間に15頭を討伐した。
「おつかれー!ハルカ!いい感じだったな!」
「ふぅ、意外と何とかなるもんだな」
「しかし、すごいなハルカは!ほとんど1人で倒しちまったじゃないか!」
「ベインの援護のおかげだ、本当に助かったよ」
実際、俺が多くを討伐することができたのはベインの援護があったからだ。彼の弓の腕は見事という他なく、俺の行動を阻害する事なく正確無比な射撃で的確に俺の手の届かないメガフライを撃ち抜いてくれた。
「いやー、それほどでもあるなぁ〜。ま、これも実力ってやつ?」
調子のいいことを言っている彼を適当にハイハイと聞き流しながらギルドの輸送部隊を待つ。到着までは15分程度かかるらしいのでその間は新たな魔物が来ないか周囲を警戒しつつ、1人脳内で反省会を行う。
(思ったよりも動けたな...冒険者としてやって行けるか不安だったけど、一先ずはよし。だな)
「なーなーハルカ!ハルカが使ってる武器見せてくれよ!俺の弓も見せるから!」
「元気だなおまえ...」
ひと仕事終えたばかりというのに元気なベインに呆れながらも、渋々武器を渡す。
「おぉー!いいナイフだなぁ!まー何もわかんないけど!」
「適当だなお前...」
「ん?なぁハルカ。これってオーダーメイドってやつか?武器屋で見た事ないんだけど」
「そうだな。特注品らしいぜ。作ったはいいが値段が高すぎたみたいでな。金はあったから売ってもらったんだ」
「なるほどねぇ...」
「?何かあるのか?」
不意に、ナイフをまじまじと見つめるベイン。いつものおちゃらけた態度が鳴りを潜め、真剣な表情でナイフを凝視する。
「なぁ、ハルカ」
「どうした?」
「このナイフ、なんの素材でできてるんだ?」
「素材?確か」
ナイフの素材等知る訳がない。と思いつつそういえば店主の老人は何やら言っていたような気がする。必死に頭を捻り何とか記憶をたぐる。
「えーと、確か、あー、ゼノ?鉱石とかなんとか」
「ゼノ!?ゼノ鉱石!?」
「おぉ!?どしたどした」
「ゼノ鉱石ってのはすごい貴重な物なんだ」
途端にベインの目の色が変わり、俺を問い詰める。
「そ、そんなにか?」
「そんなにだ!」
「あ、はい」
「それはそうとハルカ?」
「な、何かねベイン君」
「その武器についてもっと教えてもらおうかぁ〜!」
「わかった!わかったから落ち着けてー!?」
その後、ギルドの回収部隊が来るまで、ひたすら武器について質問攻めを食らう俺なのであった。




