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クローバーをお前に  作者: 和知つばき
リベンジは熱いうちに打て
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14

「チカは捕獲器具を持って、リンネが制圧したら直ぐに使用して!」


「あ、わっ分かった!」


 駄目だ!集中しろ!

 人狼を捕まえて強化剤を手に入れられれば、確実な作用が分かるのだから私の仮定は後回しにして……今は一体ずつ処理していかないと!


 リンネはモモと交代し後ろに下がる。モモが人狼のヘイトを買うように、小刀を胸へ突き刺していく。何度か人狼が攻撃に転ずるが、いつものように防御は躱して避ける。

 一切小刀で受け止めることはしない。人狼とモモの体格差は一.五倍なのだから、受け身にまわれば押し負ける。


 すると突然ガタガタ、と床が震え出した。正確に言うと屋根の上で戦っているのだが、その屋根全体が震えているのだ!


 な、何これ……!足裏に何かボコッとしたものが!


 横を見るとツキコが手を床にかざしている。ボコと盛り上がる瓦の下から、緑色の蔦が見えてきた。その蔦は(うね)りながら、人狼の足下へ円状に広がっていく。


 ツキコの魔術は『地面から薔薇や茨の蔦を出す、身体から茨の鞭を生成する』である。

 つまり地面から屋根の高さまで蔦を伸ばすと、魔術量を大きく消耗してしまうはず。それが次は円状に広がるなど、魔術量も物体操作の集中力も殊更に必要となる。


「ハァハァ、ハァハァ」


 やっぱりだ。ツキコのような物理的な魔術師は“作るモノ”の大きさによって魔術量を測ることができる。私もここ数回でツキコの全力が分かってきた。だから今の様子だと、ここで全力を出すようという事も。


「モモ、地面の茨が出たら円から離れて!」


 ググ…

 グゴゴゴゴゴ! 


「っ!」


 ツキコはモモの返事も待たずに茨を出現させた!下から円状に飛び出た茨は、鳥籠のように人狼を囲んでいく。太い棘が人狼に向いている。少し動けば刺さってしまうほどの狭さだ。


「グアァ!」


 その茨の籠を壊そうと爪で切り裂こうとするも、壊したそばから新しい茨が作られていく。何度壊そうとも再生する籠はイタチごっこだ。


「ハァッハァ!リンネっ制圧して!」


 人狼の目線は鳥籠の外にいるモモへ向いている。モモによって、人狼の視界から逃れたリンネは人狼の背後にいる。動きが制限された今、後ろは完全にガラ空きだ!


「よっしゃおらぁ!!」


「グアァァ!」


 ツキコの操作で人狼の背後にある蔦に空間を開けると、リンネは制圧にかかった!人狼の胸にある毛をむんずと掴み、腰に手を回し軽く膝を曲げると裏投をしたのだ!


「すごい怪力……!」


 体術なんて習ったこともないだろう人狼が、受け身も取れずに頭から落ちる。骨を打つ音が響いた。

 粗い技の掛け方だったが、頭を打たせることに成功したおかげでリンネはそのままま寝技に持ち込む。だが人狼もタダではやられないというのか、ギリリとリンネの肌に爪を食い込ませた。鋭い爪は腕を刺している。


 血、血が!早く、早く捕獲しないと!


 彼女の腕から血が流れてくる。私はすぐさま捕獲器具を人狼に填め、リンネを引き摺り出した。人狼はカチカチという金属音を体に纏わせ、拘束されていく。


「……いってーな!このクソ野郎!」


「医療キット!医療キット!」


 あああ、だめだパニックだ!血が出てるなんて想定してたはずなのに、実際に流れる血を見ると頭が働かない!どうしよう、どうしよう!


「えっと、まずは……えーと!」


「チカちゃん落ち着いて、ゆっくり深呼吸して!」


 モモに肩を揺さぶられると、少し落ち着いてきた。

 簡易応急処置も私の仕事だ。まずは私が冷静でいなきゃ!


 私は装備品の簡易医療キットを取り出して水、アルコール、タオル、ガーゼ、包帯を取り出した。


「ごめんね、ちょっと痛いからね」


 士官学校でもこの工程は習った。特に私は非戦闘員だからと幾度も……。工程を思い出しながら処置をしていくと、血が段々止まってきた。

 浅く入っていただけか……よかった。


「……手際いいのな」


 ガーゼで傷を保護し、大袈裟なほど包帯で押さえていく。


「士官学校じゃ止血方法知らないと〜卒業もできないからね〜」


「は?“シケツ”?てなんだよ」


 リンネは傷口が痒いのか、包帯の上からボリボリ掻いている。

 ごめんね、私が大量に巻いたばかりに……て、え?


「うっそまじ〜?止血。止めるに血、だよ」


「血を止める、てことか?」


「……ちょっとこれキョウジ隊長どうやって育てたの」


 前々からあまり物を知らない子なのかもしれない、と思っていたけれどここまでとは……ツキコが箱入り娘の代表格だと思っていたけれど、これはダークホースかも。


「お前があたしを馬鹿にしていることは分かった!いい度胸だな!喧嘩買ってやるよ!」


「どっちかって言うと、私が喧嘩売るのはキョウジ隊長の方でしょ!」


 ああ、また始まった。何度このやり取りをすれば二人は仲良しになるんだ。


「二人とも今は任務中ですよ。落ち着いて……でも、それはそれとしてキョウジ隊長にはちゃんと言い聞かせねばなりませんね。もう箱入り娘は流行らないですし」


 頭を抱えながら首を振るツキコに、言い争うモモとリンネ……

 そうだ、これが私たちだ。初めての人狼捕獲に喜ぶ事もなくマイペースに行動をする。

 そして私はため息をつくのだ。


「はぁ」



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