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クローバーをお前に  作者: 和知つばき
リベンジは熱いうちに打て
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投稿時と内容変更はありませんが、このエピソードは加筆しております。

 速い……!避けた後のフックも無駄が無い。

 キョウジ隊長は人狼に攻撃する暇も与えず、顎を狙って拳を打ち続けていく。


 もしかして、脳震盪を狙っている?


 膨張してより硬くなった筋肉への打撃は打ち損と考え、神経系への攻撃をしているんだ。強化剤がどこまで人狼の身体を変えるのかわからない以上、何が有効か実践で試す……この的確な判断と実行が隊長である所以なのだろう。


 武器であるナックルグローブは壬生重工の特製品。攻撃が当たる寸前に、相手の身体に衝撃波を与える。衝撃波によって弛緩した筋肉は衝撃吸収力が低下、拳が当たると通常の打撃が強打へ変わるのだ。ちなみに壬生重工の特製品は科学と武器の掛け合わせが特徴であり、黒坂重工の特製品は耐久性や鋭利さのある刃物が特徴である。


 キョウジ隊長は、親指を潰されている人狼が近づくと再度足の指にハンドガンを打つ。自らに寄って来る数を減らすのは戦闘の基本だ。数の優位は戦力の優位となるのだから。


 ガタ!


 バランスを崩した人狼が、屋根の瓦から滑り落ちてゆく。「グギ」と階下から酷い聞こえた。地面に落ちた人狼を確認すると、腕の力で這い上がってこようとしているではないか。


 気持ち悪い……

 受け身を取れなかった足は、グチャグチャに折れ曲がっている。それなのに全く痛みを感じないのか、雄叫びも上げずに私を見ているのだ。

 あれは食べ物を見る目つきだ。


 これが強化剤の作用か。人狼にある一握りの人間性も無くし、怪我による痛みも無くす。

 ただあるのは食欲。涎を垂らした空腹の(バケモノ)は視認できる人間を追い求めるようだ。

 地面に落ちた人狼は、壁に爪を立てて這い上がってこようとする。


「……チカ!」


 キョウジ隊長の放った顎への攻撃が、もう一方の人狼を瓦の上に転げさせると素早く制圧にかかる。仰向けに転ばせた人狼の肩と腰を踏み、体重をかけた!


 捕獲器具の出番だ!


「はい!」


 まだ動かせる口や足が無造作に動く。


 だがここまで制圧してしまえばこちらのものだ。私は両手に持った捕獲器具を人狼の頭に被せ、噛まれないように慎重に口枷を当てた。


「チカ、よくやった」


 金属音がカチカチと音をさせ、瞬く間に顔全体に広がってゆく。ぎらつく牙、私を見て来る瞳も全て金属の仮面に覆われる。段々と音は降下して、バタついていた腕や足は静かになってゆく……ついに全身が金属で包まれた。

 息をするための穴だけが空いた金属の拘束具は、完全に人狼を行動不能にさせる。


「人狼……一体捕獲です!」


 初めての捕獲だ……


 私は拘束具によって動けなくなった人狼を見て、静かに高揚した。化物が、人狼が……無力になっている


 だが油断をする時間もなく、次の捕獲器具を取り出した。

 階下に見える人狼はまだ上がってこない。使い物にならなくなった足に力が入らず、腕のみで上がろうとしているからだ。


「キョウジ隊長、捕獲器具の予備ってありませんよね……?」


「無いな……応援を呼んだから、それまでは持ち堪えるしかないぞ」


 まだ護送車は来ない、後どれほどの人狼が来るのかもわからない……


「その捕獲器具は、リンネ達が戦っている人狼用に取っておけ。“あの人狼”は俺がどうにかする」


 キョウジ隊長は人狼を見下ろしながら言うと、そのまま地面に降りていく。


「はい!了解です」


 隊長の背中が見えなくなると、私はリンネ達へ向き直った。すると重々しい打撃音が耳をビリビリと震わせる。


 リンネが防御に回っている!器用にナックルグローブやブーツで拳を止めているが、私から見ても後手に回っているのが分かった。


 ゴッ!ゴッ!ゴッ!


「モモっ!早く撃てよ!」


「ごめんねっ!命中率悪くて!」


 キョウジ隊長のように、足の親指へ射撃をするが中々当たらない。減っていく弾数と、足元に転がる薬莢が苦戦していることを表していた。

 そもそも強化剤を使った人狼に、あれほど圧倒したキョウジ隊長がおかしいのだ。……やはり勝機を見出すは筋肉。


「っぶねえなぁ!……おっさんは一体倒したってのによぉ!」


 顔に向かってくる斬撃を避けたリンネが愚痴を言う。

 その避け方は初任務時よりもキレがある。躱し方も大振りではない。なんだかモモの避け方に少し似ている気が……鍛錬でお互いの戦法を学びあったのだろう。


 だが鍛錬の成果が出ているのは、なにもリンネだけではない。


「私が隙をつくります!モモ、あなたは標的の撹乱、それに釣られたらリンネは標的の視界から外れて!」


「……りょ〜かい!」


「なんだよ、何やる気だ」


 昨日はジン君に「積極性がない」と言われたツキコが指示を出したのだ。

 その指示を疑いつつも、人狼の視界へモモが映るように動いていくリンネ。するとモモは弾倉を交換し、人狼の顔目掛けて撃った!


 バンッ!


 真正面から当たる弾丸が人狼の目に直撃すると、打たれた衝撃で後頭部がぐら、と揺れる。


「ウグ!‥…グァ……」

 

 ……やっぱり。

 爪や目などの、人間でもダメージの負いやすい箇所は人狼にとっても弱点らしい。

 思えば強化剤は筋肉の膨張と精神に及ぼす作用はあれど、通常時でも弱点になり得る箇所は強化しない……。


 ここで、私は疑問が生まれた。

 ──もしかして『昼間にも活動できる、これは人狼の“脳”で何かが作用しているのでは?』

筋肉の膨張も、人間で言うところのホルモンを増幅するような……だとしたら説明もつく。


 “強化剤”これは脳を騙してホルモンを誘発、同時に痛みの感覚を鈍らせる。それにより昼間にも行動可能になり、足が潰れても目が潰れても動く“化物(バケモノ)”となる、のかもしれない。


 だがこんなもの……人狼が作るのか?こんな姿になってまで、食糧である人間を狙わせる?それともやはり、人狼はこの選択肢しかもう残っていないほど、追い詰められているのだろうか。


 ──そうでなければ強化剤は、人狼も作用を分からずに使っているのかもしれない

 別の何かが、人狼に強化剤を……

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