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第5章 電車と侍とアイデンティティー

この章は最初予定にありませんでした。後書きにある記事を呼んでしまったから生まれた章です。


日本ってとてもよい国だ?orだった?・・・どちらかは分かりません。でも、財布を落としてもほとんどが戻ってくる珍しい国だと思うし、その文化というか日本人のアイデンティティーがどこにあるのか、ちょっと考えてみたいと思ったからです。皆さんもいっしょに考えて見ませんか。

第5章 電車と侍とアイデンティティー



通子はたまにスマホから面白い記事を見つけて由美子に話しかけてくることがある。由美子はスマホを持っていないので、もちろんその手の記事にはうとい。でもそれらの記事は由美子の興味・関心を大きくくすぐることも多い。それでスマホも悪くないのかなと思うこともある。ただ、それにべったりになってしまっている通子はちょっと心配だが。

「ねえねえ由美子、これってひどくな~い?」

日曜の午前中、襲ってくる眠気に翻弄されながら、たま~に空のてっぺんを飛んでいく黒い点とそこから白く伸びるコントレールを眺めて、あれは787(セブンエイトセブン)かな350(スリーフィフティ)かななんてぼんやり考えていたら、通子が顔前を自分の顔でふさいできた。スマホいじってたんじゃね?通子風に言えば。

「ねえ、由美子、電車の中でつり革につかまっていた女子高校生が倒れたのに誰も知らんぷりだったんだって!気付いた会社員の人が助けて座らせようとしたら、優先席に座っていたカップルはガン無視だったり、席を空けて欲しいと頼んだらおじさんに迷惑そうな顔をされたり、あげくの果ては駅員さんに医務室に行って欲しいと頼んだら『持ち場を離れるわけにはいかない』って、いったい何なのよ!!(※記事紹介後書きにて)」

スマホを見せながら怒りまくる通子。

「・・・。私も通子といっしょできっと助けに入ると思う。みんなもそうであって欲しいと思うのにそうじゃなくて、逆に周りはなんか敵ばっかりみたいな感じで、怒りがこみ上げてくるのかな。」

「お、由美子らしい分析。冷静ね。でも、怒るの普通でしょ。」

「うん。そうは思う。」

「『は』って何よ?」

「でも、みんなが自分がこうあって欲しいと願っているのとは違うからといって怒るのは・・・。駅員も持ち場を離れたらもっと大きな事故が起きるかも知れないし。感情で判断するのならルールはいらない。」

「あのね、由美子!あなたも『正論』主義者!?これって、でもおかしいでしょ!おかしくない!?」

「うん、おかしい。なんかうまく言えないけど、『正論自体がおかしい』のかも?」

「???由美子、ときどき変なこと言い出すけど、つまり私に賛成ってことだよね。」

「そう。賛成は間違いない。でも、ふと『日本人のアイデンティティー』ってことを思い出したの。」

「また、ムズいことを・・・。」

「実は夕べBSでね、『七人の侍』っていう映画をやっていたの。父がめずらしく観ているから私も観たんだけど、そこで『日本人のアイデンティティー』というようなことを感じたの。白黒の古い映画だったんだけど、黒澤明っていう世界的な監督の作品ですばらしかった。普通の映画2本分くらいの長さがあったのだけど、あっという間だった。(で、夜更かしして眠たい。)」

「ふ~ん。由美子がそこまで入り込める映画に私がついていけるかどうか分からないけど、今晩オンデマンドで観てみる。うん。したら、明日村上ちゃんも交えて久しぶりに『あれ』やらない?」

「うん。いいね。村上先生ならこの変な違和感というか、気持ち悪さ、なんとかしてくれるかもね。」

ということで、結局いつものように村上もしっかりと巻き込まれることになった。




月曜日の放課後、教務室に通子と由美子が押しかけている。

「おいおい、今日は月曜日でいつもなら会議の日だぞ。たまたま、普通なら出張の入る日じゃない月曜日に、校長先生が出張でいらっしゃらないから『残念ながら』、会議ができない。ラッキーって、空いた時間にたまった事務仕事をしようかと思っていたのに。」

「事務仕事と教え子とどっちが大切なんですか?」

遠くで事務の小林さんが封筒に書類を入れながらクスッと笑う。この三人の関係をよく知っているからなおさらおかしいのだろう。(※前作の~悪魔に魂を売った人々編~参照)

「おい。もうまったく。」

小林さんが由美子と通子にこっそりウインクしながら声をかけてくる。

「村上先生、相談室、空いてますよ。」

「こりゃどうも。」

というわけで、村上が二人に連れ去れてしまった。


「なるほど。そうだな。電車の話はちょっとここらでは想像し難い内容だな。でも、不思議な気もしない。」

「?」

「俺も実はあれっと思ったことがなかったわけじゃない。なんというか歯がゆさを感じる出来事がいくつかあった。。」

「先生、なになに?」

「通子、近い!ちょっと近すぎる。」

由美子は目のやり場に困っている村上に気付いて、乗り出す通子の襟首をつかんで引きずり戻す。

「で、先生、何があった・・・というか、何にそれをお感じになられたんですか?」

「俺もこう見えて困っている人を見るとほおっておけないタイプなようでね。考えるよりも手が先に出てしまう悪い癖があるみたいなんだけど。呪いだな。」

「先生、私も困ってますぅ。由美子が引っ張るからぁ。」

「いや、それは自業自得だろ。もうやめるか、ふざけるんなら。」

「あ、村上ちゃんが怒った。怒った顔も可愛いけど、もうやめる。真面目に聞く。」

「よし。(くそっ!もう、疲れてしようがない・・・はぁ)」

「先生、続けてください。」

「先月かなぁ、別の会があって定時に学校を出たんだけど、その途中の道、田んぼの真ん中の交差点で赤信号で止まったんだ。で、信号が赤から青に変わって進み始めたんだけど、その中に停止線で動かない軽トラがいたんだよね。みんなは避けて進んでいくんだけど、これって動かないんじゃ無くて明らかに動けないんだよね。」

「で、村上ちゃんは止まってヘルプに入った・・・。」

「まあ、後から来る車がぶつかったら大変だし。軽トラを押すために車を停めてトランクを開け、ハザードランプをつけて道路脇に駐まったんだ。そして軽トラを押して寄せようとしたんだけど、ギヤが入ったままで動かないんだ。ドライバーによればニュートラルにしたいんだけどオートマなのでロックがかかっちゃってシフトが動かせない。ドライバーはロックが解除できなくて右往左往。そこで、俺がキーを抜いてシフトノブの脇にある枠に差し込んで解除し、ドライバーにハンドル操作を任せて押した。軽トラはなんとか動きはじめ、安全なところまで押すことが出来たんだ。そのうちにそのドライバーの仲間がやってきて二人で話し始めたから、自分の車も邪魔になってるし・・・。」

「その雰囲気じゃ、もしかして、・・・お礼なし?」

「ああ、ドライバーは駆けつけてきた仲間と話すのに夢中だったし。」

「村上ちゃん、お人好しすぎる!バカ!」

「おい、バカとはなんだよ。」

「そうだよね。通子の気持ち、少し分かる。」

「でも当然のことをしただけし、名乗るほどのことでもないだろう?」

「それがなの!」

「まあいい。次の話に移る。免許の書き換えのため、お休みをとって新しく開局した免許センター行った帰り道だった。スーパー手前の交差点で信号待ちをしていて、さあ発進という時だった。」

通子がまた身を乗り出す。由美子がその襟首を押さえる。

「前を行く車が次々と何かを避けていくんだよね。直前の車がハンドルを切って何かを避けたとき、初めて状況が見えた。横断歩道に転がる自転車と倒れているじいさんがいた。俺は前の車と同じようにそこを避けて、もう一台止まっている車のちょっと先に自分の車を停めた。」

「交通事故!」

「ああ。じいさんが額からかなり出血をしていた。近寄って声をかけて自分の名前が言えるのを確かめて歩道にひっぱりあげた。後続の車がそのまま突っ込まないとは限らんからね。」

「その先生の後ろに停まっていた車の人がはねた?」

「うん。由美子の言うとおりだ。俺が信号待ちしている間に俺の左側の道から左折した車が、俺の右側から来た自転車のお年寄りをはねたんだ。」

「それなら、ぜったいドライバーは自転車に気付く状況ですよね?正面ですもの。気付かないわけないのになんで?」

「まあ、はねた方もかなり年配の女性だったから。おろおろしていた。ともかく救急処置が命を左右するから、まず止血だと思い、自分の車からガーゼキットを持ってきた。そしてはねた方からおじいさんの額をしっかりと押さえてもらった。近くで見ていた買い物客に救急車をお願いするとすでに連絡したという。助かったよ。」

「しかし、ガーゼなんかよく持っていましたね。」

「いやガーゼだけじゃないよ。ゴム手袋やイスラエルバンテージ(圧迫包帯)、ターニケット(止血帯)、保温用のアルミブランケット、人工呼吸用マウスピースも常時積んでいる。」

「さすが軍事オタク村上ちゃん。ラブです。村上ちゃんといれば絶対に助けてもらえそう。」

「いや、軍事オタクどうかは知らんが、車という凶器を扱うものとして当然だと思うんだけど。」

「で、結局また、それっきりだったんでしょ。」

「通子、お礼ってこと?」

「通子の言うとおりだけど、別になんかそれか?」

「もう村上ちゃん、ぶん殴ってやりたい!」

「なんで人助けしてぶん殴られなきゃならないんだよ・・・。」

「通子は殴りませんよ。」

「お礼はどうでもいいけど、そのおじいちゃん大丈夫だったかは気になる。あん時、救急車が来るまで脈を測っておけば良かったと思うし、手足に骨折とかはないか調べたりしておけばよかったと思う。」

「お人好し!お人好しのバカ!もう嫌い!」

「まあ、認められたいとか、お礼を言われたいと全く思わないと言ったらそれはウソになるかも。でも、二人に話してすっきりしたからそれで十分以上だよ。」

「でもめでたし、めでたし・・・ではないですよね。本題はこれからでしょ。」

「ああ、問題はこの二点、電車で倒れた女子高校生と同じような案件だと思うんだ。この時、何台も車が通りながら停まった車はなかった。きっと俺が関わらなければ、誰かがやっていたんだろうけど。でもちょっと不安になっているんだ。」

「地方というか、いなかって本来親切なはずですものね。」

「いや、それとこれとは違う。俺が思うに、元々いなかに住んでいた人々は元来親切とはかけ離れた生き方が主流だったはずだ。ずるくてケチで自分本位で目先のことしか見ていない。でも濃い集団の中で生き残るには利己的であれ、他人の世話を焼くのは納得できる。」

「先生、それっていなかを差別してませんか?」

「もちろんそんなつもりはない。仏教とか、武士道とか何らかの文化教養が入っていない状態を言っている。野放しというか、野生というか。もちろん、中には生まれつき親切な人もいただろう。でも、こういった道徳的な思考は文化や教養が入ってこない状況で、当たり前のこととして成り立つものではないと思うんだ。だからそれらを意図的に行っているのが無意識的なものも含めて教育ってやつなんだと思うけど。」

「つまり、電車の中の出来事は、今まで日本の中で地道に作り上げてきた『親切という文化』が薄まってきた?とでも言うことですか。」

「自分なりの思いだけどね。そういう文化を『道徳』っていうんだろうけど、実際、道徳って今までタブー視されてきたからね。学校教育は人格の育成と言いながら、生き方というよりは知識とか技術に偏ってきた・・・から。まあ戦前は確かに道徳は為政者の都合のいい道具となり、戦争を肯定してしまう土壌を作ってしまったから仕方ないとは思うんだけどね。しかし、悪いところはもちろん、良いと思えるところも含め全否定されてしまった。前にも言ったが、アメリカは宗教が道徳の役割をになっている。日本は戦後、道徳も含めて宗教も否定されてきた(信教の自由は保障はされているんだ)けどね。タブー視といった方がいいのかな。一種のブームと言ったら言い過ぎかもしれないけど。(思考停止に陥った・・・。)」

「う~んよく分からない。宗教と道徳って同じ?学校って算数や国語を教えるところでしょ?人の道とか『えっらそうに』教える?」

「でも村上先生はちゃんと人の道も、授業ではないけど、教えてくれてる気がします。」

「まあ、確かに。村上ちゃんはよく脱線するし、だいたいその中でよね。」

「でも、その国で大切にしている価値観を教えるって大切なことじゃないですか?前にも言いましたが、イスラム国やアフガニスタンのように女の子が勉強してはいけないというのではなく、日本では女の子も一生懸命勉強することの大切さを教えてくれるというような・・・。」

「由美子、道徳って価値観を教えること?」

「おそらくそうだと思う。」

「まあ、天皇を神様だと思えという価値観は違うと思うけどね。」

「私、『七人の侍』っていう映画を観たんです。テレビでですけど。私、あの中に私の中に育てられてきた価値観があったように思ってとても感動して観たんです。」

「ほう?」

「私もアマプラで観た。ちょっと高かったけど、パパも大好きな作品でいっしょに観るかって。でも、難しいし、長いし、疲れたけど最後まで観たよ。」

「おう、通子も観たのか。すごいな。」

「それ、どういう意味ですか。」

「(やばっ!通子も最近、由美子の影響で考え方も大人になってきてる・・)いや、あの作品ってすごく長いだろ。習い事で忙しい通子にそんな時間があったのかと。」

「先生、見え見えです。どうせ、私がそんな作品を見るわけ無いと思っていたんでしょ。言い訳はずるい!」

「(そりゃそうだ。正々堂々・・)いや、今までの通子だったらそんな作品を見なかっただろうけど、大人になったなと思った・・・こともその『すごいな』にはある。」

「はじめからそう言えば良いのに。私も少しは大人なったからそんなことでは動揺しないけど、ウソでごまかそうとするなんて許せない。」

「すまん。・・・で、君たちが感じた『価値観』ってなんだ?」

「通子、私が先に言うね。あの作品にはなんか『日本人の原型』が描かれていたんじゃないかって。」

「『日本人の原型』?」

「あの作品にはいろいろな人物が登場するんですけど、7人のお侍さん、農民、娘。まあ、野武士は作品作りのために敵役と必要だから別として。最後に『今回も負け戦だった。勝ったのは農民。』と志村喬が演じた島田勘兵衛が言うんですけど、そんな風に辛いことがあっても粘り強く生活をつむいでいくものが一番強いんだっていうのが、作品のテーマだと思うんです。それも日本人を語る上で外せない価値観なんですけれども、それぞれ個性豊かな七人の侍たち一人一人にも日本人の持っている価値観が表れているんじゃなかいかって。」

「うん、私も感じた。なんというのか、その一番偉い人?島田っていうんだっけ?あの人の何というか・・・武士道?っていうのかな、なんか昔懐かしい日本人って感じがするの。控えめなくせにすごく物知りで、強くて、で困っている人をほおっておけなくて。」

「うん、通子と同じ。もう一人、宮口清二さん演じる久蔵さんにもそれを強く感じるの。無口で群れないんだけど、修行に命をかける超凄腕のお侍さんなのね。この人も本当はとても優しいの。」

「そう、なんか今の回りの雰囲気とは違うけど、これが日本人って感じる。特に外国の人から見たらそうなんじゃないかな。」

「で、三船敏郎さん演じる菊千代を別とすれば、どのお侍さんも教養があり、穏やかでそれでいて強く、優しい!」

「菊千代は?」

「うん、彼はお侍のふりをしているけど、戦乱の中のみなしごで農民出身なの。お侍にあこがれてマネをしようとするけど、空回りばっかり。そして、とっても乱暴ものなんだけど、でも、村の子どもたちには人気があって、弱い者に対してはすっごく優しいの。」

「由美子が言う『日本人の原型』ってお侍さんってこと?」

「うん、たぶんそうなんだと思う。」

「ほう。なるほど。」

「おそらく武士の時代にわずか7パーセントの人口で世の中のを支配するのに、強権的なやりかたばっかりでは破綻してたはず。江戸時代だけでも270年続いているんでしょ。」

「ほう、由美子、詳しいね。まだ、その時代まで学習していない話だけど。」

「兄の教科書で。私が思うに、やはりお侍さんってみんなの尊敬を集めていたんじゃないかって。それで、フランスのように民衆の反乱が起きなかったじゃないかって。若干の打ち壊しとかはあったようですけど。」

「面白い意見だね。」

「私もそう思う。お侍さん、つまり武士っていばってたんじゃないの?力で押さえつけたイメージだけど。」

「私が思う理由は2つあるの。一つは身近な話で、ひいおばあちゃんのおばあちゃんが小さい頃お侍さんを見たことがあるんだって。そのお侍さん、外でトイレをしていたらしいの。」

「立ちションね。」

「まあ、はっきり言えば。でも、それがね、ひいおばあちゃんのおばあちゃんはこう言ってたらしいの。『お侍さん、外でションベンしてござる』って。」

「?」

「つまり、ね。今の有名な女優さんとか生理現象を満たすイメージとかないでしょ。当時のお侍さんのイメージも同じだったんだと思うの。つまり、かなり美化され、尊敬される存在だったんじゃないかって。自分を律し、質素で教養もある。マリーアントワネットのように『パンが無ければお菓子を食べれば』というような存在じゃ無かった。」

「なるほどね。面白い事実と解釈だね。で、もうひとつは?」

「最近エジプトのピラミッドの番組を見たの。あの巨大な建造物を建てるにはやはり強権的なやり方で強制して出来るものではないんじゃないかって。確かにその労働を提供することによって自分たちもやがて死後の世界が約束されるなら、進んでピラミッド造りを行ったのかもしれない。しかも、労働者はけっこう良い食事や待遇が与えられていたらしいとうことも分かってきているみたい。つまり、これらのことからお侍さんも庶民から尊敬され、愛される存在だったんじゃないかって。これは、七人の侍の菊千代も同じだったのだと思う。強くて質素で教養も豊かでみんなから愛される存在。お侍さんはひとつの社会的なモデルとしての役割として多くの人が身分に関わらず憧れ、マネをしようとした・・・。」

「それが日本の文化となっていった・・・原型か。なるほど。」

「お侍さんって『アイドル』かぁ。」

「アイドルとはちょっと違うかもしれないが、文化の頂点だったと思うと確かにそんなことが日本のアイデンティティーとなり得る・・・と思うな。」

「でもなんか、その部分は失われてきていますよね。」

「まあ、侍の生き方、武士道と言えばいいのか、あまり合理的と言えないもんな。Z世代からみたらめんどくさい生き方の典型みたいなものだよな。『ばっかじゃな~い』って。」

「村上ちゃん、今、そんな言い方しないよ。」

「面倒なことは避ける、関わらない。今だけを楽しむ。やりたいことしかしない。合理的なことを好む。人の前に先ず自分のこと。理性よりも感情。刹那的に生きる。」

「私もその世代なんだけど、そこまでボロクソに言わなくても。それにそんな人ばかりと決めつけるのは村上ちゃんらしくない。」

「おっ、通子の言うとおりだが、マクロ的な傾向として・・・。」

「先生!どうしたらいいんでしょう?」

「どうしたらって?」

「つまり、日本人としてはお侍さんのような生き方をしたらいいのか、今の時代に合わせて生きたらいいのか。」

「村上ちゃんがこれから言うこと、分かった。『自分で良いと思う生き方をしなさい』でしょ。」

「まあ。」

「そうですね。お侍さんの生き方を全部肯定することは出来ないけど、そのポリシーというかは、私は大事にしていきたいと思います。」

「私も由美子とほぼ同じね。由美子みたいに禁欲的な生活は出来ないけど。」

「なに、私は尼さんか?うふ。」

「なんか、最初の話って何だったけ?」

「電車の中で具合の悪くなった高校生を誰も助けようとしなかった話でしたけど。」

「でも、通子の話を聞いているとそれって、ニュースサイトで話題のトップになったことだろ。ということは、そのことを多くの人がおかしいと思っている証拠だよ。捨てたもんじゃないと思うよ。」

「先生も忙しい中、お付き合いいただきましたし。」

「村上ちゃん、感謝。チューしてあげる。」

「それは頼むからやめてくれ。さ、長くなった。二人とも気を付けて帰れ!」

村上は二人を送ると教務室に戻って山のようにたまっている書類の束の処理を再開した。

(あの二人には負けるな。学びって『生き方』なんだってあの子達が一番わかっているような気がする・・・。)



この章はこの記事に目を通してしまったから始まりました!

記事 --------------------------

電車内で倒れた女子高生を「全員が見て見ぬふり」彼女をおぶって助けた男性会社員の顛末――仰天ニュース傑作選

日刊SPA!12/31(火)8:45

2024年、反響の大きかった記事からジャンル別にトップ10を発表。「乗り物で腹が立った話」部門、仰天の迷惑行為の数々から第1位の記事はこちら!(集計期間は2024年1月〜10月まで。初公開2024年7月14日 記事は取材時の状況)

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