第48章 高校生、再び~志望校決まった?(後編)~
前回からの続きです。由美子と通子と一緒に帰っている途中、久しぶりに例の高校生といっしょになってしまいます。高校生は受験勉強のまっただ中のはず。さて高校生の二人はどこを進学先として選んだのでしょうか?そして、由美子にとってのハプニングが!
第48章 高校生、再び~志望校決まった?(後編)~
「でも、広幸さん、防衛大学なんて選択肢として聞いてないんですけど。」
「俺が防衛大学を選んだ理由は三つある。ひとつは学費がいらず、給料をもらえること。もうひとつは、由美子ちゃんのお兄さんが行った学校で親しみがあるってことだ。将来、語学も活かせそうだし。そして三つ目が人々の生命と財産を守るってところが目指そうとしていた警察官と同じだって。まあ相手が個人か国かって、相手が違うけど。」
「兄は確かに防衛大学ですけど、兄が空を目指しているように、陸海空を将来的に選ばなければならないと思うんですけど、どちらを選択なされるんですか?」
「決めてない・・・けど、外国語だったら海かな?いや、空も英語だな。まあ、そんとき決めるさ。・・・でも、やっぱり空かな。幹部になる以上、死を賭した命令を出さなくちゃならないってことを考えると、陸・海よりも小さい単位で動く空かな。俺には大勢の生死の責任はとれない。臆病もんだから。」
「・・・らしいですね。臆病とは違うと思いますが。(広幸さんって優しいから)」
「でもさ、2次試験、現役自衛官もいるだろ。俺も体力では負けないだろうと思ってたけど、・・完全に負けた・・・やつら、バッキバキ。実戦で闘ったら絶対にボコられる・・・すごいやつらばっかりだった。もう目の色が違う。半端な気持ちの俺は恥ずかしくなった・・・けど、逆に絶対にここに入りたいとも思った。」
「で、貴之さんは?」
「地元の国立大学の教育学部を志望してる。僕たちは学校から推薦をもらっているので、あまり心配はしていないんだけど、僕たちのゴールは大学入学じゃないから。」
「先生を目指すってことですね?」
「まあ。」
「さらっと『僕たち』って言ってるところが、なんかあまりに自然すぎて・・・。彼女さんは別としても、先生を目指すってのは、やっぱり村上ちゃんの影響?」
通子がいたずらっぽく尋ねる。
「通子さん、村上先生、いいだろ?まあ、村上先生の存在は確かにすごく大きかったね。空手にも出会えたしね。でも、一番は今のご時世かな。先生が人気なくて、大丈夫なんだろうかって思ったこと。『教育は国家百年の計』って言うけど、大変だからって誰もなり手がなかったら、日本の国はどうなるんだろうって思った。」
「そうですね。母が誰も教員を志望しなくなっていて、採用試験の倍率がとても下がっているって言ってました。そこで試験を年々簡単にして、それでも厳しいって。」
「それじゃあってんで教員に向かないとんでもないヤツが受かって先生になるってことか?」
「まあ、志のない者も受かるだろうが、仕事についてから志をもつなんて普通のことだろうから。」
「いや、おい!自分みたいのばっかりが世の中じゃないんだぞ!高校に入ったのに、その志さえ持てず、自分が目立つことばかり考えてまともに勉強してないやつだってクラスにいるじゃないか?何のために高校に入ったかさえ、考えないヤツらがさあ。」
「まあ、仕事に就けば多少変わるんじゃないか?」
「いやいや、俺が言うことじゃないけど甘いって!俺たちがぶっとばしてやったけど、第一、いい大人になって小学生を襲う大人がいるんだせ!そんなのが先生になったらどうする!あの時だって、俺たちがいなけりゃ、この小学生だって・・」
広幸は口を両手で押さえながら、目をまん丸くして、まるでフランケンシュタインのように肩の中に頭が入り、首がなくなった。その格好で口を押さえたまま、ぎょろぎょろと辺りを見回した。
「へ?へ、へ?どういうこと?・・・え?どうして由美子を見たの・・・?」
「・・・・・・・・・」
「・・へ?へ、へ、へ。もしかして、包帯の時の由美子?????・・・由美子、もしかして・・・・もうしょ、しょ、しょ、じゃないの?」
「すまん!広幸自身、一生の不覚!口が滑った!ただし、こいつ(由美子)に手を出す前にヤツを仕留めたから大丈夫だ!」
「いや、いや、いや!おい、広幸!ちょっとはごまかせよぉ~!お前ホント馬鹿だよ。そういうのを馬鹿正直って言うんだ!」
「えっ?」
「いいんです。貴之さんの言ったことは事実です。逃げようとして派手に転んでしまって。もう少し・・・って時にお二人に助けられたんです。あの時、襲った人が逆上してナイフで広幸さんに向かってきたんですけど、本当に蹴り一発で倒しちゃったんです。・・・でも、あの時にこのお二人に助けていただいていなかったら、もしかして、通子といっしょに今こうして居られなかったかも知れません。通子のスマホ事件の時も口止めされたでしょ。私たちもみんな口止めされたの。私の為にね。通子は打ち明けてくれたのに、私は今まで黙っててごめん。」
「はぁ、びっくりした。不審者騒ぎの渦中の人はあなただったのか。こりゃ灯台もと暗し・・・。まあ、話からすると無事だったんだね、よかった~。結構殺されちゃう子もいるから。話をを私にしなかったのは秘密をしっかり守ったってことだよ。そりゃあ高校生も守ってるのに、当の本人がもらすわけにはいかないよね。」
(いや、こんなことになったのは、広幸、今ここでお前がもらしたからだろ!)
その時、しおらしく下を向いた由美子が顔を赤くしてぽつりとつぶやいた。
「・・いや、後で気付いたけど、ほんのちょっとだけもらしちゃってて・・」
通子がいきなり由美子を羽交い締めにして口をふさぐ!
「あのね!由美子ってホントに天然だから!それ違うでしょ!もう!」
ふたりの高校生はキョトン・・・。
広幸がひとつ咳払いして。
「お前んところの兄ちゃん、防衛大だろ。空自希望なんだってな。」
「ええ。今度後輩になられるんですね。」
「あくまで受かったらなの話だが。・・・で、陸・海・空の自衛隊を知るために、漫画読んでみたんだけど。空を希望するとしてもパイロットは俺には無理だなって思った。」
広幸はカバンから2冊の漫画の単行本を取り出した。おい、それって校則違反だろって、しかも漫画かよっていう貴之を無視して続けた。
「これって、『ソラモリ』井上もとか原作で千葉きよかずって人が描いたった2冊完結の漫画なんだけど・・・」
「あ、その表紙!兄も確か読んでました。航空学生の受験から練習機を経てウィングマークを獲得し、戦闘機パイロットとして部隊に配属されるまでがとっても詳しく書いてあるんですって。兄にとってのバイブルの一つだっていうのを聞いたことがあります。」
「これ、イイ漫画だよな。なんというか、誠実が良いって正面から描いている。目立つだけ目立ってちやほやされることがかっこいいことなんだというこのご時世で、そうじゃない価値を描いている・・・。軽い、吹けば飛ぶような感じの漫画じゃないんだなぁ、たいへん重い価値が描かれていたんじゃないかと思う。」
「兄も似たようなことを言ってたような気がします。」
「第2巻の73ページ、ほら、ここだけどね。総理大臣だった吉田茂という人の防大生への訓示が描かれている。『君たちは自衛隊在職中、決して国民から感謝されたり、歓迎されることもなく、自衛隊を終えるかもしれない・・・。しかし、自衛隊が国民から歓迎され、ちやほやされる事態とは、外国から攻撃されて国家存亡の危機の時か、災害派遣の時とか、国民が困窮している時だけなのだ。言葉を換えれば君たちが日陰者であるときの方が国民や日本は幸せなのだ。一生御苦労なことだと思うが、国家の為に忍び耐えてもらいたい』・・・ここがかっこいいんだよ。空手の教えにも通じると思うし。」
「広幸さんって、ん、やっぱりかっこいい。一見ちゃらちゃらしているようにも見えるけど、とても誠実で真面目な人なんだなあって。」
「うんそうか。俺の嫁さんになってくれる・・・。じゃあ、チューしよ。」
いきなり、後ろから後頭部に平手打ちの強烈な一発!
「おい!貴之、何すんだよ!!」
「それやったら、退学のパターン!強制わいせつだ。犯罪だ!」
「お前だって、この前チューしてじゃないか!俺見たぞ!」
「趣味悪り~。覗きかよ。でもな、正式な彼女で合意の上だし、年齢的にも大丈夫だから問題はない。13歳未満とチューするのは合意の上でも犯罪だ。小6は13歳未満だぞ!」
「だってよ。おれは冗談でチューって言ったけど、村上先生は自分の娘とチューしてんじゃんか!13歳未満てなもんじゃないぞ!」
「あれは、肉親的愛情の発露であって、目的が全然違う。」
「あのなあ・・・・・・」
(・・・・・ああ、また始まった。)
「まあ、通子。この二人、いつもこうだからね。ケンカするほど仲がいいってまんざらうそじゃないみたい。」
「まあ、前回もそうだったけど、全開だね。失礼しよー。」
警察官を志望していた広幸ですが、志望校は由美子の兄の通う防衛大学校。さて、貴之はというと地元大学の教育学部を志望。彼女と二人で目指しているようですね。そして、話がひょんなことから由美子危機一髪の時のこととなり、秘密がばれてしまいました。まあ、これで通子とはお互い様になったわけです。
【登場した本】
『ソラモリ』 原作:村上もとか 漫画:千葉きよかず 集英社 全2巻
(1) ISBN978-408-891198-4 (2) ISBN978-408-891411-4 2019.年初版




