第47章 高校生、再び~志望校決まった?(前編)~
県予選の読書感想文コンクールも結果が来て、残念ながら感想文とは離れてしまいました。季節もどんどんと進み、やがて白いものが天から地上へ落ちてくるようになります。由美子と通子と一緒に帰っている途中、久しぶりに例の高校生といっしょになってしまいます。高校生は受験勉強のまっただ中のはず。さて。
第47章 高校生、再び~志望校決まった?(前編)~
学校の帰り道。もうすぐ雪の季節だけど、今年は遅い。やはり季節の二季化(夏と冬)は進んでいるのか。ちょっと前まで夏日もあったけど。急に寒くなった感じだ。
通子は耳当てをしている。ちょっと流行を外しているか?でも、通子ってすごく可愛い。5年生の時は子パンダ的だったけど、今はお姫様?いや、女王様かな?メタモルフォーゼだ!女子の私から見ても美しい女の子・・・いや、美しい女性に変身したみたいだ。そう言えば村上先生が、高学年女子って、5年生の夏休みが終わると女の子になり、6年生の夏休みが終わると女性に変身するって言ってたような気がするけど。
でも、その後の発言が聞き捨てならない発言!これ、セクハラ発言の極みだと思う。中学校に入るころ、一度女子は、縦の伸びが止まり横にひたすら発達する時期になるって言ってた。お肉女子っていう言葉も言ってたけど、私でも村上先生に対して炎上するかと思った。・・・中学校に入ると女子は横にぷくぷくとなるって。そうならない女子はその時期はモテるらしいけど、ぷくぷく女子も中学校を卒業し、高校生になる頃にはもっと魅力的な体形の女性になるんだとか。通子じゃないけど、このスケベオヤジって言いたい。
でも、読書感想文コンクールで頑張っている際に学んだことはそういうことじゃない。生きるって、それが今当たり前すぎてしまっているけど、本当はもっと大変でなりふり構わないものなんじゃないかって。通子も私も逆に中学校では順当にぷくぷく女子を経験できるのかな?
「お~い、由美子ぉ、そのじ~~~~と私を見つめるのやめてくれる?空虚なメ~してるぞ。通子様の美しさにブラックホールにおちたか?」
「ううん。ブラックホールにおちてはいないけど、通子ってほんとに『美しく』なったって思ってたの。そのファーの耳当てがとっても似合ってて、めちゃくちゃ可愛いと思った。」
「ごめん由美子、アタシ、そういう趣向はないんだけど・・・」
「いや、そこで不思議だなって思って。」
「はっ、何がだ?」
「男女の関係・・・」
きっと、アニメだったら、通子の目が飛び出し、口から何かが吹き出していただろう。
(ん?)
通子が急にうずくまる。
「ウウウウウウ・・・・死・・・・覚・・」
通子が溺れたような格好でバタバタやっている。ゆみこの習いたてのハイムリック!
「わぉ、びっくりした!・・・・・ううう・・・本気でこの人死ぬかと思った・・・。 どうしたの、通子?」
「ハァハァ・・・、由美子ってときどき死角外からアッパーカット飛ばすよね。」
「空手ではアッパーカットは習わないんじゃないかな。」
「いや、いきなり想像もつかない言葉をいうんだもん!」
「なんか、変なこと言った?男女の関係?」
「じっ~と私を見つめていたから、この人百合の傾向があるんじゃないかって思ってたら、いきなり『男女の関係』って!ぶっ飛ぶでしょ!」
「通子の耳当てを・・」
「イヤーマフって言って。」
「通子のイヤーマフってとても似合うなぁ、通子ってとっても美しくなったって考えてたら、この前の村上先生のぷくぷく女子の話を思い出してね。もしかしたら、男子ってそんな目で女子のことを見てるのかなって思って。村上先生でさえ、そうだから。」
「いや、村上ちゃんくらいならそうかもしれないけど、うちの男子ってもっとガキで女子にはあんま関心なさそうだね。意外に、体形とか見てないよ。むしろ、話してて楽しいとか、頭がいいとか、全然別の方向を向いていると思う。毛が生えてるとかないとか、サイテーなことを言うヤツがいるし。この水泳で鍛えたナイスバディの通子様の体形ってほとんど無視だね。」
「まあ、通子っていつもレースのフリフリだから体形って外からじゃ分からないと思うけど。」
「まあ、それはそうなんだけど、体操着とかセクシーな私に気が付いて欲しい。わざとスポブラしないで、ぐっとお胸が目立つようにしてもだよ。」
「まあ、体育は男子にとってそれどころじゃないからね。体育の時間の目の色は完全に勝負の世界だから。」
「そういう意味じゃ村上ちゃんは大人の男性で、そこが魅力なんだよなぁ。」
「あ、目がハートに変わった。」
「それはそうと、あのぷくぷく女子発言のあと、この通子様が敵はとったから。」
「?」
「後ろからそろりと近づいて村上ちゃんの両足の間から股間に足を伸ばして、背中を思い切りドンと押した。見事命中した。蹴り上げるというのもありっだんだけど、それはちょっとさすがに。」
(:・・・)
「まあ、村上ちゃん、悶絶してたけど。」
(XXXXXXXXXXX!!)
すると突然、後ろから声が。
「おいおい、随分と物騒な話してるな、小学生!」
「あ、広幸さんと貴之さん!久しぶり~!ですね。」
「おう、久しぶり。そうだなぁ。そう言えば空手教室にも全然顔出してないしな。読書感想文、結果どうだった?もう、結果出てる頃だろ?」
「・・・・。」
「そうか、残念だったな。」
「でも、この通子と一緒に課題を読みあさって、中学生の課題図書に手を染め、共同で文を書きました。結果はともあれ、小学校生活の最後を充実した日々で過ごせたのは私たちの宝物となりました。ところで、大学受験?忙しいのですよね。」
「まあ。」
「でも、広幸。お前、もう9月に1次試験があって2次試験も10月だったんだろ。」
「えっ、どこを受験されたんですか?試験、早いですよね。」
「こいつ防衛大学校の総合選抜試験を受けたんだ。アホだから推薦は無理だし、一般もあるけど、やっぱりアホだから現役自衛官と争う総合選抜を選んだんだ。理工学系の採用は多いんだけど、いずれにしろこいつ人文・社会学専攻だから採用は少ない。でも基本、こいつは殺しても死なないようなヤツだから身体は問題ない。そしてこいつは語学オタクというか、C3POだし。で、そのC3POの話を聞きつけた会社の人事担当者が今から唾を付けようと勧誘に来たわけ。会社で奨学金を出すから大学の外国語学部へ推薦するという話もあったんだけど、その中に自衛隊の地方連絡部の人もいたんだよ。将来的に防衛駐在官、いわゆる武官だな、それを考えて防衛大の受験に誘ったみたい。まあ、武官でなくても今は海外派遣もするようになったから、語学の堪能者はありがたいんじゃないかな。」
「総合選抜試験なら身体検査だけじゃなく基礎体力試験もある。そして、多様な能力や資質と言ったら、俺の言語能力はここでしか評価してもらえないだろう。」
「まあ、C3POだかんな。」
「だ・か・ら・・、C3POじゃないって!」
「すみません、『ぶかん』って何ですか?」
「外交官って知っている?大使館とかは?」
「海外におかれる日本の事務所みたいなところですよね。」
「外交官は外務省の所属なんだけど、武官は防衛省から出向する、まあ、いわばおおっぴらなスパイだな。」
「!!!それって大丈夫なんですか?日本にもスパイがいるんですか!?」
通子が素頓狂な声でここに反応した。
「まあ、スパイといっても海外の同じような軍人と仲良くして、情報を集める役割かな。映画に出てくる特殊兵器を駆使して情報を盗んだり、破壊工作をしたりする人とは違う。軍関係の専門の知識・技術をもった外交官と言ってもいいんじゃないか?」
「いや、びっくりしたぁ。イーサンハントとかダブルオーセブンじゃないんだ。」
「そういうある意味本当のスパイは表に出ないよ。でも、他国のそういう人たちは日本中にごろごろいると思うよ。なにせ、日本はスパイ天国と言われているくらいだから。」
「えーっ!日本は、す、スパイ天国なんですかぁ?」
「最近ではスパイ防止法とか議論されているけど、日本には全くといっていいほどそういう法律はなかったし、それを取り締まる組織もほとんどなかった。警察の公安部の一部とか自衛隊の警務隊の一部もそうかな?その他の組織もあるかもしれない。でも、その動きは私たちにはほとんど見えないし、実際追いついてないんじゃないかな。たまに自衛隊のお偉いさんが外国の人に情報をもらしたって警察につかまることはあるけど。まあ、実質外国のスパイは野放し状態だったんじゃないかと推測できる。」
「『推測』ですか?」
「由美子ちゃん、それしか出来ないんだよ。だって情報がないわけだから。」
「ねえ、何か当事者本人の俺、忘れられてない?」
「僕もね、マブダチのことだから調べたんだけど、この防衛駐在官って幹部の中でもABCランクがあってAランクでも選抜された超エリートしかなれない。だいたいAランクの幹部になるには防衛大学校か一般大学を出てさらに幹部候補生学校を出なければならない。しかも1佐まで昇進し、まあ、2佐の方もいるみたいだけど、そこまで昇進して初めて防衛駐在官となれる。だから少なくとも防衛大学校か一般大学に入らなければならない。」
卒業したら警察官になるとごねていた高校生の広幸ですが、結局のところ、大学への進学を選んだようです。しかも、志望校は由美子の兄の通う防衛大学校。さて、貴之は?
防衛大学校は難関大学です。将来、自衛官のエリートとなる人材を育てる学校です。広幸は堪能な語学を活かして防衛駐在官を目指していますが、これまたエリート中のエリートです。大丈夫かな?
(※この物語は全てフィクションです。忠実な取材や資料に基づいていません。改めてご承知おきください)




