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第45章 光のすみか

通子が面白いと言ったアニメ、『瑠璃の宝石』、由美子も見ることになるんだけど、これも出会いなのだろうか。鉱物の世界が普通にアニメとして存在できるなんて奇跡。人はいろいろな出会いで変わり、新しい道へと歩み始めていく。これって「きっかけ」っていうのかもしれないけど、何気ない日常の中に人生を変えるほどのきっかけってあるんだろうな。

※随分と間が空いてしまい、申し訳ありませんでした。数名の方がチェックしてくださっているのに、期待に答えることができませんでした。


第45章 光のすみか




風は歌い 雨は語り~ たどり着くよ 光のすみかへ


「通子、今日はご機嫌ね」

通子の鼻歌に由美子がそのわけに突っ込む。


学校の帰り道、一緒に途中まで帰る由美子と通子。そろそろランドセルも似合わなくなってきている。昔教科書はB5サイズだったので、ランドセルも一回り小さかった。今はA4サイズの教科書を入れるため、ランドセルも若干大きくなっている。昔のランドセルだったらもっと違和感があっただろう。

えらくご機嫌な通子に声をかけた。

「うん、パパからCD買ってもらったの!」

にやけている。

「ふうん、なんて曲のCD?」

「安田レイの『光のすみか』って曲。これって『瑠璃の宝石』っていうアニメの主題歌なの。レイさんが原作を見て書き下ろしたっていう曲なんだけど、その世界観をモロ表してんの。すっごい良い曲!」

「『瑠璃の宝石』?分からないな。そんな本あったかな。」

「何言ってんのよ。ア・ニ・メ!マ・ン・ガよ、マンガ!単行本も出てるよ。クリスマスプレゼントは『瑠璃の宝石』の全巻セットが欲しいくらい。」

「そんなに面白いの?」

「ここ最近の一番のヒット。大谷翔平のホームラン級よ!」

「どんな内容?瑠璃色の宝石って何かな。サファイヤ?瑠璃色ってきれいな青だよね。」

「いや、瑠璃って宝石じゃなくて、主人公の名前よ。谷川瑠璃っていうの。アクセサリーとかに興味津々だった高校1年生。どこにでもいるような普通の女の子なんだけど、鉱物学を専攻している大学院生の荒砥凪さんと出会って、鉱物探しに目覚めちゃうのね。」

「めずらしいテーマね。鉱物がテーマの作品って何か絵になるのかな。磨かれて宝石店に並んでいるものじゃないんだよね。」

「ピンポン!」

「見てみたいな・・」

由美子はいきなり腕をガシッってつかまれて通子に引きずられる。

「よし、決定!録画してあるから、見よう!家に着いたら、由美子は北朝鮮に拉致されたって家に電話しとく!」

「もう!ちょっと、通子ったら。それに、帰国出来ない人たちもいる中で、そのネタはアウトだよ。」

「あ、それはごめん。でも、家に行くよ!レッツゴー!」

・・・・・・・


家に着くなり、通子は由美子の家に電話をかける。

「あっ、由美子のお母さん、いつもお世話になってまぁす。通子でぇす。学校帰りそのまま由美子を拉致しちゃったけど、すみません。これからいっしょにアニメ見ることになっちゃって。そう、話の成り行きでね。いいでしょ。夕食もいっしょに食べるから。う~ん、そうね。帰りは9時過ぎになるかな。いっしょに泊まってってほしいところだけど、ママに車で送ってもらうから心配しないでね。・・・それと、宿題はもう図書室で済ましたから。いいって。私がごーいんに誘ったんだから、いや、拉致ね。由美子、おこらないでね。」

「いや、夕食までいただくなんてそんな話・・・・」

「気にしないって。ママも一応料理上手だし、金曜日はいつもカレーって決まってるから。一食分、増えようがどうってことないって。むしろ、喜ぶ。ホントは明日は土曜日だから、泊まっていってもらうのが理想なんだけどね。パジャマも私のがあるんだけど、さすがに下着は私のじゃまずいよね。」

「もう、通子ったら」

「ささ、リビング行くよ。ランドセルはソファの脇に置いてね。」

(昨年までの通子ってこんなんじゃなかったよね。どっちかっていうと人の動きを観察した上で波風立てないポジションをさらっと見つけて知らない間にそこに移動してる・・・そんなだったのに、村上塾に入ってからというもの、なんか変わったよね、いや、本性が覚醒かくせいされたというべきか・・・)


由美子をソファに投げ込むと通子もソファに飛び込み、リモコンをテレビに向ける。アニメ『瑠璃の宝石』の第一話が再生される。『第1話 はじめての鉱物採集』だ。オープニング曲は無しで始まる。主人公の瑠璃が友達とアクセサリーを見ている。でもお母さんには買ってもらえない。でも母から祖父が山菜採りの際に山で水晶を拾ってきたことを聞き、バスに山に出かけるのだが、そんなに簡単に採集できるわけがない。途方に暮れているときに、岩石を割るために仕入れた巨大なハンマーの試し切り?をするために山に来た凪と偶然出会うのだ。道なき道を進んでたどり着いたところには巨大な水晶の鉱床が露出している。瑠璃はそこで自分の水晶を手に入れることになる。そして凪に頼み込み、一緒に鉱物採集に連れて行ってもらう約束をする。そしてオープニング曲、『光のすみか』が流れる。さっき通子が口ずさんでいた曲だ。透き通った水の表現や木々の緑はまるで印象派の絵画を見ているようだ。主人公瑠璃や院生の凪は普通の二次元キャラで、劇画風ではない。ドラえもんタイプのキャラ・・・。それにしてもオープニング曲に合わせ、いや、曲の方が合わせているのかもしれないが、アニメもリアリティあふれる自然や色とりどりの鉱物が曲にマッチして美しい。思わず、通子が口ずさむのが分かる。主人公はほんとにどこにでもいるようなキャラで鉱物とは無縁の、スカートのよく似合う女の子だ。教室では机の上に上半身をだらっと投げ出してかったるそうにしているような子だ。設定は高校生ということだが、小学生といっても全然おかしくないキャラ。凪さんはボン・ボンと胸とお尻が誇張されて描かれている大人の女性だ。こちらはブラウスにパンツ姿、おしゃれっ気なし。鉱物を愛する女って感じはする。モンハンのような巨大なハンマーを背負っている姿はやはりハンティングだ。ただし、相手は何万年もかけて出来た鉱物だけと・・・・・・(ネタバレしちゃうので内容はカットね)・・・


途中で夕食を挟みながら一気に4話まで見終えた。

「まるで良質の小説を読んでいるみたい。知らない世界にはまっていく気持ちがよく分かる。ただの石ころだと思っていたものが、実は何万年もの地球レベルの時の流れを経て、様々な自然の作用で今私たちの目の前に現れる。私はこんな楽しみ方があるなんて今まで知らなかった。小説を読んで自分でつくる世界観も捨てがたいけど、このチーム、物語もアニメも曲もだけど、このチームで、しかもプロのチームが作ったこの世界観に浸るってものすごく素敵だ。このアニメを作られた方々の情熱が伝わってくる。」

「まぁ~たまた由美子。そんな難しい御託ごたく並べて。素直に感動しなさいよ。」

「素直に感動しているよ。いいものね、アニメも。」

「んでしょ!この作品はいいでしょ。最近、転生ものやゲームの世界観を取り扱った売れ筋にびたアニメが多いけど、これほど真摯に真面目に作られていて、流行はやりすたりに関係なく、いいものはいいって作られている作品はやっぱりいい!」

それからも話は盛り上がるのだが、あっという間に帰る時間に。土曜日は通子の習い事オンパレードなので、日曜日にまた続きを見ることに約束して、由美子は家に戻った。

でもまだ耳の中では安田レイの『光のすみか』が流れたままだ。ちょっと今夜は興奮こうふんして眠れないかもしれない。


翌々日、由美子は再び通子の家を訪ねた。残り9話。ほとんどぶっ通しでみた。面白いのであっという間に見終わってしまったけど、やはり脳と目はがっつり疲れているようで少々頭痛がする。今日のメディアチェックはふたりともバツだ。


『瑠璃の宝石』 渋谷圭一郎 原作のアニメ


第1話 はじめての鉱物採集

第2話 金色の価値

第3話 残された恒星

第4話 砂をひもと

第5話 見える世界、見えざる世界

第6話 その青を見つめて

第7話 渚のリサイクル工房

第8話 黄昏色のエレジー

第9話 190万トンのタイムカプセル

第10話 ワンセンテンスの廃線路

第11話 サファイアのゆりかご

第12話 思い出は石とノイズと

第13話 見上げて覗いて探して、次!


その『時のスケール』と『地球規模のダイナミックな広がり』、『重なり合う偶然』広大な時間と空間の今ここ。

歌詞にもある「幾重にも重なっている この地球の偶然」「ひとつでも欠けていたら きっと出会えてなかったね」・・・瑠璃が凪と出会い、鉱物の神秘と不思議を知り、同じく院生の後輩、伊万里ともつながり、小さい頃から石が好きだった瀬戸硝子や笠丸葵と仲間が増えていく・・・出会いって奇跡なのかな、それとも重なり合った末の必然なのかな・・・


私って、あまりアニメは見なかった。本を読みながら自分でその世界観をイメージするのが好きだった。でも、けっこぅ独りよがりなんだよね。


私は変わったかもしれない。通子が新しい世界を教えてくれた。きっと本を読んでもここまでの美しい景色と音楽、時間と空間のスケール、人と人とのつながり、きっかけ。私の想像力では足下にも及ばない。プロが集団で作品を創るというのはこういうことなのか。私は今晩、眠れない・・・。


※随分と間が空いてしまい、申し訳ありませんでした。数名の方がチェックしてくださっているのに、期待に答えることができませんでした。お待たせしてもうしわけありません。(!!待ってない?)


もう少しで完結に向かいます。コンクールの結果や卒業に向けてのルーティーン、残された課題(父の工場や高校生、空手道場、不登校のミチヒト・・・)は山ほどあるのですが取りこぼします!(宣言だな)


次年度も読書感想文に挑戦するか、迷っています。

読むのは一瞬でも書くのは相当の時間を費やすので。

育ててきた由美子や通子、高校生連中はいけそうですが環境は変わりますね。


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