第44章 読書感想文草稿
またまた、最近ほんとに間が空いてしまいます。
さて、結局、書いてきた読書感想文はどうもイレギュラーな課題図書・書き方もイレギュラーとなっています。しかも、長い。対話型なんで冗長。なんか、ピシッとしない。・・・それでもこれが良いと二人は思っているようです。
※今回は台詞の前に人物のイニシャルをつけていますが、対話形式なので、話している者が誰か分かるように、由美子と通子で台詞の当事者を示したようです。
第44章 読書感想文草稿
<原稿のはじまり>
由美子と通子。私たちは小学生です。でも是非中学校の課題図書であるこの本について語りたいと思ったのは私たちが今避けて通れない重要な問題だと考えたからです。この本にはいろいろな、咲子さんや葵さん等の他にもたくさんの食に関わる問題が登場します。結論から言えば、私たちはその原因の一つとして『食の合理化』『食の商品化』があるのではないかと考えました。でも、咲子さんのように家族の関係など、現代社会は関係性の問題がたくさんあることも事実です。そのような問題はいつの時代にもあったのでしょうが、『食』が関係を改善し、人々の支えとして支えてきた面があったのだと推測しています。ところが『食の合理化』『食の商品化』が進む中でその機能が徐々に低下し、問題が湧き出てきた・・・。
由「ねえ、『食の合理化』ってどういうこと?」
通「狩猟やってる叔父が言ってたけど、獲物を捕らえること自体が難しいのに、それを解体し、お肉になるまでにはいつくもの過程があるんだって。しかも、それを調理しておいしくいただけるようになるには昔は火起こしから始まって、いえ、焚き物を探すところからもあるね。それで火力を調整しながらおいしくいただけるようにするまでには、ものすごく手間暇がかかったってこと。ところが、今は冷蔵庫から食品を出して、レンチンでOKでしょ。」
由「確かに。コンビニで出来合いのものを買ってきたり、外食したりすればもっと簡単だよね。それが合理化ね。でも、それがどう関わるの?」
通「なんか、苦労しない分、有り難みが希薄になったり、協力といったものが必要なくなってきたんじゃないかな。」
由「でも、その分時間が出来てゆとりも増えたし、悪いことばかりじゃないと思うけど。」
通「でもさ、ラマワティちゃんちって伝統のお菓子をお母さんといっしょに作るじゃない。きっとそのときにワイワイ言いながら楽しく作ると思うんだ。そんなのが家族の絆を深めるんだよ。それをコンビニで買ってきてみんなでおいしくいただいてもその濃厚さって蜂蜜と人工甘味料ほどの差があるよね。」
由「まあ、蜂蜜は甘すぎて私は得意じゃないけど。」
通「それって、結果だけの評価でしょ。そうじゃないんだって!それじゃぁまるで学校の成績評価じゃん!どれだけ甘いかって、そうじゃないんだよ。家族の喜ぶ顔を想像しながら、蜂に刺されまくりながらも蜂蜜の滴るハニカム型の巣を持ち帰るオヤジの尊さに愛情を感じるんだろうな。」
由「そうだね。本来食にありつけるっていうのはあまりない、つまり有り難いことだった。」
通「つまりは、生活の中で極めて重要な営みだった・・・。」
由「そう、重要だったのが、今や玄関で靴をそろえるくらいになっちゃった?」
通「いや、それは今でも重要でしょ。由美子んちもそうだし、うちもそれは絶対だもん!由美子んちにとっては当たり前でも、そういう躾がなっとらん。」
由「靴をそろえる話?いや、『食』だよね。」
通「んだなぁや。でも、単に形式的な躾とは意味が違う。夏に『食べ下手』について読書会してたじゃない。あんとき、偶然咲子がコッペんちに行くことになって、妊婦だったコッペの赤ちゃんのいお母さんのお腹をさわらしてもらったでしょ。あん時咲子って大泣きしたじゃん。『なんかよくわかんないけど、神々(こうごう)しいもの 命。命だ。』って!・・・で、 物語のクライマックスで、私たち『美味しいということ』について考えていて、物語の結論、つまり主題は葵が言っていた『何か特別な価値をもつ営み』だってことになって、さらにそれは『きっと、生きていたいってことなんだ』ってことになったじゃん。」
由「確か、『美味しいっていうのは、きっと、生きていたいってことなんだ。だって美味しい味なんて存在しない。』ってのは葵さんの言葉だったよね。」
通「そう。『食』って『命』なんだよ。命って合理化や商品化にもっとも適さないものでしょ。」
由「裏を返せば、『命が合理化や商品化』されてしまっているとも言える。過労死や戦争がある時代。命よりもお金が大切・・・みたいになっている味気ない時代への批判なんだよ。」
通「葵が言ってた『うまい』ものじゃなくて『美味しい』、それが正に『命』よ!『命』が蔑ろにされてしまう時代、それじゃぁいけん!お金じゃないんだよ!お金じゃ買えないもの、それが『何か特別な価値』なんだよ。それを忘れないようにしよう!フォックス!」
(由 えっ?)
由「ええ、ファルコン!(いつの間にか『マナ夏』!?)」
<原稿のおわり>
「長い!」
教務室の村上が座る椅子の前で由美子と通子が二人横にならんで、神妙な顔つきでなりゆきを見守っている・・・と、その一言!
「もう!干してある手延べそうめん並みに長~い!それに最後のマナ夏(※小学校高学年の課題図書『マナティがいた夏』)に関しては審査員もきっと『はっ?』ってなるぞ。ローカルな、自分たちだけしか知らない話題はダメだろ。」
(お前ら、平気で長い文書書いてくる。ただでさえ、豊富な内容を要点に絞り簡潔にまとめていかなければならないというのに、しかも対談形式っていったい何なんだ、もう)
「400字詰め原稿用紙3枚といえば、総字数1200字くらいだろ。ざっとこれ、1800字くらいあるんじゃないか?規定の1.5倍だぞ。昨年も縮めるのに苦労したんだけど。」
「だから村上ちゃんに頼んでんじゃん。」
斜め横から事務の小林さんがたしなめる。
「通子さん、それ先生に対して失礼な言葉遣いだと思うよ。『親しき仲にも礼儀あり』だからね。」
「小林先生、これ通子の照れ隠しでもあるんです。どうもまともに話していると顔が火照ってくるんだよね。」
小林さんはさりげなく圧力をかける。
「それはよく分かるけど、やっぱり礼儀は礼儀よ。」
「まあ、礼儀もしっかりして欲しいと思うけど、文章もルールに則ってな。」
「でもね、話し言葉になるとどうしても長くなっちゃうんだよね。でも、これが私たちの考えた『味』なんで外せない気がする。ね、セーンセ!」
(小悪魔、通子!)
『食の合理化』『食の商品化』から話がはじまって彼女たちなりの結論にいたったようですね。もちろん、ルールは完全に無視。村上先生も困っていますね。




