第39章 旅行記(2)~トルコ編:カッパドキア・パムッカレ~
またまただいぶ間が空いてのアップです。
今回は前回の続きでエジプトからトルコに移ります。トルコは要の国のためいろいろな国が入れ替わった国で様々な文化にさらされてきました。そのため、一つの国なのにいろいろな文化が入り交じっているのです。親日国なのですが、なぜか日本ではあまりトルコのことは知られていないと感じます。ぜひ、ちょっとトルコものぞいてみてください。
第39章 旅行記(2)~トルコ編:カッパドキア・パムッカレ~
次の日。姥貝前校長はすでに校門のところで両脇を固められてしまった。由美子と通子が校門のところで待っていたのだ。
「新崎校長先生にもアポをとったんだけどね、ご出張ということで同席できずとても残念とおっしゃっていたよ。さて、小林さん、これみんなにいれていただけますか。」
赤いパッケージで一見コーヒーの500g袋のように見える。トルココーヒーは有名だが、ちょっと違う手触り。細かく軽い感触はコーヒー豆の感触とは違う。
「『チャイ』です。紅茶のようなものです。トルコはコーヒーの産地だったこともあるんですが、そこが占領された時代に紅茶が広がって、今では日本人の三倍から五倍もお茶を消費するお茶大国になっているんですよ。基本的にミルクティーはありません。ダルマさんのような二段ポットで入れてそのまま飲むか、お湯で割って飲むか、そして砂糖をたっぷり入れてうんと甘くして飲むか。由美子さんと通子さんには砂糖を入れてあげてください。チャイグラスがないのが残念ですが、みんなでトルコの雰囲気を味わいましょう。」小林さんは丁寧にお辞儀をすると給湯室に向かった。姥貝前校長はそのまま両脇を抱えられて会議室に連行される。後から村上も追いかける。
会議室のテーブルの一角に昨日のように座る。しかし、昨日よりも通子の顔面が近い・・・。
「さて、トルコの首都はどこかな?日本でいう東京みたいなところ。」
「分かる分けないでしょ。社会の世界の中の日本で、トルコはなかったような気がする。」
「イスタンブール・・・ですか?」
「コンスタンティノーブル?」
「正解はアンカラ。独立戦争の後、『トルコ共和国』の首都はアンカラに移されたんですよ。それまではイスタンブールなどでした。時代によって若干動くんですが、昔の首都はイスタンブールといってもよいでしょう。ちなみに由美子さんがいうコンスタンティノーブルはイスタンブールの前の名前ですね。キリスト教の東ローマ帝国(別名:ビザンチン帝国)の首都として栄えたときのね。それがイスラム教のオスマン帝国に支配されるようになってイスタンブールとなるんです。イスタンブールは知ってのとおり、ボスポラス海峡をはさんでヨーロッパとアジアに分かれる重要な都市ですからね。昔はここを中心に世界中の財宝が集まったんですよ。トプカプ宮殿の宝物室とかすごかったですよ。金銀宝石がざっくざく。」
「姥貝校長先生、トルコではイスタンブール中心の観光だったんですか?」
「いえ。エジプトから一度空路イスタンブールに戻ったんですが、そこから国内線に乗り継いでカイゼリ空港まで飛びました。ここは軍民共用の空港でグレー色の輸送機もたくさんありましたね。そこからさらにバスで移動してカッパドキアの観光が最初でした。トルコも有数の火山地帯で火山灰が積もり、それらが浸食された地形が観光地となっているんです。」
「カッパ?」
「地名です。頭にお皿のある空想上の動物じゃないですよ。カッパというよりは巨大なエリンギが立ち並んでいるといった方がいいかな・・・。」
「関西弁で『カッパ、どきいや』じゃなくて、エ・リ・ン・ギですか?」
「森林や草だらけの日本と違って至るところ岩がごろごろの砂漠に近い状態ですね。雨も降るし、雪も降るんです。それで浸食が進んでいるのは間違いないんですが、日本のように豊かな緑があり、水が豊富な国とは違います。カッパドキアの写真を見せましょう。」
「あいや!これは確かに巨大なエリンギだ!ニョキッと生えた柱の上にちょこんと濃い色の岩がのっかっている。おー、本物のエリンギだったら何千人分かな。いや何万人分かな。」
「どんどんと浸食が進んでこんな形になっているんですね。浸食については学習しましね?やがてはこんな風景も全て崩れていくのでしょうね。ちなみに、私たち(※妻も)が止まったところは洞窟をくりぬいて作られたホテルでした。くじ引きで部屋が決まったんですが、どうも最初の頃に作られた部屋でホテルの宣伝に使われるような部屋でした。とても広い部屋でしたが、まあ、かなりかび臭かったですけど。まあ、そんな風に火山灰が積もった岩をくりぬいていろいろな施設が造られていましたよ。」
ゆ「姥貝校長先生、これがホテルの部屋ですね。本当に岩をくりぬいて部屋にしているんですね。バスタブが部屋ん中に見えます。部屋が何室もある感じでとても広い部屋なんですね。スイートルームって感じ。岩石地帯の景色も確かに巨大なエリンギや穴だらけの岩ですね。」
「これは岩をくりぬいて造られた教会群ですよ。」
「たしかに十字架っぽいのが描かれていますね。マリア様みたいな絵もある。でも、教会って昨年村上先生からお聞きした巨大で豪華絢爛のドウモとかとは真逆ですね。」
「そうでしたね。昨年村上先生はイタリア旅行に行かれましたものね。そのお話も聞かれたですよね。さて、どうして真逆だと思いますか?」
「隠れキリシタン?」
「そうですね。トルコという国はキリスト教時代が1000年も続いたんですけど、いろいろな国から侵略されて宗教も入れ替わって弾圧されたりしたんです。異教徒とされ、迫害されたキリスト教徒たちがひっそりと祈る場所として造られたんですね。・・・ピンと来ないようですね。日本では異教徒とか、異端とか感覚的に分からないですものね。七夕にお盆、クリスマス、最近ではハロウィーン・・・宗教的に寛容な国ですから。しかしイスラム教についてはほとんど理解がない。最近、ムスリムの方も日本にやってきて少しは若干理解も出来てきたようですが。アヤ・ソフィアというモスクを訪問した時にこんなことがありました。もちろん、イスラム教の寺院、もっともアヤ・ソフィア自体は以前、キリスト教の教会だったんですけどイスラム教のオスマン帝国に占領されて以来、イスラム教のモスクに改修されて、当時のキリスト教のモザイク画などはほとんどが漆喰で塗りつぶされてしまいました。そして、そのモスクに入るには女性は特に出来るだけ肌をかくし、スカーフ、ヒジャブって言うんですが、それで顔以外を覆う必要があります。で、ですね。そこに入ろうとしたときに一緒のツアー客が警備の人の呼び止められ、厳しく尋問され始めたんですよ。なぜだか分かりますか?」
「・・・?」
「なんとその方が着ているトレーナーに十字架がモチーフのデザインがプリントされていたんです。最初のその方は何を言われているか全く分からなかったのですが、そうですね、ただのデザインでそれがもしかすると十字架を表しているものとさえ気付かなかったかもしれません。気付いたガイドさんが必死で警備の人を説得し、結果的にその上からガイドさんの着ていたジャンパーを羽織って何とか事なきを得たということなんです。要は『異端者』つまり、自分たちの宗教を信仰している以外の人には日本では考えられないくらい厳しいのです。特にキリスト教とかはね。」
「・・・?」
「そうなんですよ。世界は。」
「話は変わりますが、姥貝先生、カッパドキアの奇岩地帯の観光とくれば、気球にも乗られたんですか?」
「おや、村上先生。よくご存じですね。」
「色とりどりの気球が宙を舞う写真は有名ですから。私も写真を見たことがあります。」
「残念ながら、二日間チャンスがあったのですが、両日とも風が強くてね。」
「それは残念でしたね。次はパムッカレ?」
「ええ。白い岩石がむき出しになって温泉が棚田のような景色をつくって流れているんです。白い岩石(石灰岩)が特徴なので、パムッカレは『綿の宮殿』と意味なんですよ。私たちも裸足になって歩いてきました。すぐ近くにヒエラポリスの神殿があるんですが、ベルガモン王国のエウメネス2世が妃のために造ったとか。ガイドさんはこのように言っていらっしゃいました。本当の話だとしたら、王は王妃にこの景色をプレゼントしたかったのでしょうね。その後温泉保養地としてローマ帝国時代にも栄えるんですけど、大地震で壊滅したのです。神殿は今でも発掘作業が続いていましたよ。ちなみに気球はこの地で搭乗しました。いくつもの熱気球が夜明けと同時に舞う風景は圧巻でしたね。バーナーを炊く度に気球がオレンジ色に輝いて、それがまた綺麗でした。でも、我々の乗った気球は風に流され、ザクロ畑をかすめて収穫の終わったトウモロシ畑に軟着陸してしまいました。まあ、無事だったら言えますが、何かあった方が記憶に残りますね。(ゴンドラの部品がとれてましたけど・・・)」
(いや、前にも気球が墜落して観光客が亡くなってますよね・・・。)
「そして、ひたすらバスで移動です。東京・青森間くらいの距離をひたすらバス移動です。途中のドライブインで改めて気付いたのですが、アザーンというお祈りの呼びかけが決まった時間に流れていましたね。イスラム教徒の皆さんは、一日5回、メッカの方を向いてお祈りを捧げるんです。そう言えば宿泊したホテルでの朝夕に同じくアザーンが流れていました。面白かったのは、飛行機の機内表示にもメッカの方角が示されていました。これは日常なのですね。また、モスクには必ず尖塔といって高い塔があります。昔はこの上から人間がアザーンを大声で呼びかけていたようですが、今はスピーカーがついていて、そこから流れるんです。」
「そのひたすらの移動先って?」
通子が覗き込む。
「エフェソスというところです。エーゲ海沿岸まで移動しましたよ。この地のクシャダスからはギリシャも見ることが出来ます。エフェソスではギリシャ様式のアルテミス神殿跡が有名です。柱が一本建っているだけですが。外国に持ち去られてしまったのですね。しかし、その神殿は何度も建て直されているので、歴史的にはかなりいろいろな物語が残っているらしいですよ。そしてすぐそばにはギリシャ・ローマ時代に栄えた古代都市の跡があり、ケルスス図書館や数万人を収容できたと思われる大劇場の跡もあります。ここも今でも発掘が続いています。作業をしている巨大なクレーンがありました。ここはエリンギの立ち並ぶ奇岩地帯でもなく、洞窟都市でもなく、まるでギリシャのパルテノン神殿を思わせるような別世界でした。立派な彫刻が刻まれた石の柱や壁の遺跡が両脇にある石畳の上をずっと歩いて巨大な建造物を眺めました。本当にトルコという国はいろいろな文化が混じり合っているんだなと思わせられましたね。」
「姥貝校長先生、お話を聞く限り、侵略と征服が重ねられた国だと思うんですけど、それが今の豊かなトルコという国の基盤になっているんですね。なんか皮肉な感じがします。」
「そうですね。ああ、そう言えば由美子さんのお兄さん、パイロットを目指して自衛隊の学校にいらっしゃるんですよね。実は、エフェソスに移動する途中でコンヤというところで昼食をとったんですが、出発するときにやけに低空を密集して飛行している3機の飛行機が見えたんですよ。これってブルーインパルスみたいだなって思っていたら、再び視線上に現れたんです。とんがった機首は明らかに戦闘機だなって。調べてみるとコンヤには『トゥルク・イルディズラーリ(ターキッシュ・スターズ)』というトルコ空軍のアクロバットチームの基地があるんですね。どうも訓練で飛んでいたらしいんですが、見事な密集編隊でしたよ。機首はF-5ですね。『トップガン』で敵役になった機種です。」
「姥貝校長先生、詳しいですね。」
「いえ、さっきの徹底的に調べる・・・ですから。ちなみトルコはNATO加盟国でも第2位の軍事力を誇る国で、空軍もヨーロッパ近隣ではドイツ空軍、フランス空軍につぐ空軍力をもっています。まあ、先ほどの話じゃないですが、侵略と征服が繰り返された国ですから、危機感は半端ではないんでしょうね。しかも黒海を挟んで北にはウクライナとロシア、南の国境にはシリア・レバノンがあって、その南はイスラエルとパレスチナですよ。実際に戦闘が続いている場所があるんですから。」
「それって悲しいけど、事実なんだよね。ウバちゃんの話、聞けてよかった。で、続きは?」
「イズミール空港からイスタンブール空港まで国内線で移動です。ここでスーツケースがひび割れました。一緒のツアー客も車輪が壊れたり、ケースが傷だらけになったりしましたよ。結構乱暴なんですね。日本ではあまり考えられないですがね(笑)」
今回はトルコに移動しました。トルコは日本の約2倍の面積をもつ国です。トルコといえばイスタンブールが有名ですが、内陸部にもとても有名な観光地がありますし、エーゲ海に面する地域はギリシア文明も垣間見られます。
台詞の当事者のイニシャル(?)を付けたままにしていましたが、修正を加え、削除しました。




