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第33章 おまえら、教員か?先生か?

いよいよ夏休み。ほっとするのか、村上と教務主任の堀川が教務室でだべっている。若手が責任がはっきりしないうちは仕事が出来ないと堀川に喰ってかかってきたことをつまみにだ。教員か?先生か?


第33章 おまえら、教員か?先生か?



夏休み。高学年はその最初の方は忙しい。(※昨年度5年生の様子は『由美子の読書感想文~悪魔に魂を売った人々編~』を参照)

結局夏休みが始まる前に課題図書の選定を終えることが出来なかった。県独自のコンクールが七月末頃締切だった昔こそバタバタだったが、全国コンクールの県予選は夏休み明け(当県の小学校は10月10日、中学校は10月24日)だから本当はじっくり取り組めるはず・・・なんだけど。


夏休みになったといえどもお盆前の前半戦は先生方も出勤されている方が結構多い。ただ、急に先生方が少なくなった気もする。


学校には今、『教員』以外のいろいろな人が出入りしている。SSSと言われる方。ちなみにナチスの親衛隊SSとは違う。(は?何言ってんの?)スクールサポートスタッフの略称だ。テストの丸ツケや文書を封筒に入れ宛名を書く、宿題のプリントを印刷するなど要は先生方の『雑用』を「押しつけられる?」仕事だ。ということは、先生にとっては2つの対応が出来る。ひとつは自分の仕事を肩代わりしてくださる尊い人として対応するか、単なる『雑用係』として仕事を投げ、自分は『尊い』教育という業務に専念するかだ。

また、教頭先生の仕事を補佐してくれる職なんかも出来たという。定年が60歳なのに年金がもらえる標準の年齢が65歳というので、再任用として延長して働くことが出来るが、校長先生とかは違うらしい。そのまま校長先生として働ける人はわずかで担任に降格(?)されて働く道が残されたのだけど、やっぱり校長先生だった人が自分より若い人に指図されて働くのは難しいと考えたのか、こんな職も出来たらしい。現職の教頭先生にとっては助かる反面、相当気を遣うだろうな。子供でもこんなことは容易に分かる。そのほか、英語専科や音楽専科、家庭科専科に理科専科・・・。新しい先生方、しかも神出鬼没の先生方が増えて・・・もう限界。


私たちにとって身近な『教員』以外にも、作業服で学校に来てくれている人もいる。特に通子が信奉している『ICT支援員』の方だ。特に今回、GIGAスクール構想の更新に伴ってクロームブックからiPadに私たちの端末が変更になったのだ。それはいいとして、先生方の『校務支援』関係のオフィス型統合ソフトも変更になったらしく、どうも先生がたも四苦八苦しているようなのだ。村上先生や堀川先生はそれなり対応しているみたいだけど、4年生と5年生の先生は手こずっているらしい。慣れの問題もあるのだが、どうも県内で『校務支援』関係のオフィス型統合ソフトの統一を目指しているらしく、数年後には県内でほぼ同じ環境で仕事が出来ることになりそうだ。その統合を目指した初年度に手を挙げた市町村として我が市も入っている。

ただ、事務系の会社と違い、学校の仕事は多岐多様に渡る。単純に割り切れば『学習系』と『校務系』に分けられ、今までもその切り分けはなされてきた。ただ、ことはそれほど単純ではなく、何事もそうだが、グレーというかシームレスな部分は必ずあるのだ。そして、現場ではそこを『緩さ』でカバーしてきた面もある。



由美子と通子がだるよう暑さの中、だって登校してくるまでにまだ時間がある。今年は通子といっしょだから時間が合うときに約束しているみたいで、昨年よりは関わる時間は少ない?



さて、教務主任の堀川が新採用2年目の担任に向かい、怖い顔をしている。それ(※怖い顔だけでも「威圧的」だって)、パワハラになっちゃうよ。

「文句があるなら、どうぞ!」

若い教員が食い下がる。

「堀川先生!夏休みに家庭にiPadを持ち帰らせろっていうのは、市教委の指導でしょ。なのに、学校できまりを作って配布しろって、おかしいでしょ!」

「その指導の中には三原則が書いてあった。それをもとに各校の実態に合わせて取り組めということだろ。」

「でも、各校でバラバラでいいんですか?何か困った事案が発生しても市教委は知らんぷり?責任を学校に丸投げしているとしか思えない。」

「確かにそれは一理あるかも知れん。全市で統一することで差は生じなくなるけどね。つまり公平性は確保されたように見える。でも、ここみたいに工場地帯で勤め人が多く、家に誰も居なくなる、つまり学童保育で過ごす子が多い地域とS小学校みたいに農業地帯で三世代が普通の地域とは子どもたちの生活パターンも違ってくる。それに対応しないというのはいかがなものか?学校毎の特性を考慮したきまりで対応してくれっていうのは、市教委の配慮だと思うんだが。」

「いや、なんかあったときの責任は誰がとってくれるかってことです!市教委の指導だから、市教委でしょ。」

「だから、しない・・・の?」

「いや、責任のことを言ってるんです。責任がはっきりしないうちは動けないって言ってるんです!」


教育委員会が何か文書(指示)を出してくれないから、出来ない?自分で責任をとれと言われるのは嫌だ?まあ、それはそうなんだが・・・。結局、もう一度市教委の指示を仰ぎ、対応することになったが、本来これは上司の職務命令だと思うんだけど。でも、そうであってもいやパワハラだ、強権的だ、上から目線だって騒がれるとそれだけで今以上に業務が停滞してしまう。上から目線だって?・・・上司だから上から目線で当然だろう。何勘違いしてんのか。



市教委に電話をかけた堀川が一息ついていると、コーヒー片手に村上が近づいてきた。

「由美子が通子との読書会の中で、通子に『紅茶にミルクを注ぐか、ミルクに紅茶を注ぐかみたいなもんだよ』って言ったそうだが、つまり同じように見えることでもその意味において大きな違いがあるっていう例えらしかったんだけど。」

「ほう?」

「昔々、新採用の時に当時の校長から『お前先生になりたかったのか、それとも教員になりたかったのか?』って問われたことがあるんですけど、考えて見るとどっちも教育公務員なんですよね。でも先に一番に『先生』として考えるのか、それとも『教員』として考えるのかという自分がめざす教育公務員としての根本、生き方を問われたんだと思うんです。」

「そういう言い方をする先輩ってもしかしたら、島倉校長先生か?」

「えっ、堀川先生もご存じなんですか?」

「俺もとても世話になったというか、刺激を与えてもらった。一緒に務めたことはないんだが研修団体で、若手の時に同じ採用年の連中と島倉先生をお呼びしていろいろと話をお聞きしたよ。毎回、後頭部をぶん殴られて目に貼り付けていたウロコがバーンとはじけ飛んでいくようだった。」

「いや、俺もまだ若い方だと思っているんですけど、確かに研修では刺激を受けますね。校内研修も頑張ってはいるんだけど、身銭を切って貴重な土日や忙しい夜をわざわざ潰す研修団体の研修に比べると限界を感じますよね。時短は分かるんだけど、上っ面をでるのが精一杯。」

「若いやつらほど必要な時間だと思うんだけど、今、研修に団体に入って自らをきたえようって者が少なくなったよな。」

「昔があまりにも厳しすぎたってのもあるんでしょうけど。まあ、先輩に誘われて何も考えずに会に入って、途中嫌だって思うこともあったけど・・・今振り返ってみるとどれだけ血となり肉となっていたか。」

「確かに『教員』は増えたな。教育基本法のように人格の完成をめざすというよりは、一定のマニュアルに従って淡々と『業務』に取り組むみたいな。」

「そう言えば、大学時代の友達で今教員やってるやつがぼやいてましたっけ。子どもが大けがをしたっていうのに、キーボードをたたきながら近くにいた同僚をあごでしゃくって『現場を見てきて様子を報告してくれ』と教頭が言ってたって。そいつぶち切れてました。大企業の副社長じゃないんだから、大事な子ども、直接見に行けよって!」

「まあ、管理職がふらふら動くのはどうか知らんが、その話を聞く限りでは、『教員』であっても『先生』じゃぁねえな。」

「俺も分かります。管理職がふらふら動くなってこと。同僚の非違行為が明らかになったなんて時は中心が動いていてはダメですからね。周りに的確に指示を出して情報を集めると同時にへんなデマが出回らないように窓口を一本化する・・・ってやつですよね。」

「でもな、この場合ってそうじゃないんだろ。俺も管理職になろうと勉強をしているが、現場主義は基本だと思っている。その場数を踏んでこそ、『いざっ』って時に根を張ることが出来るんだ思う。むしろ、俺はその『いざっ』ていうときに動かないでいられるかの方が心配だ。」

「分かります(笑)『先生』ってそういうもんですよね。業務云々(ぎょうむうんぬん)じゃない。」

「でもなあ村上、そういう部分が自分たちの首をめただけじゃなくて、今の若い者で『先生』を目指している者にとっても首を絞めることにつながってもいる。業務以上のことを求められてもなぁ。」

「堀川先生、俺たちの業務って何なんでしょうね。線引きすることができないんじゃないですか。」

「子どもたちの人格の完成のためなら、全てだ。」

「ほぉらぁ、全く矛盾むじゅんの固まりですよ!」

村上はこりゃたまらんって感じでにやけている。

「俺たちの職業は『教員』だ。でも、やってる仕事は『先生』なんだよ。仕事まで『教員』にするか、それは俺たちが口に出せることの限界を超えたところになっちゃった。俺たちの方が考え方を変える時にきたんだろうな。」

「確かに昔のままじゃダメですよね。どうバランスをとるか、管理職の手腕が問われますよ。先生、管理職試験の熱い夏が追い込みに入ってますよ!」

「あちゃ~、せっかくふたをしておいたのに!こらっ、村上!」


結局、mugi_LEOは市立図書館で読書感想文コンクールの課題図書2冊が借りられずにいたので、昔書き始めた章を直しました。夏休みももうおしまい。お子様達は宿題終わったかな?読書感想文を主題や自由課題にしている学校はけっこうあるみたいですね。

(おっと、図書館で本日課題図書が返却されたらしい!借りてこなくっちゃ。2冊ともけっこう厚い本だから、時間的に厳しいなぁ)


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