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第28章 食べ下手(7)~クライマックスへ~

「わたしは食べるのが下手」の読書会もいよいよクライマックス?

「美味しい」ってどういうことだろう?確かに味覚に「美味しい」というものはない。

由美子と通子は話し合っていくうちにどう解釈していくんだろうか?


第28章 食べ下手(7)~クライマックスへ~




いろいろあって週が変わった。久しぶりに通子が放課後の読書会に加わった。いや、読書会は開けなかったから、久しぶりの読書会が行われたって方が正しいか。図書室。他には誰もいない。


通子が158ページをめくる。『綺麗だ-咲子-』・・・この章である。視点は咲子。咲子の目を通してが中心となる。

「陰陽師(橘川先生)にそそのかされた給食改革で、献立を考え、作ってみようってことになって、三人で作ることになったのね。チョー進歩。」

「しかも、咲子さん家のキッチンで作るのね。」

「咲子もきっと今の生活をなんとかしたかったんだよね。ほこりのかぶっているキッチンでも変われるチャンスになるって。140ページから150ページ台に書いてある咲子の様子や気持ち、私でも読めば分かる。自分でもなんとかしたいんだよね。ん。それで、土曜日にみんなでスーパーに集合して、食材を買い込んで・・・ってことになった。でもスーパーで咲子、過食のためのパンに目がいく。『い、嫌だ。今日はちゃんとご飯を食べたい。吐かないでいたい』・・・でも意識が薄れ、いつの間にかパンに手を伸ばしている咲子!一人だったら絶体絶命!」

通子が両こぶしを握りしめる。そして、ギュッと突き出す。

「でも、葵が止めるんだよね!・・・仲間ってやっぱりいい!!良きものじゃ!」

「通子、興奮する時の乱高下、ジェットコースター並だよね。」

「いや、由美子の兄貴風に言うならF-15(※航空自衛隊の主力戦闘機)のハイレートクライム並と言って欲しい。5Gオーバーじゃ!フジヤマジェットコスーターの3.5Gなんて軽いモンじゃ!(石川県の空自の小松基地、お祭り、すごかった!)」

「いつから飛行機オタクになった?」



「ラマワティちゃんも一般のスーパーだからハラールのものじゃないけど購入している。結構 ゆるいんだ。そう言えば『豚肉は食べられなくて(可愛そう)』みたいな雰囲気になったとき、『食べられないんじゃない、食べたくないの』『みんなも(食べることは可能だけど)犬の肉は食べたくないでしょ』って言ってたっけ。ヒット!分かりやすかったけど、これってラマワティちゃんにとっては食べたくないもの以外は結構大丈夫ってことね。」

「イスラム教って日本にはあまり馴染みがなかったけど、グローバルな世の中になってちょっとムスリムの方って増えてきたよね。礼拝が一日のうちにたくさんあったり、ラマダンとか日本の社会とは違う戒律があってたいへんだと思ってたけど、意外かも。さて、咲子さん、葵さんに止められてよかったね。良い方向にいくといいんだけど。」

「で、スーパーを出たところで、コッペに出会う。」

「これも作者のみょうね!起承転結の『転』ってところね。」

「いつも食い意地のはったちょっとヤナやつ的だったのが、腹をすかした弟にごねられ、見るに見かねた三人がコッペに『お菓子を買う?』『俺金ないし』『おごろうか』『ほどこしならいらない』・・・コッペってカッコいいじゃん!軽いヤツと思ってたけど、そうじゃない。で、この弟、修平くんっていうんだっけ。なぜか咲子を気に入るのね。(咲子さんて美人みたいだから。男って小さい子まで綺麗なおねーさん好きなのかな。私も綺麗な通子さまだけど、中味でも(!)勝負よ♡)」

「咲子さん、つっぱってるけど優しいよね。家までいっしょに送ってあげるって。作者のこの展開も好きな部分だなぁ。」

「由美子って、へんな視点で作品見るよね。作家になったほうがいいんとちゃう?」

「で、コッペくん、あ、移っちゃった。まあいいか、コッペくんの家ってすごいボロアパートで狭いし雑然としていて、咲子さん家の広くて豪華でシャンデリアとワインがいかにも似合う豪邸とは対象的なのね。『舌切りすずめ』のおじいさんとおばあさんみたいに対象的に描かれているの。」

「(あのねぇ、やっぱ君、変)まあ、そうだけど。出てきたお母さんも対象的、雰囲気も対象的だ。」

常套手段じょうとうしゅだんよね、この(対比的な)描き方!」

「(やっぱ『大造じいさん事件(※前作参照)』だわ。感動する視点というか、こいつ親友ながら改めて変なやつ。陰陽師(=橘川先生)っぽくもある)そう、咲子のママと違ってすっぴんだし、しわだらけだし、髪も手入れしてない。子どもたちはガリガリなのにふっくら・・・。でっぷりとみっともなくぶよぶよの贅肉ぜいにくで出来たお腹。咲子が一番恐れるもの!・・・ところがコッペのお母さんは触らせてくれた。それは今まで考えていたものではないっ!」

由美子はテーブルの上に両手で頬づえをして幸せそうに通子に続いた。

「赤ちゃん。」

「私もこの後の表現、好き!いい!『指先から流れ込んでくる、なんかよくわかんないけど、神々(こうごう)しいもの 命。命だ。そう思ったとたん、あたしの心臓が、どくどくなり始めた。』この表現ちゅき♡ちゅきすぎる。」

「あ、ちなみに『命。命だ。』の前後に空白行が入るからね。これ、大事よ!このがとっても生きてるの。『命。命だ。』をきわ立たせているでしょ!」

「まあ、表現方法はそれでよしとして、ここってうるうるってくる場面だよね。咲子も『 目じりに何本もしわが寄っていてお世辞にも若くは見えない。だけど。綺麗だ。気が付けばあたしは涙をボロボロ流していた』 て、普通読んでる人も涙腺崩壊・・・でも、表現にこだわる由美子か~い。」

・・・・・?見ると由美子も表情は変えず、目からも鼻からも涙。由美子もめっちゃ涙ながしながら、表現のことを話題にしてるわ。

「何かとっても大切なものを忘れていたのが、ここで改めて考えさせられるの。そのために対比的な文章表現って大切になる・・・それって何かな、改めて考えなければならないものって!」

「ぼろは着てても心の錦~、どんな花より綺麗だぜぇ~。」

「?それ、歌?」

「水前寺清子の『いっぽんどっこのうた』!ひい爺ちゃんのお気に入り!うわべだけじゃないんだよ。中味が大事!ってこと。」

「で、その中味ってな~に?」

「『心よ、心!』」

「心ってどんな心?」

「どんな心って・・・錦よ、錦の心」

「ますます分かんなくなってきちゃった。」

「外見だけどんなに整えてもダメってこと。魂が入ってないんじゃ違うってこと。」

「魂?仏像を彫っても魂を入れないとただの木や石の彫刻って事?つまり、生きてない?」

「いや、仏像が生きてるわけないけど、う~ん何というか、その仏像をみんなが大切に思うじゃない、そういうこと。心がこもってるんだなぁ~。それが大事なんだよ。」

「ソフビ(のウルトラマンなんか)も心をこめたらそうなるのかな?」

「それは由美子に任せる。もう!」

でも、通子はゆったりとした優しい表情のまま続けた。

「173ページから読んで!咲子がね、おばさんに頭をでられ、『その指先から柔らかく温かくて優しいものがあたしの中にきらきら雪崩れてきて、空っぽのお腹を満たす。いきなり暗いトンネルを抜けていた』って書いてあるけど、これよこれ!」

「心。柔らかく温かくて優しいもの。咲子さんずっと求めていたもの・・・ね?」

「暗いトンネルを抜けて、『価値観の大変換』が起こった咲子がこのとき、どうしても言わなきゃいけないと思ったこと。『おばさん、綺麗。』そう、お世辞でもなんでもない、上っ面だけの軽い表面だけの『綺麗』じゃなくて、本物というか、中味の詰まった綺麗なんだと思う、咲子のこの言葉!飾り立てて作られるうわべだけの綺麗さじゃない、心のそこから湧き出るものね!気付いた咲子、『治りたい』ってまるで種が発芽し、地面を突き破ったように変わったね。」

「その表現好き。でね、今度はコッペくんが(真逆の)咲子さんの家にいくって話になるのも、お話の構成としては面白いよね。今度はコッペくんの視点かなと思ったら、葵さんの視点からだった。」

「いや~咲子んちって豪邸。(通子さまの)家もけっこう豪邸かと思っていたけど、こりゃ桁が違うわ。お城だわ、城。台所にはワイン専用の冷蔵庫まであるなんて。住宅展示場だってこれほど豪華で広くないわ。でも、住宅展示場のキッチンって見本だからふつうに調理出来ないんだって。咲子も・・・キッチン使ってない」

「ふ~ん。私の家はおじいちゃんの時代からの古い木造住宅で、狭い。座ってても手を伸ばせば何でも取ることができて便利。耐震工事と断熱工事は最新の技術を使って補強したって聞いている。狭いけど、不自由はないな。スペースはフル活用出来てる。そういう意味じゃコッペ君ちみたい。咲子さん、もったいない。」

「由美子も夕食や朝食の手伝いするじゃん。さすがにコッペんとこみたいにフルで作ってないけど。」

「でもお母さんといっしょにご飯を作るって楽しいよ。通子んとこもいっしょに作ること多いよね。」

「それは私は女性の鏡で男子の憧れだから、料理の一つや二つ。男の心をつかむより、男の胃袋をつかんだ方が勝ち。ああ、あ。でも村上ちゃんの胃袋はつかめない!」

「・・・」

「でも、コッペが逆にしっかりと彼女らの胃袋をつかんじゃうんだよね。ワイワイ言いながら作るって楽しい!調理実習ん時もそうだから。男のくせに料理が得意なんて、尊敬しちゃう!」

「みちこ、『男のくせに』はないでしょ。」

「あっ、つい女を意識したら、男も意識してしまった!不覚!今までの偏見って、なかなか抜けないもんだなぁ。」

「実は私もまだまだあるんだ。気付いたら注意してね。」

「あいよ!でね、料理が続くんだけど、コッペもラマワティちゃんも料理上手なの。対して葵も下手。お母さんが危ないからってやらせてくれないんだって。咲子曰く、『カホゴ』・・・私もそう思う。スパイファミリーでヨルさんが料理を作りたくて知り合いのおうちに修行にいくんだけど、手には絆創膏ばんそうこうだらけ。私も最初結構やっちゃってたな。」

「それ(スパイファミリー)ってマンガ?」

「結構話題になったマンガだよ。アニメも良かった。」

「作る立場になってみるとその楽しさや難しさに気付くんだよね。そして、出来上がってみると、バランスが悪かったり、栄養にかたよりがあったり、あらためて給食のすごさに気付く・・・。まあ、順当な展開ね。」

「由美子の作る料理ってフーフーして食べなくていいだろう?」

「?」

「『さめてる』ってこと。(でもさっきは涙と鼻水でひどい顔だったけど?)」

「皮肉なのは分かってる。けど、頭が痛いときにはつま先を思い切りぶつけるの。するとつま先が痛くて頭の痛さは忘れるの。」

「?んな、ばかな。(物語にのめり込むと危険だから、物語の形式や表現に意図的に意識を向けたっテカ?)」

「葵さんもお母さんに気をつかうばかりじゃなくて、自分でつくればいいんだって気付くしね。そしてみんなで食べようとしても葵さんてやっぱり食べられなくて、でもみんなと一緒にいたいからと一緒に食事するんだよね。そして。」

「おいしいってなんだろうっていう食の命題に思いをはせる・・・。当たり前のようだけど、確かになんだろ。あれだけ連発する言葉なのに、今まであんまり考えたこと、なかった。」

通子が立ち上がり、思いっきり『のび』をする。両腕を挙げるのだが、右手が先に延びていき、身体が左に傾いていく。腕が伸びきる。そして、ど~んと椅子に座り直す。

「葵とコッペの二人で帰ることになるんだけど、コッペんちって生活厳しいんだよね。コッペがカミングアウト。料理はコッペの役割だし、満足な食事がとれないほど生活が厳しい家庭なんだって。だからいっつもお腹すかしてガツガツ、いや、表現がちょっと違うな、いやしい感じじゃなくて、もろ食べられないんだよ。(物があっても食べられないんじゃなくて、本当に物がないから、食べられないんだ!それでどうしようもないとき、保健室でこっそり食べ物を分けてもらう・・・)給食で生きてきたっていう人がいるけど、コッペってホントに給食がないと困るんだ。」

「そう言えば、食事が満足にとれない貧困家庭も増えてきてるってニュースでも言ってた。」

「それで『給食の無償化』か・・・。私は反対だけどなぁ。」

「私も反対・・・かな。それはなんでもかんでもタダの方がよさそうだけど、平均にばらまくよりは、このコッペくんちみたいに困っている家庭にその分手厚く支援をしたほうがいいと思う。もし、それで予算が余れば、村上先生が口癖のようにいつも言ってる学校に人を増やして欲しい。」

「『米百俵』の話を知る県民としては、まあ、それが当然の考えだよな。無償化は反対だけど、給食はなくして欲しくないし、子どもの健康を考えたら給食は『食のお手本』だもんね。『給食でつながる命だってあるかもしれない』って葵は考え始めたけど、そんなきれい事じゃなくて、単純に学校生活で一番大切で楽しい!給食の時間がなったらいやだぁ~!!って感じ。」

「右に同じ。」



「で、その後なんだけど、この陰陽師こと橘川ちゃん、本当によく話を聞いてくれるんだ。しかも、否定しない。自然体なんだ。だから余計な緊張もなく、ありのまま・・・つまりつらくてもだいたいみんなそうだから、そのままでいいみたいな。いい先生だよ。栄養士としてあれだけストイックなのに、『たかが食事です』って。ぴ~んと張り詰めていた筋肉がふにゃっとなって橘川ちゃんの腕の中に倒れていきそう。」

「通子ったら陰陽師は卒業しても今度は橘川先生も『~ちゃん』付けになっちゃったね。」

「格が上がった?親密度が上がった?えへ♡」



「三人の給食改革もクラスのみんなの意見を聞く。困っている人は自分たちだけじゃないかもしれないから大勢の意見も聞く。良いことだよね。でも、ダッサーとかダルいとかってあざける人もいるんだ。でも『お前らが困ってないからといって、困っている人馬鹿にすんな!』って啖呵たんか切る咲子さん、こういうところすごい。」


しばらく真剣に読みふける。


「『明日死ぬなら』『美味しいということ』『わたし食べるのが下手』って章が続く・・・いよいよ起承転結の『結』だね。」

「私には『転』にもみえるんだけど。」

「私はやっぱり、『結』かな。変化のきっかけを経て、この章でどうまとめたかが問われているから。その意味で結構大きな事件をぶつけてきた作者。コッペくんのお母さんを見舞いにいくため、いっしょに出かけた四人。台風と遭難、命の瀬戸際(まあ、ちょっと大袈裟かもしれないけど)そんな究極の条件の中で、何を考え、どう振る舞うようになってきたのか。ここがクライマックスなんだと思う。」

「まあ、みんな大きく変わるけど、顕微鏡でのぞいていてボヤってしていたものが、ぐるぐるやってるうちにピントが徐々に合っていき、はっきり見えるようになった・・・そんな感じ。」

「通子って時々、感心するような表現するよね。それ素敵。」

「まあ、通子さまわね。(ウインク!)」


「なぞるように本を読んできたけど、章のタイトルにもある通り、『美味しいということ』ってテーマにしてみたい!通子どう思う?」

「いや、もちなんだけど。この話では台風で避難し、非難した人たちで炊き出しを始めるんだけど、やっぱ、究極の条件の中で考えた方が、こういうこと(主題?)ってより鮮明になるのかな。」

「まあ、作者はそれを考えてシチュエーションを工夫していらっしゃるんだと思うけど。日常の中にもいろいろなシチュエーションがあるから。」

ちらっと図書室の壁にある時計を横目で眺めながら由美子が言った。通子は少々興奮気味に続けている。物語もこの話の読書会もいかにもクライマックスらしい。


「炊き出しで最初に出てきた紙コップの味噌汁。葵も炊き出しのおばさんに『みんなで同じものを食べると一緒に頑張ろうって気持ちになるものよね』と言われ、食べるということが死なない=生命維持のためだけじゃないって改めて考える。何なんだろう。『人は生きるために食べる。でもそれだけじゃない。みんなで力を合わせるために分け合って食べる。それは味とか栄養とかを超えた、何か特別な価値をもつ営み』、それは葵がこの状況を通して出した結論なんだと思う。」

「何か特別な価値をもつ営みって?」

「何かって何かな?」

通子があごに手をやり、頭をかしげて真剣に考える。

「この後、心配した先生と保護者が避難先に駆けつけるんだけど、心配させたことでお説教を始めようとする朝野先生を押さえて、炊き出し(差し入れ?)のおにぎりを差し出す橘川先生。そのおにぎりさえ躊躇ちゅうちょする二人にむかって陰陽師はさっきのように『たかが食事です』っていなすんだよね。う~ん。」

(ゆ:通子ったら、探偵みたい。推理小説じゃないんだから(にこっ))

「ここってヒントにならない?231ページ。」

「『三人でご飯食べるの久しぶりだね。私はそのとき生まれて初めて心の底から美味しいって思った。美味しいっていうのは、きっと、生きていたいってことなんだ。(行が変えてある!)だって美味しい味なんて存在しない。』・・・ここ?葵ちゃんのモロ、結論じゃん!」

「そう。葵さんの出した結論だよね。大川さんが葵さんを通して主張したかったことのひとつだと思う。そして、私も実は『美味しい味』なんて存在しないのに、どうして?と思っていたの。味って甘い、しょっぱい、苦い、酸っぱい、うまい、それらそれぞれ甘味、塩味、苦味、酸味、うま味っていう5つの味覚なんだけど。」

「ちっと待った由美子、それ、私の大好きな辛みが抜けてたようなんだけど。」

「うん。あれって味覚というよりは痛覚なんだって。そのほか渋みなんかもあるし、ほかの味覚も研究されているらしい。でも、なんか一番使う『美味しい』って味はないの。長崎さんにも外国で美味しいって表現あるかって聞いて見たら、『うまい』じゃなくて『美味しい』のこと?」

「おう、あの空手の高校生。」

「確かに『うまい』と『美味しい』は当然のようによく使うし、同じ意味かと思っていた。でも、広幸さんも『そう言えば、あんま考えたことなかったな。確かに、うまいと美味しいは外国でも使い分けられていることがあるな・・・』って。」

「うん。なるほど。」

「ここにメモがあるんだけど。この前空手の練習でお会いしたときに聞いてみたの。」

---メモ---

【美味しい】

英語では”deliciousデリシャス”、フランス語”délicieuxデリシオン”、ドイツ語”leckerレーカー”、イタリア語”deliziosoデリッチォーゾ※ちなみに『楽しい』”、スペイン語”deliciosoデリシオッソ”、アラビア語”لذيذ(デリシオン)”、韓国語では”맛있는(マシヌン)”、ロシア語”вкусный(フクォースニイ)”、中国語”可口的クゥコォダ”」

【うまい】

英語では”good・nice・fineグッド・ナイス・ファイン”、フランス語”bienビアン”、ドイツ語”Gutグーツ”、イタリア語”Beneベネ※ちなみに『楽しい』”、スペイン語”bienビエン”、アラビア語”جيد(ジェイィドン)”、韓国語では”잘하다(チャラダ)”、ロシア語”хороший(ハローシィ)”、中国語”好吃・好的ハオチー・ハオダ”」

------

「まあ、外国でもあまり区別はないみたい。それぞれの国によってニュアンスや使われるシチュエーションが違うから、一概には言えないんだけど、『うまい』てことが中心みたいね。葵さんの言う『生きていたい』というほどの重みはなくて『うん』と『はい』程度の違いかも。『良い味だね』と『大変美味でございました』みたいなラフとフォーマル的な・・・。」


その時、図書室の扉が開いて見覚えのある顔がのぞいた。

「あ、村上先生!」

「おい、お前たち。時計見てみろ、下校時刻過ぎてるぞ!熱心なことはとても良いことだが、世の中にはルールというのもある。」

「あ、村上ちゃん!いいところに来た!ちょっとこっち来て。」

「はぁ?」

「いいところなの!物語のクライマックス!で、私たち『美味しいということ』について考えていて、あっこれね、物語の結論、つまり主題じゃないかなってことなんだけど、これが『何か特別な価値をもつ営み』だってことになって、さらにそれは『きっと、生きていたいってことなんだ』ってことになって、でも、どちらもよく使う『うまい』と『美味しい』という言葉なんだけど、味覚にはない『美味しい』って何が違うんだろうってまた疑問になってきちゃったの?教えて!」

「通子、よくそれだけ一文を長く話したな。作文じゃバツだ!」

「バツは何するのぉ~?パンツ下げてお尻ペンペン?それセクハラよ。」

「あのなぁ。」

「で、うまいと美味しいって違うの?」

「んー。前にも話したが、日本語って口語と文語があったって言ったよな。その文語のころだ。『いし』と『うまし』という言葉あった。『いし』とは良いって意味で女性が食べ物に関する言葉として使っていたとされる。ただ良いは形容詞なので「い」で終わる。熱い(あつイ)とか優しい(やさシイ)とかと同じように『いしい』となる。対して『うまし』も素晴らしいとかの意味を持つ言葉で同様に『うまい』となるが、これは今でも食べ物以外にも使われるだろ?『君、野球がうまいね』なんてね。でも食べ物に関してはお酒に使われることが多かったから男性の言葉として使われるようになったらしい。なに?『おいしい』の『お』か?女性らしく丁寧な言い方をしたから『お・いしい』となったらしい。(同志社大学の文献をネットで見たことがある)」

「村上ちゃんのフェイクでしょ!モロウソっぽい!」

「どうとでもとれ。で、ちなみにうま味が味覚に加わったのは20世紀の初めころ日本人の確か・・・池田さん?・・・が昆布から出汁の成分(グルタミン酸)を抽出し、UMAMIの一つとして銘々したことから始まる。まあ、それが認められるのは100年も経過して舌の先にそれを感じる部分(受容体)が発見されたからなんだ。成分は商品化され、お味噌汁や漬物、煮物なんかに手軽(手間暇かけて昆布などの出汁をとる手間)にうま味を加えることができるようになった。”Eat Well, Live Well.”ってCMくらい聞いたことがあるだろう?」

由美子が目だけギリギリ端に寄せて時計を確認する。目の端が点。ちょっと怖い。

「ありぁ、やられた。最近ペースに引き込むよりも引き込まれる方が多くなったか!おい、退校時刻!続きは後日だ。急いで支度しろ!もう!」

「最近、村上ちゃん、チョロくなってきたね。」

「もう通子ったら(笑)・・・(でも尻切れトンボね。また話し合いやんなくっちゃ!)」


中学校の全国青少年読書感想運コンクール課題図書『わたしは食べるのが下手』(天川栄人著 小峰書店ISBN 978-4-338-28728-9)ですが、夏休みにも入りましたし、ぜひ皆さんも読書に挑戦してみてください。そして、誰かと感想を話し合ってみてください。そして、このお話からどんどん世界を広げ発展させてみてください。

ちなみに外国語が出てきますが、グーグル翻訳ですから、標準的な表現でない場合もあります。ネットで出回る情報は基本的に信じてはいけません。

それでは。

(※前書きと後書きをUPし忘れておりました)


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