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第20章 ぼくの色、見つけた!(2)=感想文を書くって孤独じゃないよ

『ぼくの色、見つけた!』(志津栄子 作)を読み始めた由美子と通子。読書会は続きます。

読書感想文は目的かもしれないけど、複数で読む醍醐味って有りだと思います。

(きっと由美子は深層心理の中で読書会の方が目的になっていたのかも)


第20章 ぼくの色、見つけた!(2)=感想文を書くって孤独じゃないよ




「ねえ、由美子。『ぼくの色、見つけた!』の感想文の題ってやっぱり「ぼくの色、見つけたを読んで」ってなる・・・よね?」

「懐かしい。低学年の頃はそう書いていたね。」

「やっぱ、違うんかい!で、なんて書けば良いの?」

「それこそ人によって違うけど、私なら村上先生が言っていた『主題』に関連したものにするかなぁ。それか『キーワード』で。」

「主題か。『ララを探しに旅立ち』ってか。本にはララって大切なもの(の象徴)とは書いてあるけど、それってありきたりだけど自分探しの旅だよね。信太朗には虹を見た時に区別できない色はあるけど、例えば新緑から黒板(黒板と言いつつ深緑だもんね)のように緑といっても微妙に細かく色を見分けることができることに気付いたぼく=信太朗はそんな自分を見つけて自分の良さを見つけるのね。それが信太朗にとっての『ララ』なんだ。」

「いいね。信太朗がララを見つけたことで、信太朗のために一度自分たちの夢を置き去りにしてきたお父さんとお母さんだけど、二人も再びララを探し始めることになるのね。ララって何かな。自分のこと?いや夢かな。信太朗にとっても夢の入り口が見つかったってことだもんね。」

「これはどう?『5色の虹は何万色?』てか、ん~やっぱり何万色ってデジタル的に区別しようとしている。でも、色ってアナログなんだよね。つまり、連続量。無限の世界。う~ん、でも『無限』っていい言葉ね。虹を7色に限定するなんてもったいない。同じ色でもちょっとずつ違ってたくさんの色がある。今まで見えなかった何千万色もの色、いや無限の色に気付いた、つまり固定観念を打ち破ったときの景色って素晴らしい・・・この題名ならそんな感想かな。」

「友情も大きなテーマだよね。普段の何気ない言葉で、自分でカラを作っちゃって、でもだんだん相手を理解しているようになって、なんか最後は親友みたいになっていく。本当は違うのに自分の都合でカラを作っちゃうことって、けっこうあるよね。」

「いや、通子はないでしょ。」

「もうまた!由美子ったら。ナチュラルにディスるし。」

「ディスってないよ。みんなにそんなに自然にこころ開ける通子ってうらやましい。」

「いや、ちょっと前まではみんなに壁を作ってカラに閉じこもっているタイプだった。5年生になってあんたといっしょになってから、私、ずいぶん変わった・・・。なんでかな?」

「そう言われてみればそうかも。はじめの頃は誰からも一定の距離をおいてそれ以上交わらない感じを出しまくっているような子だった・・・かも。どちらかというと冷めていて、あんまり踏み込んだり踏み込まれたりすることをよしとしないというか・・・。」

「やっぱりディスってるでしょ。それが今や他人の家に上がり込んで堂々と冷蔵庫を開けて麦茶を飲むようなやつになってるって。」

「その表現いいね!」

「ほらぁ、やっぱりディスってるぅ!」

「でね、」

「『でね、』かぁ、君はやっぱり我が道をいくタイプね。(話題をさらって変える・・)で?」

「今度は好きな?というか、気になる場面とか表現を探してみない?授業中みたいに。」

「オッケー!72ページね。」

「通子、早い!」

「ところで前半はスルー?」

「まあ、だらだらって感じで。で72ページの『本人が気にしているだけで、まわりのの人はなんとも思わないことって、案外あるのかも』って郁人くんの言葉。ちょっとドキってしちゃったから。」

「何が?」

「私って習い事も、大変だけど、たくさんやらせてもらってるし、お部屋のコンピュータだって最新のCPUとグラフィックボード積んでるし、大人でもこんなのそうそう持ってないと思う。小学生にしちゃ恵まれすぎちゃっているんじゃないかって。確かに家は豊かでブランドものの服も普段着になってる。いっつも『お高くとまってる』って観られているんじゃないかって・・・。」

「ふ~ん、通子ってそんなこと気にしてるんだ。別に通子だからいいんじゃない?私は私でいっつも兄のお古だけど、別に気にしてないし。パソコンだってお古だけど、そこそこ動くから別にいいし。しかも村上学級だったらなおさらでしょ。」

「おっ、我が道由美子!ちったあ気にしなよ。う~んでも、由美子の服はいつも洗い立てで小綺麗、こざっぱりしているし。由美子にすごく似合っているし、ん~、ちょっとディスり返してやりたかったけど、ちょっと無理かぁ。」

「88ページ。信太朗がおばあちゃんちの屋根裏部屋でドラムセットを見つけて母親やおばさんのことをおばあちゃんに聞くシーンがあるんだけど、そこでおばあちゃんが話してくれるの。『ここにあるのは娘たちの夢のぬけがらよ。和美も雅美もララを探していたのよ。』(略)『・・・ララを見つけたら人生が豊かになるのよ。生きていくのに必要な芯みたいなものかね。これがあるから私は大丈夫って思えるのよ。雅美ったら、今は信ちゃんの母ひとすじだって。』う~ん。ちょっと違うところがあるけど、うちとなんか似ているところがあるの。だから気になって。」

「似てるところ?」

「うん。うちの父も大きな工場で働いていて飛行機を作るって夢があったの。ところがおじいさんが倒れてその工場を引き継ぐことになった。母も教員を辞めて工場を手伝うことになって・・・。『いくら探しても見つけられないこともあると思うわ。だから本物のララを見つけられたらきっと幸せね。』本物のララ・・・・そう、父は今再び本物のララに向かい合っているのかも。見つけられないと思ってたかもしれないララをね。」

「新しい工場を建設しているんだものね。しかもヒコーキの。」

「正確には新型ドローンだけどね。でも、母はまだ由美子ひとすじかな。」

「なんか、うらやましい気持ちが出てきた。まあ、いっか。さて、驚きの98ページ。『ゴッホは色覚障がいだったんじゃないかという説があるんだ。』っておじいちゃんがゴッホの画集を見てつぶやくシーンがあるんだけど。ゴッホのことは知っているけど、そんなこと、初めて聞いた。なんか病気だったらしいということは聞いていて、そのために自分の耳を切ってしまうんでしょ。(オェ、さすがにそれはちょっと無理)」

「図書室にパソコンがあるけど、調べてみる?」

「でも、インターネットにはつながらないでしょ?」

「あっ確かに。」

通子はしばらく腕組んで考えていたけど、おもむろに図書カウンターの下に潜り込んだ。

「ゲット!やっぱりね。図書室のパソコンって本の紹介をしたり、イラストを印刷したり、本の値段を調べたりするから、絶対インターネットにつながるはず。まあ、図書司書の先生はこんな隠し方はしないけど、この前堀川先生が使ってたから、もしかして・・・と思ったら、確信犯的なビンゴ!カウンターの下にポストイットなんて、いかにも堀川先生らしい・・・。」

「ちょっと、通子、それまずいんじゃない?」

「怪しいサイトに接続するわけじゃないし、正当な調べ物だからいいでしょう。(うん、さすが我ながら通子!)」

(もう、それって犯罪でしょ!ネットの怖さに一番懲りてないのが通子じゃん、もう!)

「大丈夫。由美子も共犯だから。」

額に手をやり、天を仰ぐ由美子だが、液晶ディスプレイの青から白に変わった光を浴びて、思わず画面に目がいく。

『ゴッホの本当のすごさを知った日』その文字が目に飛び込んでくる。

「『ゴッホの本当のすごさを知った日』って?北海道カラーユニバーサルデザイン機構(北海道CUDO)?」

ふたりで記事を読んでいく。

「えっ何なに?色覚体験ルームでゴッホの絵を見た!」

「『色のシュミュレータ』ってアプリもあるんだ。」

「いや、それだけじゃなくて見て!オリジナルとそれで加工した絵が出ている!『星明かりの夜』すごい!!」

「ゴッホが見ていたオリジナルはこっちね!逆なんだ。ほんとに星明かりの中にいるみたい!!きれい・・・。」

「でも、こっちの見慣れているいう方がとんでもないような色が入っていて、なんかインパクトが強くて面白いし、ゴッホらしいって感じもする。」

「そうだね。大胆な感じが色のシミュレーターを通すと自然で繊細な感じの絵になるね。」

「ゴッホって『てんかん』っていう病気で『ジギタリス』っていう薬をもらっていたらしい。その薬って物が黄色っぽく見えちゃうらしい。」

「でもその黄色の代表作といっていい『ひまわり』、何点かあるみたいだけど、その薬の影響を受ける前に書かれたみたい。絵の具が厚く筆遣いそのままに盛られているみたいだから、なんか迫力が違う。ゴッホの絵って迫ってくるような迫力があるけど、このひまわりは迫力はあるのだけど落ち着いているように見える。」

「んー、確かにそう言われるとそうかも。信太朗が見ていた世界ってきっとこの本を読まなければ分からない世界だったけど、そんな世界があるんだって気付いた。印象に残った写真がある。褐色の肌をした女の人たちが赤いビキニを着て踊っているんだけど、色覚シミュレーターで見ると赤が茶色に見えてまるで裸のように見えてしまう。この写真が特に分かりやすかった。信太朗が書いた自画像を足立友行が『おまえ、チョコレートを食べたのかぁ』って言ったけど、知らなければ本当にそう言っちゃうよね。悪気はないんだけど。」

「でも信太朗にとっての唇はそれが真実だものね。お互いにとってそれぞれが真実なのになんか残念。でも、それぞれの真実が理解できれば、壁がなくなるどころか、友情さえ芽生える。知るってこと、理解するってことってとても大切なんだ。大勢の中にいちゃうとそれが真実でもコンプレックスとなってカラを閉じちゃう・・・それって世の中にたくさんあるんじゃないかって気がしてきた。」

「なるほど、世界ってやっぱりパラレルワードなんだ!そして、それでその知るっていう活動をしているのが、このCUDO、カラーユニバーサルデザイン機構なんだ。NPO法人ってある。」

「通子、調べてみて!」

「よし共犯者。調べるよ。NPO法人・・・特定非営利活動法人とは、非営利を目的とした活動を行う団体・・・で法人格を取得した団体。ムズい。でもね、この団体って『色のバリアフリー』活動みたいなことをしているみたい。『色覚多様性』ってことの周知活動をしている高校生もいるよ。実は全国で300万人以上の人が色の見え方が違っているともある。300万人って言えばうちらの県の人口よりも多い!」

「そう言えば、全部じゃ無いけど『こども食堂』でこのNPO法人っていうのもあった。確かにあれって、儲けようと思ってやってないよね。ということは、ボランティアの団体みたいなものかな。そういう方々がこのCUDOみたいにいろいろなことで社会のために取り組んでいるだね。」

「『NGO』なんてのもあるみたい。教科書の「下」になんかそんなんもあったような。いろいろな団体があるんだね。でもさ、こうやっていろいろな人たちが困っている人たちや支援が必要な人たちのために頑張っているのがあるのを知ると、なんかとっても幸せな気分になる。」

「そうだね。でも、私にはそんな余裕はないような気がする。」

「またぁ、彼らは自分を不幸だとは思ってないよ、きっと。ただ、世の中が不公平だらけなんだと思う。もっとも私は、その中で安穏あんのんと生きているからなんとも言えないけど。由美子だって一生懸命ださね。つまりは、それなりに大人になって力を付けてそこは頑張ることにしようよ。」

「ありがとう。今回もまとめたね。」



「いや、まとめはもう少し後。さて、145ページあたりから148ページあたりにかけて、いよいよ信太朗がね、ずっと心に重く引っかかってた友行コクるの。自画像の絵をチョコレート唇と言われた時の件。意を決して言い出したんだけど、友行があっさりと「ごめん」と謝ったんだよね。肩すかしというか、スルッと解決してしまったような場面が描かれている。友行には悪意の『あ』の文字もなかったんだってふっと重~い重~いものがすっと空に舞い上がり消えていく・・・。これって恋い焦がれて何日も眠れない日々を過ごしてやっと意を決して「付き合ってください!」って白馬の王子さまに90度に身体をねじ曲げて両手を差し出しお願いしたら『いいヨー!』ってチョー軽く返されたみたいな。」

「ああ、今までのあの重ーい心配はいったいなんだっただってね。ちなみに通子でもそんな少女漫画みたいなこと考えるんだ。ゴリゴリと攻めていく通子でも。」

「うー、由美子ったらまたディスってる!」

「村上先生への態度見てたら、誰でもそう思うんじゃない?」

「ぐしゅん。ゆびこのいじワル・・・ゥ。」

「でも通子、友情ってことなら、私たちみたいな場面もあって、友行くんて子、通子みたいだと思った。」

「どこ?もしかして208ページから211ページあたりでしょ。私もページ番号をメモした。まさか男勝りって言うんじゃないでしょうね、このゴスロリの女の子らし~い、通子ちゃんをつかまえて。」

「(笑)まさか。信太朗が『みどりのララ』を見つける作業に没頭して学校を休んでいたじゃない。ちょうどその一番大切な『みどりのララ』を見つけたころ、自転車で友行くんが通りかかるって場面。」

「ビンゴ!ここっていいよね。私も好きな場面。」

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 『どうした。三日も休んじゃって。』

 『ああ、ズル休みだよ。』

 『やるなあ、信太朗のくせに。』

 友行はうらやましそうにぼくを見た。

 『くせにって何だよ。あいかわらず口が悪いなあ。』

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「でも、信太朗は『もしかして、ばくのこと、心配して来てくれた?』って気付くのね。その後、『おつかいの途中、通りかかっただけさ。』というものの、自転車のかごは空っぽ、帰る方向は商店街と逆・・・。いいやつだぜ、友行は!」

「うん、通子って男勝りだね、やっぱり。」

「もう、由美子ったら、スキがあったらすぐディスる!!」

「でも、男の子に男勝りって表現は使わないよ。女の子だってしっかり認めていることになると思うんだけど。」

「ナチュラルにさらっとごまかすそういうところ、村上ちゃんにすっごく似てきてると思うんだけど。由美子、影響受けすぎ!」

「人生ってやっぱりすごいな。」

「どーんと飛躍!・・・で、何が?」

「信太朗くんのお父さんとお母さんって、スペインで活躍することを夢見ていたのね。でも、途中で信太朗君が生まれ、お母さんは夢を断念して信太朗くんを育てようと決意する。でも、お父さんには迷惑をかけないよう黙っている。それを知ったお父さんも夢をあきらめ日本に帰る。お母さんが迷惑をかけないよう黙っていたことがかえってお父さんの重荷になってね。とにかく生活するために仕事に就く訳なんだけど、心の奥底では夢をあきらめきれない。」

「信太朗がララを見つけたことがきっかけとなって、この家族にもういちど新たな旅が始まるのね。素敵!由美子が読書がやめられない、どはまりしている訳がよく分かる。」

「でも私は今までは本を読むだけだった。でも、読書感想文を書いてみないかと言われ、それを書くことが一人で黙々とやる作業じゃないんだって分かった時、私の新たな旅が始まったような気がする。村上先生に感謝だし、こうやって一緒に読書できる通子にも感謝だよ。」

「お、最後は由美子が手堅くまとめたね!」

『ぼくの色、見つけた!』(志津栄子 作)は本年度の課題図書であり、大人の私が書いてしまうと、きっと笑われるような内容になると思うので、恥ずかしくて昨年の『悪魔に魂を売った人々(架空の図書=実在しない)』のように実際の原稿をアップすることはないでしょう。

でも、由美子と通子の読書ってうらやましいなぁ。

ちなみに今、図書館お借りした(延長中)中学校の課題図書『わたしは食べるのが下手』を読んでいます。これも面白い!由美子と通子、これも読む予定です。

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