第1章 入学式準備と台湾侵攻?
中国の台湾侵攻、アメリカと日本はどうするんだろう?見たくないと言って思考停止はよくないんじゃないかなと思う。絶対に起こらないことかも知れないが、具体的なイメージをもっておくことは悪いことではないと思う。アメリカの国民性はそこらが長けているような気がしている。ちょっと物語から脱線・・・。
第1章入学式準備と台湾侵攻?
地震にしてはおかしい・・・。緊急地震速報なら、この後ゆれに備えろという情報が流れるはずだ。
村上が教卓脇のバックパックから急いでスマホを取り出す。国家的事故?
「台湾で軍事衝突。スクランブルで飛び立った台湾空軍のF16戦闘機が領空侵犯の中国軍戦闘機殲20と空中戦になり、双方共に撃墜された機体がある模様。アメリカ軍の戦闘機が離陸し、自衛隊の戦闘機も警戒監視のため離陸したもよう。」
いつの間にかみんなが村上の回りに輪を作っていっしょにスマホを覗き込んでいる。
「おい、みんな落ち着け。とりあえず大丈夫だ。」
「先生!戦争が起きるの?中国と台湾が戦争になったら、日本も巻き込まれるって父さんが言ってた!」
「まてまて。中国軍が侵攻を開始したのならもっと大規模な戦闘になっているはずだ。どうも、これは偶発的なものだな・・・。だから心配はするな、まだ。」
「でも、最初の偶発的な戦闘を口実に中国は戦争をしかけるんだって言ってた。」
「まてまてまて!誰も戦争なんか望んじゃいない。決めつけは良くないっていつも言ってるだろ。とにかく情報不足だし、今すぐどうなるという問題でもない。おそらく今は情報を集める段階で、外交での解決を模索するはずだ。」
「先生、怖い。ウクライナやガザのようになったらどうしよう。」
女子の数名は本当に怖がっている。
「まてって。私たちが騒いでもどうもならない。今のところ、日常的に全く問題ない。それよりも午後からは入学式準備だ。5年生以下は下校となるが、君たちは昼食をとって作業となる。弁当持ってきたか。」
「俺ハンバーガーとポテト!コーラなし!」
「あら、随分とジャンキーな。」
「俺、おにぎりだけ。」
「私、自分で作ってきた。卵焼きうまく出来た。」
(食い物の話になると、激変か。・・・大事なことだ。)
午後は入学式の準備だ。紅白幕を張り巡らし、来賓のテーブルを用意し白布をかぶせる。新1年生の小さな小さな椅子を綺麗に並べていく。
「うわっ、お尻はみ出している!」
女子の中にはそこに座ってみて改めて自分の成長を感じているのか、小さかった頃の自分を懐かしんでいるのか、椅子から離れない。
「真面目に動け~。」
教務主任の堀川先生が声をかける。でも、強制的に立ち去らせようとはしない。この感慨の時間も大切な時間なのだ。
村上先生はステージの入学式看板を上方に巻き上げている。通子がステージ下で見て声を出している。
「あ、そこそこ。ちょっと行き過ぎ!もうちょっと下げて。う~ん、そこよそこ!」
「通子、変な声出すな。ここでいいか。」
「ん、バッチしね。」
村上もステージから跳び降りて確認する。するとすぐに通子が村上の左腕にその両腕を巻き付けてぴったりとぶら下がる。
「よし、いいな。ちょうど良い感じだ。通子、重い。」
通子はさらに巻き付きぴったりとくっついて体重をかける。さすがの村上もぐらっと傾く。
「おい、通子。1~2年の子じゃ無いんだから、重い!それにちょっと(何かが)・・・。」
「ちょっと何?」
いじわるな目で村上を見上げる通子。
「大谷翔平(選手)のように肩を脱臼してしまうだろ。」
「先生のいじわる!」
通子はつま先で村上をちょっと蹴飛ばすと演壇の上のマイクにつけるリボンをとりにいった。
村上も通子の気持ちは感じている。だから今回はいっしょに看板の設置作業を手伝わせたのだ。つっけんどんにはしない。上手に距離を置きながらつき合ってあげようと思う。(『初恋』・・ツルゲーネフはさすがに俺は読んでない。さて、この後どうしたものか。)
通子がリボンを持ってくると、器用にマイクに結びつけた。その後職員席の一番前にあるスタンドマイクにもリボンを取り付けた。どちらも紅白のボタンの花のようなリボンだ。会場の紅白幕や花飾りは卒業式のままである。もっとも花は痛むので入れ替えは生花店が来てある程度入れ直す。早く終わった者から体育館の清掃にかかるが、これも手際よく終了だ。テーブルに白布をかける作業が一番手間なのだが、今は専用の器具があって簡単に白布がテーブルに固定出来るため、しわ一つ無い状況をあっという間に出来上がる。(昔は虫ピンやセロテープで行っていたのでとてもたいへんだったけど。)由美子は1年生の椅子を並べる係だったが、早く終わったので清掃に加わっていた。一応ロープを使い、椅子が一直線になるようにミリ単位で並べたのだが。これで6年生に予定されれていた作業は終了だ。教務主任の堀川がみんなを集めて座らせる。校長先生が来てお礼を述べてくれた。解散となると一斉にみんなが村上の回りに駆け寄る。
村上はみんなの目を見渡すとスマホを取り出して操作した。
「今のところ変わりはない。」
みんなの目つきが少し緩む。
「さて、みんなよく働いてくれたので、会場がとてもすっきりしたものになった。白布なんかまるでペンキを塗ったみたいにしわ一つない!すごいよ。みんな。明日の本番もよろしく頼む。1年はこれが初めての学校との出会いだ。第1印象がこれで決まる!」
「先生、それ、移行学級(お試し入学)の時も同じ言葉を聞いたような・・・。」
どっと笑いが出て、ちょっと雰囲気が和む。
「まあ、気合いを入れろということだ。みんな、信じてるぞ。今日はこれで解散にしよう。ご苦労さんでした。」
再びスマホに目をやる。(既に5時間近くが経過している。台中戦争となれば、台湾本土はもちろん、侵攻を許さないとしているアメリカや日本に対して、沖縄から九州や山口の米軍基地や自衛隊の基地へも先制攻撃を行う可能性がある。それを阻止するためのスクランブルが行われたはずだが、何も情報が上がらず、朝のままだ。他でも戦闘が行われれば何らかの動きがあっても不思議は無い。しかし、「ない」ということは戦争にはなっていないということか?政府の見解は、官房長官の記者会見は調査中ということと、台湾、中国双方に冷静に対処して欲しいと外務省を通じて申し入れたというニュースのみだ。)
由美子も家に着くと同時にテレビをつけた。チャンネルを各局回してみる。バラエティ型のニュース番組やNHKでは今朝のことでいろいろ専門家やキャスターが憶測を交えて解説を繰り広げていたが、他の局は通常の番組を放送しながら画面の一部をテロップにして今朝の情報を繰り返し流しているだけだった。父も母も通常の仕事を続けていた。兄はまだ学生だから何かあってもそう簡単に戦場に赴くことはないだろうが、ウクライナをみての通り、戦争が長引けばやがて兄も戦場に・・・。さんざん昨年夏、村上先生と話してきた戦争のこと。友達の何十倍もよく分かっているつもりだったのだけど、にわかに現実味を帯びてくると、いろいろな知識と感情が交差して背筋がぞっとしてきた。結局その日はそれ以上進展はなかった。
次の日の朝。ニュースは今回の戦闘が偶発的なものであり、それ以上の進展はないということが台湾からも中国からも報道されたという。領空侵犯については両国で違いがあるものの、台湾軍の発表では中国空軍機2機が数秒間の侵犯を繰り返し、三回目に台湾軍の戦闘機が近距離(機関砲の射程内)でロックオンしたところ、ロックオンのまま領空外へもつれ出て、それを中国軍の僚機が阻止しようとさらにロックオン。4機でもつれ合って近距離でロックオン合戦となり、台湾軍機と中国軍機の一機ずつが空中接触し、双方墜落したというのが真相だ・・・と台湾軍の報道官から説明があった。残りの2機で墜落機のパイロットを捜索したが、見つからなかったらしい。ガンカメラには衝突の瞬間の映像の一部が映っていたらしいが、距離があってはっきりしないものの、双方とも高度が低かったこともあり、脱出したような映像はなかったということだ。沈んだ機体が引き上げられるまで不明ということになる。当然だが、長引けば数ヶ月をかけた作業となるだろう。その間、逆に中国軍は動きを封じられる格好になるので、リスクは下がると思われる。まあ、中国は台湾機のロックオンについては重大な挑発行為だとしており、台湾への非難を強めているが、機関砲やミサイル等の兵器は使われておらず、いわばバーチャル攻撃であるロックオンのみであったこと。そして、何よりも双方の空中衝突で墜落していること(おまけにガンカメラの映像はJ20がF16に接触したように見える)で、不運な事故という決着となった・・ようだ。ただ、これがどちらが、または双方武器を使用しての撃墜であれば、事態はどうなったか分からない。
はっきりいって「ヤバさ」を知っている村上は、とりあえず今回の出来事が「今のところ」戦争に発展しなかったことに大きな安堵を覚えた。だが、もし、今回の事件が中国に確固たる口実を与えるようなことであったらと考えると、様々なシチュエーションを考えざるを得なかった。少なくとも中国は口実を探しに探しまくっていることだろう。村上は今晩眠りに落ちることはないだろう。
ベッドの上で頭だけがめまぐるしく回転している。もし、これを口実に台湾侵攻が始まっていたら。
まず、間違いなく実施される攻撃がサイバー攻撃だ。軍に対しても実施されるだろうが、民間でも電力関係や通信関係への攻撃が行われるであろう。レーダーや通信といった目や耳、口を使えなくし、指揮命令系統の分断を図るのはすでに常識だ。おそらくこれは日本に対しても行われるだろう。日本国内の米軍基地も日本の電力インフラに依存しているのは間違いない。米軍や日本の即応力をなくしておくことは初期作戦の成功に必須とも言える。もしかすると銀行やテレビ、インターネット(SNS・・)などにも攻撃をして社会の混乱を招き、国民を戦争騒ぎから遠ざけようとするかもしれない。同時またはその直後は間髪を入れずに台湾空軍基地への飽和ミサイル攻撃、上陸地点近くの陸軍部隊をたたく。そして上空に上がった戦闘機群、特にE-2k早期警戒機は必ず血祭りにあげる。航空優勢の確保がなされなければならない。アメリカ軍も準備は出来ているといっても議会や大統領の許可が出るまでにはそれなりに手続きが必要となる。アメリカや日本、韓国といった国が支援に回ってくるまでにいかに駒が進められるかは、その後の作戦を左右する。一度航空優勢が確保されてしまえば優秀なアメリカ空軍、海軍ともうかつに手出し出来なくなる。おまけにドローン技術は中国が数段上であり、バージョンアップした戦争のやり方では中国の方がどう考えても有利だ。後は政権の根絶やし・・・国外に追放でもよいが、逮捕してしまうことが一番良いだろう。確保した大手メディアを使い、後は既成事実をでっち上げるだけだ。香港のようにやればよい。
電撃作戦が成功すれば、アメリカや日本が手出しする暇は無い。しかし、アメリカの介入が間に合うとなると、話は難しくなる。ひとつの選択肢はアメリカ相手の戦闘を避け、大人しく引き下がるというものだ。もう一つの選択肢は、アメリカとの戦闘を覚悟し、早々に空母打撃群を叩くことだ。当然、限定的ながら核兵器が使用されるだろう。アメリカは世界世論を気にして核での反撃はしないという前提だ。投入できる戦力のほとんどをそがれた状態のアメリカは戦争の継続はしないだろう。遠くの知らない国のために命をかける必要は無いということだ。すると一気に中国が主導権を握ることになる。
広島・長崎以来のタブーだった核兵器が使用されたとなると日本もまた蜂の巣をつつかれたようになるだろう。一気に嫌戦ムードが爆発し、自国優先として簡単に台湾を手放すだろう。しかし、たとえここでアメリカが手を引いたとしても台湾を守るとしていた立場の日本はそれだけで敵対する国に変わりは無い。攻撃してくる口実は山のようにある。台湾から引くアメリカはフロントラインをそれ以上後退したくない。アメリカが必死で日本を守ろうとするだろうと考えるのは正しい。しかし、日本がなくなっても太平洋という広大な地勢は存在する。確かに中国は日本を支配できれば、太平洋も半分は自分のものになる。グアムやハワイまでは我が物顔が出来るようになるのだ。そこまで許したとしてもアメリカ本土は安泰であり、太平洋が半分になるだけの話なのだ。台湾を捕るということは太平洋の半分を手中にすることと等しいのだ。
アメリカが手を引き、台湾も中国と完全にひとつとなり、朝鮮半島も不安定な中、日本はどうするのか?太平洋艦隊(空母打撃軍)を戦術核で失い、アメリカは核を使わず日本を守れない・・・となったら。いや、中国の侵攻から守るなれば沖縄を含め日本全土、どこが戦場となってもおかしくない。いや、初戦では日本の基地のいくつかは先制攻撃を受けるのは間違いないだろう。一番は浜松基地だ。ここにはAWACS(早期警戒機)がいる。日米の目だ。この機が封じられたら、最新鋭のF35でさえも能力は半減してしまう。さらに(平和条約もなく休戦状態といった方があっている)ロシアや北朝鮮が参戦したら・・・。戦争を避けようと世論が一気に中国容認に傾いても不思議はない。日本そのものが問われる事態となる。日本の価値観っていったいなんなのか?
そういえば昨年の夏、由美子と話したことがよみがえってきてしまった。
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「私はそうとも考えられません。人間ってやっぱり自分の価値観を押し付けてしまいがちですし、イスラム原理主義の方々は、先生のおっしゃる通り、価値観が違うような気がするんです。私は女ですから、本を読むのも勉強するものやめさせられたら耐えらえない。」
「と言うことは、我々の価値観を守ってくれる集団を大切にしていくしかないということかな。」
「例えば祖国、日本の国ということですね。民族であり、文化であり、そこに暮らす実際の人々ということですね。なんか、国って考えてみたこともなかったけど、いったい何なんだろうと改めておもいました。」
「国、と言うものの真実は由美子の中にある。」
「はい。また、それですかと言いたいけど。」
(由美子の読書感想文 ~「悪魔に魂を売った人々」編~第10章 新しい戦争のかたち)
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やっぱり眠れない。
キュイーン、キュイーン。スマホのサイレン・・・あれは緊急地震速報をエリア毎に流してくれるスマホの各キャリアのサービスで、設定していないと鳴らないこともある。本来、このような場合はJアラート?ミサイル発射や航空攻撃ではないが、それに準ずるものとして例のウォ~ン・・ウォォ~ンというようなサイレンが鳴るかも知れない。また、緊急地震速報ではチャラン、チャララン・・というテレビ(NHK)で流れるものもある。間違っていたら、ご免なさい。どれがどれだか分かんなくなるんだけど、序章から続くこのアラートは完全に物語上の『ウソ』ですので・・・。




