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ブートブーリン・ブーゲンブルー

Mの行き先は 〜ブートブーリン・ブーゲンブルー〜

作者: 一飼 安美

「あれって何に見える?」


 ファストフードの看板を指差して、同級生は言った。何って、M。店の頭文字。それくらいわかるじゃん、って言ったのに、違う気がする、ってずっと言っていた。看板の形を指でなぞるように動かして、あはは、って喜んでいる。あんなのどこにでもあるじゃん。漫画やゲームの絵の中、Tシャツのロゴ。チラシにだってあふれている。何かな?なんて言っていたらキリがない。そんなことしてたら、ああいう風になるよ、って言うときょとんとしていた。知らないらしい。最近、学校でおまじないが流行っている。M、って五回ノートに書いて、Aって五回ノートに書いて、だんだん減らしながら書いていく。魔除けなんだって。そんなにたくさん書かなくても、MもAも私書けるよ。中学生だもん、って同級生は言ってたからよくわかってないらしい。私も隣のクラスで熱心な子がいる、くらいしか知らないけど、嫌だなって思っている。マムシのマアムを知ってるから。


 小学校のときにあった、噂話。マムシのマアムは誰にも見えないけど巻きついてきて、離れない。気がついたらマアムが言う通りに動いていて、耳元で囁かれたのを自分で考えたと思っている。一度巻き付かれたら、巻き付かれてるって気がつかないと取れないけど、気のせいだよって囁かれたらずっと気がつかない。どうでもいいつまらない話なのに、怖いなあって思ったのを覚えている。その話をすると、おまじないもマアムが始めたのかな?って同級生が言っていたけど、あんまり聞きたくなかった。巻き付かれたらどうしよう。たまに思うけど馬鹿らしいから考えない。同級生は、私、知ってる!って喜んでいた。ブートブーリン……それは知ってるの。怖いことがあったら、奇妙だなって思ったら、その呪文を言えばいい。マムシのマアムとそんなに変わらない話だ。そういうの楽しそうに言う歳でもないし。私は言うけどなあ、って同級生は不思議そうで、人によって違うらしい。


 帰り道で、知り合いに会った。隣のクラスの女の子。何かぶつぶつ言っていたからなんだろうと思ったら、何も言っていなかった。まー、まー、まー……。怖かったから話しかけられなかったけど、同級生はそうじゃない。マミムメモ!って言い出した。ももとすももがごっつんこ、芽が出てお空にお星様!……何を言ってるんだろう、って思ったら同級生はニコッと笑って、大丈夫だよ、心配ないよ、って隣のクラスの子の手を取った。ブートブーリン・ブーゲンブルー。その子はしばらく黙っていたけど、ブートブーリン……ってつぶやいた。少し気楽になったらしくて、また明日!って手を振った。私は、思い切って聞いてみた。Mって何のことだろう。同級生は、しばらく真剣に考えていた。


「……お味噌汁?」


それOじゃん、って私が言うと、舌を出して笑っていた。

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