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3 恋情と、あなたとの距離

 年上のシュトラウスは、自分よりも早く大人になっていく。

 いつまでも兄妹気分ではいられないのだろう。

 10代後半になる頃には、仕事だって始めている。

 ちょうど、フレデリカがシュウにいさま呼びをやめた時期だ。

 成長し、仕事も始まったことを機に、シュトラウスは婚約者であるフレデリカと、適切な距離を取り始めた。それだけのことだ。


「仕方ないって、わかってるの。でも……寂しいな」


 苦し気に気持ちを吐き出すフレデリカに、ルーナの胸も痛む。

 フレデリカがシュトラウスに抱く親愛は、いつしか恋情へ。

 彼女は、7つ上の婚約者に、恋をしていた。

 けれど、シュトラウスの気持ちはわからない。

 大切に思ってくれていることは確かだが、彼の抱く感情の種類が、わからないのだ。


 王侯貴族の結婚に、恋愛感情は必要とされない。

 だから、シュトラウスがフレデリカのことをそういう意味で好きでなくとも、婚姻に問題はない。

 でも。もしも、彼も自分と同じ気持ちだったら。フレデリカに、恋をしてくれていたらと。そう、願ってしまう。

 


 フレデリカの婚約者・シュトラウスは、今も王城の敷地内に住みながら、王に仕えている。

 将来的にはストレザン公爵家を継ぐことになるため、王城で働きながら、公爵家とのやりとりも頻繁に行っており、人一倍忙しい。

 王都とストレザン領を行き来することも多い。

 彼は、王都とストレザン領のパイプ役としても重宝されているのだ。

 25歳となった今、できることや裁量も増え、彼は着実に実績を積んでいた。

 シュトラウスの仕事が、この国にとっても大事なものであると、理解している。

 けれど、彼のことが大好きな婚約者のフレデリカとしては、彼の気持ちもだが、もっと一緒に過ごす時間が欲しいところだった。


「シュウ……」



 すっかり意気消沈してしまったフレデリカの前で、ルーナはふむ、と考える。

 この国に来て半年ほどだが、ルーナは、シュトラウスからフレデリカへの対応に、疑問を感じていた。

 仮に、シュトラウスがフレデリカに向ける感情が、フレデリカと異なるものだとしても、二人が婚約者であること、子供時代を兄妹のように仲睦まじく過ごしたことは事実だ。

 長い付き合いの、仲のいい婚約者。もう少し、距離が近くたっておかしくはない。

 なのにシュトラウスはといえば、彼女に触れもしないどころか、意図して接触を減らしている。


 流石にフレデリカ本人には言えないが、王城預かりのルーナは、シュトラウスがフレデリカを避けるような動きをしていることを、知っていた。

 フレデリカが近くにいても、自分からそばに寄って話しかけることはほとんどない。

 日によっては、フレデリカの視界に入らないよう移動していることもある。

 ここだけ言うと、フレデリカのことを嫌っているようにさえ思えるが、シュトラウスがフレデリカに向ける視線は優しい。


 本人には話しかけないくせに、愛おしそうにフレデリカを見守っているのである。

 その瞳には、確かな愛情が宿っていて。フレデリカのことが嫌いだなんて、とても考えられない。

 さらには、ストレザン領を始めとして、他の地域に行った際は、必ずフレデリカにお土産を買ってくる。ただし、渡すときは使用人を通して、だ。

 フレデリカのことを避けているのに、彼女への愛情も感じられる。

 ルーナがシュトラウスに抱く感想は、なんなのこの男、であった。


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