表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

レインボーテール

ひょうりゅうのランブル

作者: TAK

『青の世界』の大海原(おおうなばら)の昼下がり、青い肌の巨大な女性『グウレイア』が魚たちとたわむれていました。グウレイアは身体が水でできていて、優しさと美しさをかねそなえた女神で、あらゆる生き物から『水の女王』と親しまれています。


(ふふっ……、海の中でもいろんなかわいいお魚たちを見られて楽しかったわ。……そろそろ湖にもどりましょう。)



 グウレイアは湖にもどる途中、砂浜に一本の流木(りゅうぼく)と共にうちあげられた一羽の雄の人鳥を見つけました。


(この鳥は一体何かしら……。この青の世界では見たことのない鳥のようだけど……。生きているけど弱りきっているわね……。水と生命(いのち)をつかさどるわたしの力で助けてあげましょう。)


 グウレイアは身体を七色に光らせて人鳥を介抱(かいほう)すると、人鳥は目をさましました。


「……う……ん……、ここは一体……?」

「気が付いたのね、良かったわ。わたしは水の女王グウレイア、この青の世界の守り神で、みんなから『お姉さん』と呼ばれているの。」

「……ぼくは……、ペンギンの『ランブル』……。さむいさむい『白の世界』から来たんだ……。」


 グウレイアと人鳥はお互い自己紹介しました。


「ランブルと言うのね。さっそくでわるいけど、どうしてこの青の世界に迷いこんだのか聞かせてもらえないかしら?」


 グウレイアはペンギンのランブルに漂流(ひょうりゅう)したいきさつをたずねました。


「ぼく……、海の上に浮かんでた丸太を見つけてそれにのったんだ……。()()()()とした感じが時間を忘れるくらい楽しくてつい……。気が付いたらずっと沖の方に流れてて……。」


 ランブルは流木とたわむれていて流されてしまったと話しました。


「そう……、わかったわ。あなたが元気になるまでわたしがお世話してあげる。」

「ありがとう、お姉さん。」

「ふふっ……。」



 数日にわたるグウレイアのお世話で何とか元気になったランブルですが、ランブルはものすごく不安でした。


「……グウレイアお姉さん……。」

「どうしたの、ランブル?」

「……ぼくには……、この世界はあついんだ……。ぼくたちペンギンはさむい所でくらしてるからずっとここで生きてくことできないんだよ……。」


 ランブルはグウレイアに青の世界は自分たちペンギンにはあつさのあまり長くは生きていけないと話しました。

 そう、ペンギンには温暖(おんだん)な青の世界は過酷(かこく)気候(きこう)なのです。


「そう……。」


 グウレイアは表情をくもらせました。


「……ぼく……、やっぱり白の世界に帰りたい!……やっぱり帰りたいよ……。」


 ランブルは泣き出しました。


「そうね……、やはりみんな……、自分の生まれ育った地が一番だものね……。」


 グウレイアはランブルの想いを受け止めるようにランブルを抱きました。


「うん……。」

「あなたの住む白の世界に連れて行ってあげたいけど……、わたしには青の世界を守る役目があるからはなれるわけにはいかないの……。ごめんなさい……。」

「……じゃあぼくはずっと帰れないの!?」

「……いいえ……、遠くまで泳げる大きくもおだやかな生き物にたのみましょう……。」


 二体の不安にみちたやり取りに割って入るように一頭の雄のイルカがやってきました。


「こんにちは、グウレイアお姉さん、話は聞きました。その役目、このイルカの『バンドウ』にお申し付け下さい。」


 イルカのバンドウはランブルを白の世界に連れて行く役目を引き受けると申し出ました。


「……ちょうど良かったわ。バンドウ、このランブルというペンギンを白の世界に運んであげて。」


 グウレイアはバンドウにランブルを白の世界に運ぶようたのみました。


「お安いご用です。」


 バンドウは喜んで引き受けました。


「お姉さん……。」

「ランブル……。」


 グウレイアとランブルは互いに向かい合いました。

 もうすぐ別れの時が来ることをお互い感じていたのです。


「ランブル……、『(しずく)の紋章』をあなたにあげるわ。お守りとして大切になさい。」


 グウレイアは自分の左胸の中から青く光る雫の紋章を取り出してランブルにわたしました。


「うん、グウレイアお姉さん、色々ありがとう。」


 ランブルは雫の紋章を受け取ってお礼をのべました。


「さあ、ぼくの背中に乗って。しっかり背びれにつかまっててね。」

「うん、バンドウ兄ちゃん。」


 ランブルはバンドウの背中にのり、背びれにつかまりました。


「それでは、グウレイアお姉さん。これからランブルを白の世界に運んでまいります。」

「バンドウ、ランブル……、あなたたちに水の加護を……。」

「グウレイアお姉さん、本当にありがとう。それじゃ、お姉さんにも()の加護がありますように!」

「ふふっ……。」


 バンドウはランブルを背中に乗せて海の向こうの白の世界へと泳いで行きました。

 ランブルもグウレイアもなみだを流して別れをおしみました。



 ランブルたちを見送った後、グウレイアは湖にもどって魚とたわむれる日常にもどりました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] グウレイアは、美しい女神でありながら、「お姉さん」と呼ばれて生き物たちに親しまれているのですね。 ランブルは、水の流れに自然と揺られているのが心地よかったのでしょうね。 別の世界まで来てし…
[良い点] たぷたぷは、海に漂う流木の感じなのですね。 ランブルさんはグウレイアさんに見つけてもらって幸せ者ですね。 こんな風に現実の世界も穏やかで平和であればいいのに、と思いました。
[良い点] グウレイアお姉さんが穏やかで、優しい気持ちになる作品でした。ランブルも本当は別れたくはなかったのかもしれませんね。でもそれぞれの世界で、楽しく過ごせたらいいな、と思いました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ