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【書籍化・コミカライズ】殿下が一目惚れした令嬢の正体はあなたの護衛騎士です!  作者: 玉川玉子
レジーナ王女がエイジャクスに恋するまで

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4. 夫を甘やかしてみた

「エイジャクス、何か私にして欲しいことはなくて?」


夫を甘やかす気満々の私は帰りの馬車の中で彼に聞いてみた。


「? ええ……と。何か欲しいものがあれば遠慮なく言って貰いたいです」

「そうじゃなくて〜!!」


本当に、夫は自分の要求やわがままを言わない人だ。


しばらく馬車に揺られていると、夫はうつらうつら居眠りをし始めた。


(疲れているのかしら……)

毎日仕事から帰ってくる時間は早いのだけど。


(そうだわ! こう言う時こそ……)

私はエイジャクスに膝枕をしてあげることを思いついた。


そ〜っと彼の肩を引き寄せて、頭を膝の上に……


……乗せた瞬間、エイジャクスはカッと目を見開いた。


「レ、レジーナ様!?」

「あ……ごめんなさい。起こしてしまったわね。膝枕してあげようと思ったの」


馬車の中で膝枕は体勢的にちょっと無理だったかしら。

夫は不自然な体制で私の膝の上に頭を乗せているにもかかわらず、そのまま動かなかった。


「レジーナ様の……膝枕……。私は前世でよほどの徳を積んだに違いない……」

ボソッと呟き、エイジャクスはそのまま目を閉じた。


あら、まんざらでもない感じ?

私は嬉しくなって、彼の髪の毛をそっと撫でる。


私の膝の上で気持ち良さそうに瞳を閉じているエイジャクスがなんだか可愛く思えた。



それからと言うもの、私はエイジャクスをとことん甘やかした。


しょっちゅうボタンを掛け違えているので直してあげたり。

口の周りに食べ物をくっつけていることも多いから、拭いてあげる。


毎日彼の頬に『いってらっしゃい』と『おかえりなさい』のキスをする。

彼から私へのキスはないけれど。

もっと甘えて欲しいのに。


ある時、湯浴みを終えた彼の髪の毛を拭いてあげていたら、なぜか肩を落とし、悲しい顔をするので驚いた。

「も、もしかして私に髪を拭かれるの嫌だったかしら?」


「違います。あまりにも幸せで不安になったのです」

「はい?」

「私なんかがこんなに幸せになれるはずない……もしかしたら、近いうちに死ぬんじゃないかと思いまして」


なんというネガティブ思考なの!!


私は彼の頬にキスをして、頭を撫でた。

「大丈夫よ。あなたはもっともっと幸せになるべきだわ」


ああ……この人に自信をつけさせてあげたい。

のびのびと笑えるようにしてあげたい。


やはり幼児期に無条件で愛される体験をしていないと、自己肯定感が低くなってしまいがちなのかも……。


こんな状態なので、私たちの夫婦としての関係も一向に進展しなかった。

結婚して一ヶ月が過ぎても、相変わらず別々の寝室で寝起きする日々が続いた。





◇◇◇◇◇◇◇

「お帰りなさい!」


ある日、仕事から帰宅した夫を出迎えた私は、玄関の床に点々とついている赤い痕に気づいた。


「え……これって……血!?」


よく見ると、エイジャクスの左手の甲から血が出ている。


「きゃー!! 大変! 誰かお医者様を呼んでちょうだい!」

「えっ? あ、すみません、稽古でちょっと切ってしまって。放っておいて大丈夫です」


夫はこともなげに言うが、普段血など見ることのない私はパニックだった。

「手当てしなくては。誰か薬を持ってきて!」

「この程度、よくあることです。床を汚してしまったな……」

「床なんかどうでもいいのっ! あなたの手を心配しているのよ!」


思わず声を荒げてしまう私を、エイジャクスは眩しそうに見つめる。

私は侍女から薬箱を奪うと、エイジャクスの手を引っ張って椅子に座らせた。


「あの、本当に大丈夫なので……」

「ダメ! バイキンが入ったらどうするの! 大人しくしてちょうだい」

遠慮するエイジャクスを手を強引に掴んで、薬を塗った。

そして、上から包帯を巻いた。



……のだが。

私が巻いた包帯はゆるゆるでズレズレになってしまった。


そう。

私は家事はおろか、身の回りのことも満足に出来ない。


王女として生まれ、全て侍女任せだったのだ。

ついでに、隣国に嫁いで王太子妃になる予定だったため、生活に関する教育は後回しになっていた。

「ご、ごめんなさい。包帯、上手く巻けなくて。騎士の妻失格ね」


「いえ。手当してくださって、ありがとうございました。だいぶ痛みもやわらぎました」

エイジャクスはそう言って、宝物をもらった子供のように、嬉しげに包帯を巻かれた自分の手を眺めた。


以後、私の包帯巻きの技術は飛躍的に進歩する。

なぜなら、この日を境に、エイジャクスがやたらと頻繁に怪我をするようになったからだ。


幸い、深い傷はないものの、小さな切り傷を毎日のように作って帰宅する様になった。


日に日に傷だらけになっていく夫の身体を見ると、胸が痛んだ。

職業柄、仕方がないのかも知れないけど。血は苦手だ。


ある日、怪我に薬を塗っていた私はとうとう我慢が出来なくなり、泣き出してしまった。

「レジーナ様!? えっ……ど、どうされ……」


「ごめんなさい。騎士の妻なら、こう言うことにも慣れなくてはいけないのでしょうけど……もう私……あなたが怪我をするのを見ているのが辛くて……」


「すみません……あなたが、私のために怒ったり、心配してくれるのが嬉しくて……つい」


「……『つい』?」


「傷より、あなたに泣かれるほうが辛い……。大丈夫です、もう怪我しません」


そう言って、エイジャクスは私の頭にポンと手を乗せる。

大きくてゴツゴツした手。

なんだかホッとして胸がキュンとした。


そして、なぜかそれ以降、夫が怪我をすることは殆どなくなった。





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― 新着の感想 ―
[良い点] レジーナ→エイジャクスは一緒にいるうちに好きになっていくのかなぁと妄想の中で気になっていたので、その過程を読めるなんて嬉しいです!!ヽ(*´∀`*)ノ
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