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【書籍化・コミカライズ】殿下が一目惚れした令嬢の正体はあなたの護衛騎士です!  作者: 玉川玉子
レジーナ王女がエイジャクスに恋するまで

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3. 孤児院にてヒントを得る

「レジーナ様! 見て見て〜ダンゴムシを捕まえたの」

「抱っこして〜」

「僕の方が先だもん」


久しぶりに訪れた孤児院は相変わらず賑やかだった。

子供のパワーって凄いわ。


我先にと群がってくる子供たちの輪から外れて、一人物陰からこちらを見つめる少年に気づく。


そう。みんながみんな人懐こいわけではない。

自己主張できない子や、天邪鬼な子も沢山いるのだ。

そう言う子にこそ気をつけて目を配らなくては。


「カイ! 元気だった? こちらにいらっしゃいな」


声をかけると、少年はプイと横を向いた。

「別に。俺はいい」


「手に何持ってるの見せて?」

「何でもない! 見るなよ!」

少年は手に持っていた紙をわざと乱暴にグシャッと握る。


私が前回の訪問の時に「今度みんなの描いた絵を見せてね」と言ったことを覚えていたのだろう。

何気なく言った小さな一言でも、彼にとっては大切な約束なのだ。

この約束は絶対に違えてはいけない。


「今日はみんなの絵を見られるの楽しみにしてたの。覚えていてくれて嬉しいわ」

「こ、この絵はちょっと調子悪くて下手になったから捨てるんだ! い、いつもはもっと上手に描けるんだけど」


こうやって予防線を張るような発言が多いのは傷つくのが怖いから。

そして自信がないから。

私に見せるために描いたに違いないのに。


「そう、調子が悪かったのね。それは残念ね。でもちょっとだけ見せて? 私にだけ内緒で見せるなら良いでしょ?」

そう言って強引に絵を手に取る。


茶色の長い髪の女の人がニコニコしている絵だった。

女の人の輪郭に沿って、黄色やオレンジの色が力強く塗られている。


「こ、この絵は全然ダメなんだ。ゴミなんだから」

「まあ! 素晴らしいじゃない! 上手よ」

「嘘つくなよ!」

「これは私を描いたのね」

「ち、違う! 手が大きすぎるから……それは化け物を描いたんだっ」


なるほど手が少し大きすぎになってしまったことを気にしているのね。

でもニコニコ顔がとても素敵。

この子に私がこんな風に見えていたのだとしたらとても嬉しい。


「いい絵だ」

エイジャクスが背後からひょっこり顔を出して言った。

「背景の黄色オレンジ、すごく良くわかるぞ。レジーナ様の周りって、ぱあっと明るく見えるもんな」


少年は目を見開いていたが、その頬はうっすら紅潮している。

普段、滅多に褒めない強面の騎士に誉められ、嬉しかったのだろう。


「この絵、気に入ったから貰ってもいいかしら?」

そう尋ねると、少年は恥ずかしそうに頷いた。


その後、みんなでゲームなどをして過ごし、やがて帰宅する時間となる。


「もうそろそろ帰らないと」


「もう少しいてよ。この本を読んで欲しいんだ」

カイ、先ほど絵を描いてくれた少年がボソッと言った。


(カイが自己主張するなんて珍しい!)

こんな可愛らしいわがままを言ってくれるなんて。

少しは私に心を許してくれた証拠ではないだろうか。


これはなんとしてでも叶えてあげたいと思った。


「分かったわ。他ならぬカイのお願いだから、特別にね」

そうコソッと少年に耳打ちすると、彼の瞳が輝いた。


本の読み聞かせをしながら、しみじみ思った。

わがままを言えるって幸せなことなのだな、と。


無条件で自分を受け止めてくれる人って大事よ。

どこか一ヶ所でもそんな安心出来る場所が子供には必要だと思う。


普通はそれが自分の家族であることが多いのだけど。

孤児院にいる場合はどうなのかしら……。


…………!!


そこで私はハッと気が付いた。


夫のエイジャクスには子供らしい幼児期がなかったのだ。

わがままなんて言える環境ではなかったはず。


これだわ!


私たちがちゃんとした夫婦になるためには、欠けている子供時代からやり直さないと!


エイジャクスをデロンデロンに甘やかしてやるわ。

そして、わがままが言える人にしてみせる。


彼の自己肯定感を高めて、自己主張出来るようにしてあげなきゃ!


エイジャクスの失われた子供時代を取り戻すのよ!

かくして、私の『夫の子育て』(?)が始まったのである。











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