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【書籍化・コミカライズ】殿下が一目惚れした令嬢の正体はあなたの護衛騎士です!  作者: 玉川玉子
オレ様王太子とクマ姫様

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3. 北の国からやってきた王子

遠い北の某国の第四王子がカロニアを訪問することになった。


私の祖母はこの某国の出身だ。

だから第四王子が親戚筋に当たる我が家に滞在することになったのは自然な流れであった。


カロニア国内ではバジルに忖度して誰も私に声をかけてくれないけど、外国のしかも王族なら。

バジル以外の男性とまともに会話をしたことがない私はとても楽しみにしていた。



そうして、その王子、ブロンテ殿下はやってきた。

遠い北の国から。

分厚い毛皮を着込んで。


「カロニアは10月なのに暖かいのですね」

そう言う王子の国では軽く氷点下だそう。


ストレートの銀色の長い髪。

グレーの瞳。

うん。いかにも寒い国の王子様だ。

氷の貴公子ね。


話してみると、とても気さくで謙虚な人だった。

なんでも上に兄が三人、姉が六人、その他沢山の妹や弟がいるのだとか。

兄弟仲はいいけど、六人のお姉様方にこき使われているらしい。


ブロンテ殿下から聞く異国の話はとても興味深かった。

一年の半分以上雪で覆われている彼の国。

作物が出来る期間がほんの僅かで、食糧事情はなかなか厳しいらしい。


新鮮な野菜や果物が楽しめるのは夏の間だけ。

後はずっと保存食で食いつなぐのだとか。


お茶の時間に、ケーキに載ったバナナとパイナップルにいたく感動していた。

バナナやパイナップルは高級品なのだそう。


カロニアでもバナナやパイナップルはネバンドリアからの輸入品だ。

ただ、両国は距離が近いので、誰でも気軽に買える値段で流通している。


ブロンテ殿下が、

「一度も凍らせていない、黄色い皮のバナナ!」

を大喜びで剥きながら食べているのを微笑ましく眺めていたら、執事がやって来た。


「ラナ様。王太子殿下から先触れでございます。今晩の夜会にパートナーとして出席するようにとのことです」


バジルからは毎日のように

「話し合いがしたいので王宮に来るように」とか

「夜会にパートナーとして出席するように」

と言った先触れが来るが、私は全て断っていた。


今日も断ろうとして、思い直した。


「今晩の夜会はブロンテ殿下のエスコートで出席します、って伝えてちょうだい」


「ラナ!」

「お前、王太子殿下に失礼だろう!」

両親と兄は青ざめていたが、知ったことではない。


何も知らないブロンテ殿下は「カロニアの貴族と交流の機会が!」と無邪気に喜んでいる。




そして夕刻ーー。


侍女に手伝ってもらい、夜会に着ていくドレスに着替えた私は、アクセサリー選びに没頭していた。


すると突然、部屋のドアが激しくノックされ、バジルが勢い良く入って来た。


「バジル!? なんでここに」

「迎えに来た」


これまで一度だって迎えになんて来たことないくせに。

我が家に来たのだって、大きな晩餐会を催した時以来だ。


「私はブロンテ殿下のエスコートで出席しますので」

「そのドレス、ちょっと前が開きすぎじゃないのか。王太子の婚約者として少し品格に欠けるな」

私の話を無視するバジルにカチンと来る。


「もう婚約者ではありません」


そうきっぱり言い切り、私はジュエリーボックスからダイヤとプラチナのネックレスを取り出し、自分でつけた。


「そのネックレス……初めて見る」


バジルと一緒に行動する時は彼の金髪に合わせて、アクセサリーはいつもゴールドだった。


「ブロンテ殿下は銀髪ですので」

「……っ……」


途端に、王太子の顔から表情が抜け落ちた。


次の瞬間、バジルは私の肩を掴み、首筋に顔を近づけーー


「……痛っ! 何!?」


やがて身体を離したバジルは、私のことを睨みつけると黙って去って行った。


(びっくりした……なんだったんだろう。まだ心臓がドキドキしてる)


そう思いながら鏡を見て私は悲鳴をあげる。

鏡の中の私の首にはバジルがつけた赤い跡がくっきりと残っていた。


(な、なんなのよ! これまで一度だって私に触れたことないくせに)


結局、私はそのネックレスを外し、首元まで隠れるドレスに着替えざるを得なくなった。






その日の夜会は規模も小さく、人も少なかった。


伴侶を見つけるために夜会に出席する人は目的を達成すると来なくなるからだ。


10月の王都。今年の社交シーズンも間もなく終わりである。

地方の貴族の多くがすでに領地に戻った。


目ぼしい獲物は狩り尽くされたと思っていたところに突如現れた極上のターゲット。

ブロンテ殿下の登場に王都の独身令嬢たちは歓喜した。


気さくでコミュニケーション上手なブロンテ殿下はたちまち会場の人気をさらう。

普段から六人の姉姫に鍛えられているだけある。

女性と臆することなく会話が出来るだけでなく、飲み物を取ってあげたり気配りも忘れない。

ドレスや髪型など、褒めるツボも押さえていて凄い。


肉食系令嬢たちの肉弾攻撃も余裕でかわすブロンテ王子。

胸元が見えていようが、色っぽい視線を送られようが、眉一つ動かさない。


しかしそんな彼は飲食コーナーにフルーツの盛り合わせが運ばれてきた時だけは、うっとりと見入っていた。


そんなブロンテ殿下のことを、少し離れたところでバジルがじっと観察していたことなど私は知らなかった。












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