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【書籍化・コミカライズ】殿下が一目惚れした令嬢の正体はあなたの護衛騎士です!  作者: 玉川玉子
オレ様王太子とクマ姫様

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1. 王太子との視察

私の婚約者は王太子だ。


「おいラナ、ちょっと場所代わってくれ」


城下への視察に向かう馬車の中。

ポカポカの陽射しを受けながら、窓の外を眺めていたら、突然バジルがそんなことを言い出した。


バジルーーバシリウス王太子に私がつけたニックネームである。


「え、何。嫌よ面倒臭い」

「俺、そっち側の風景が見たいんだ。ほら、どいて」


バジルは狭い馬車の中で立ち上がると、私の膝の上を跨いで、こっちの窓側に強引に割り込んで来た。


「もう何なのよ、この『オレ様王子』!」

渋々、反対側に移動する。


私が王太子の婚約者に内定したのは五歳の時だ。

以後、王家の子供たちと一緒に教育を受け、共に育った。


そのせいか、大人になってからもバジルと私の仲は、婚約者と言うよりは兄妹のよう。

馬車の中で二人きりになってもこの調子なのだ。


最近私の周りは恋の花盛りだ。

姉妹同然の王女のレジーナと可愛い第二王子のダリウスはそれぞれ最愛の人を見つけ、とても幸せそうである。


「はぁ……レジーナが羨ましい。私も溺愛される恋がしてみたいわ」

馬車に揺られながら、私はうっかり心の声を漏らした。


「生憎だなラナ。君はもう婚約しているんだ。諦めるんだな」

バジルは眉間に皺を寄せ、淡々と言い放った。


(鈍感! 私はあなたと恋がしたいのに……)


『オレは完璧な国王になる!』

それがバジルの昔からの口癖だ。


彼は昔から偉そうな子供だった。

彼に対する第一印象は『いばりんぼう』である。


バジルは他人に厳しいが、自分にはもっと厳しい。

彼は努力家であり、完璧主義だった。


国王陛下も、末っ子のダリウスには甘いのに、バジルに対しては驚くほど厳しい。


弱みを見せてはいけない、常に堂々としていろ、腹の中を他人に見せるな、他人の嘘に騙されるな、物事の本質を正しく見極め、瞬時に正しい判断を下せーー。


一見クールで皮肉屋なバジルが、陰でこっそり泣きながら努力をしているのを私は知っている。



「着いたぞ」

馬車は一軒のレストランの前で停まる。


新しく出来た、話題の店だ。

評判も良くて、なかなか予約が取れないとの噂を聞いた。


「ここが視察先なの!?」


なんてラッキーなんだろう。

思わずテンションが上がる。


兄妹同然の私達はデートというものをしたことがない。

でも、将来の王妃として彼の視察に同行させられることはよくあるのだ。

早くから公務に携わることによって、王妃としての自覚を育てることが大切なんだとか。


スパイスを多く使った異国の料理をベースにした創作料理の店。

店内の内装も異国風で、カロニアでは珍しい色や布で飾られている。


どうしよう、非日常感にワクワクする。

お店の匂いがすでに異国っぽい。

スパイスとお香が混ざったような匂いがするの。


「ラナ、こういうの好きなんだ?」

物珍しげにキョロキョロする私を見てバジルが言った。


「う、うん! 初めてだけど、ワクワクするわ」


バジルは満足そうに口の端を上げてニッと笑う。

「それは良かった。結婚したら外交訪問で外国に行く機会も多いから」


この人ったら、笑顔まで偉そうなのよね。

ちょっと意地悪で上から目線な笑顔。


……そんな笑顔に私がときめいていることは内緒だ。




料理が運ばれて来ると、バジルは再び『オレ様』っぷりを炸裂させた。


「ラナが頼んだやつ美味そう。俺やっぱそっち食いたい。取り替えようぜ」


そう言って、バジルは私が頼んだチキンのピラフ詰めを横取りしたのだ。

代わりに私の前にはバジルが注文した、羊のミンチの炭火焼きが置かれた。


「また!? ひどいわ! 暴君!」

食事をしていて、バジルに私の食べ物を奪われることはよくある。


ムカつくが、諦めて羊のミンチ焼きを食べることにした。

アスパラをスパイスの効いた挽肉で包んで、炭火で焼いてある。

そこにミントのソースがかかっていて……。


「ん? んんん〜〜!!」


……絶品だった。

スパイスと羊とミントの組み合わせが素晴らしい!!


「何これ!! すっごく美味しいわ」

「そう? それはなにより」


前菜の人参とオレンジのマリネも。

トリュフ入りのポテトサラダも美味しかった。


「なに食べても美味しいのね、ここ」

あまりに美味しいので、完食してしまい、バジルに笑われた。


バジルと視察に行く時は、当たりの店が多い。

いつも美味しくて、本当に私達は運がいいと思う。


食後は連れ立って城下を歩く。視察だから。


賑やかな屋台に混じって、占いをやっているお婆さんがいた。

「バジル、見て! 恋占いですって。面白そう」

「馬鹿馬鹿しい。そんなもの占ってもらってどうするんだ」

「ねえ、寄って行きましょうよ」

「ダメだ」


バジルは不愉快そうに顔を背けると、私の手を引っ張ってどんどん先に進む。

オレ様王子はすっかり機嫌が悪くなってしまった。


「じゃあ、代わりにあの屋台のおやつ買っていい?」


私が指差す屋台を見ると、バジルは眉間のシワを深くした。

「未来の王妃ともあろうものが、屋台で立ち食いなんて言語道断。却下だ」


「意地悪! ちょっとくらいいいじゃない」

胡椒たっぷりの牛の串焼きがとても美味しそうだったのだ。


「ラナ、そんな肉ばっか食ってるから『百獣の王』なんてあだ名をつけられるんだよ」

私は気が強いことで有名で、陰で『百獣の王』などというあだ名で呼ばれているらしい。

バジルに平気でポンポン物を言えるからなんだとか。

バジルは厳しい王子なので、皆に恐れられている。



たまには私のお願いを聞いてくれてもいいのに。

いつもワンマンで自分勝手。

私にちっとも優しくない。



…………仕方ないか。


だって彼は私に恋愛感情がないんだから。



それでも私は立派な王妃になって、頑張っている彼を支えたいと思っていた。


この時までは。










バシリウス Basilius 先頭の5文字だけだと Basil なのでバジルです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] こちらの二人のお話も読めるのはとても嬉しいです! バジルくんラナちゃんに良い景色を見せたくて席を交換してラナちゃんの好みの味なのを確認して取り替えてるやつでは……? 下の王子がわちゃわち…
[良い点] 楽しく読みました。もう一度頭から読みたいです。 [気になる点] 下のコメントの脱字がきになりますー。
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